「エッチな日常系ドラマ」仕立てながら、西山潤、田中美麗の緻密な演技、地上波ドラマではチャレンジングな対話劇、人間に対する鋭利な観察眼ある演出など見ごたえ抜群!>『こういうのがいい』第1話

Ⓒ双龍/集英社・ABC

エンジニアの村田元気(西山潤)とファミレスでアルバイトをしている江口友香(田中美麗)のリアルでの出会いは、オンラインゲームのオフ会だった。王道の恋愛ものであればここから2人の恋が始まるが、村田も友香も誰かと「つきあう」という関係性に凝りているので、その展開はなさそうだ。

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2人は合コンノリのオフ会に馴染めず、適当な言い訳をして二次会をパスし、駅に向かって並んで歩き出す。友香が「大人のおもちゃ屋」にふと反応したことに、村田が気づく。それが2人にとっての分水嶺だった。友香は「なんでもない」とごまかしたが、束縛系の元カノに鍛えられたからか、他者の感情に敏感な村田が「なんでもなさそう」と促すと、友香が大人のおもちゃ好きを白状する。

「女の子がこういうの好きってキモって思わん?」と言う友香に対し、「全然思わんし、男女関係なくね?」と返す村田。その表情や声のトーンから、女性の性欲に理解がある「ふり」ではなく、心の底からそう思っていることが伝わってくる。

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友香は性に対して貪欲で、アダルトビデオも大人のおもちゃも大好きだ。ところが、元カレを始めとする男たちは、友香いわく「セックスはガンガンするくせに下ネタはNG」だった。

友香は彼らのために、“主体的な性欲は持っていないが、男の性欲をいつでも受け入れ、男のテクでエクスタシーを感じる女”という男の妄想が生み出したファンタジーキャラを演じ続け、疲れ果てていたのだ。だからこのシーンの友香には、村田になら自分を取り繕う必要がないかもしれない! という喜びと期待が溢れている。

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大人のおもちゃ屋(店内はモザイク処理)のショッピングバッグをそれぞれに持っている2人が、居酒屋で飲み直す。ここからの途切れることのない対話劇が、地上波ドラマにおいてかなりチャレンジングなものになっていた。恋人のいない期間、イキ方(と回復までに要する時間)、セルフプレジャーのオカズ、好きな対位などについて、キャッチボールのようにテンポよくセリフを投げ合う。

友香の「〜だのぅ」「なかろうか」「御意」といったやや時代劇調のコミカルな口調が、生々しい話を皮膜で包み、下品にならない効果を生んでいる。このようなクセのある喋り方をする自由奔放なキャラクターは、下手を打つと相手に拒否反応を示されてしまう可能性も大だが、元カレに対して我慢に我慢を重ねていた気遣いキャラでもあることが冒頭で描かれているので、その心配は無用だろう。

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過去の恋愛が軽いトラウマになっていて、誰かとつきあう気はないけれど、性行為には意欲的。あらゆるポイントで馬が合うことがわかった2人は、ラブホテルで手合わせをすることに。「すまん、調子に乗った」と一瞬躊躇した村田が、友香に「えっ、しないの?」と言われ、「えっ、あ、する」と食い気味に返したときの表情が、間抜けで可愛く、そしておかしみもあり、非常に滋味である。そこからの「合体」(by友香)シーンでは、2人の体の相性の良さを、俳優2人のアクションとセリフでしっかりと表現する。

双龍による累計発行部数150万部突破のコミック「こういうのがいい」を原作に、「ラブラブエイリアン」「ポルノグラファー」「僕らのミクロな終末」などを手がけてきた、人間ドラマの名手、三木康一郎が脚本・監督を務めている。「ゆるくて気楽でエッチな日常系ドラマ」という仕立てだが、俳優たちの緻密な演技から、三木の人間に対する鋭利な観察眼や恋愛に対する深い考察が伝わってきて、かなり見ごたえのあるドラマになっている。

1話30分の番組枠を2エピソードに分け、それぞれに「永遠の問い?」「どことなく、なんとなく」というタイトルを付けており、「ラブホ帰りに」と「フリフレ初夜」が次週のタイトルだ。

本作のキーワード、「フリフレ」こと「フリーダムフレンド」の定義とはどんなものなのか? 次週でさっそく明らかになる!

<文・須永貴子>

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