特許がとられている天ぷらの技法を駆使する名店はおそば屋さん!? 京都・亀岡で元フレンチシェフが魂込めて打つ十割そばとは?
街のおいしい店に潜入し、店主の人柄からにじみ出る人気の秘密を発見するシリーズ「実録!人情食堂」。今回は、京都・亀岡市にある完全予約制のそばコースが人気のお店を取材しました。
のどかな田園風景の中、あぜ道を進んだ先に現れるのが「無国籍蕎麦会席 拓朗亭(たろうてい)」。単品のそばを出す店ではなく、メニューはすべてコース料理です。
そばはもちろん、和牛の希少部位“とも三角”のステーキや、そばを使った白湯ラーメン、亀岡市のコンテストでグランプリを受賞した本格スパイスカレー、自家製スイーツまで堪能できる贅沢な内容で、お値段は4500円です。
お店を切り盛りするのは、そば打ち歴41年の店主・矢田昌美さん(69)と、妻の和代さん(70)、娘のさや香さん(44)の家族3人。3歳のころに店がオープンし、高校の合格発表と同時に手伝い始めたというさや香さんは「拓朗亭とともに生活してきた」と笑います。
朝7時、そば打ちを始める矢田さん。その日の予約分だけを作ります。矢田さんが打つそばは、蕎麦粉10割でつなぎなし。水分は多すぎても少なすぎてもダメで、微妙な「指先の感覚」だけで水分量の調整していくプロの技です。
【動画】そば切りも熟練の技。細いうえに、幅が均一にそろったそばの美しさはまるで芸術品!
昼12時、予約のお客さんを迎えると、矢田さんはそばをゆで始めます。火を通す時間は30秒。これが「拓朗亭」のそばを一番おいしく食べられるゆで時間なのだそう。最初のメニューは、辛味大根をのせたおろしそば。「おいしい」とお客さんも大満足です。
続いての料理はえびの天ぷら。「丹波霞」と呼ばれるコースの名物で、円を描くように生地を流しながら網状に揚げ、天ぷらを包んだ見たことのない一品です。実はこちら、群馬県の「草庵」という店が特許を持つこの天ぷらの技法に矢田さんが惚れ込み、14年の研究を経てようやく完成させたもの。「草庵」からの許可も得て、今や「拓朗亭」を代表するメニューとなっています。
お次は“とも三角”のステーキ。少しレア気味に焼き上げ、矢田さんの手作りソースで仕上げます。お肉だけでなく、シーフードのメニューも。その日に仕入れたサーモン、たい、いか、まぐろの赤身、中トロ、貝柱、いくらなどをミルフィーユ状に重ねたカルパッチョは、名付けて「ローマ法王のさしみとやら」。
そば屋さんらしからぬ創作料理とネーミングのセンスは、どこから来ているのでしょう? 実は矢田さん、そば職人になる前の10年間はフレンチのシェフとして腕を磨いていました。その経験があるからこそ、手間暇をかけた絶品コース料理が作れるのです。
別の日の朝、矢田さんは石臼でそば粉をひいていました。これはお店で使うものではなく、「長崎にいる弟子に送る」と矢田さん。厳選のそばの実を石臼で丁寧に自家製粉したこの「拓朗亭ロット」は、簡単には手に入らない貴重なものだといいます。
ですが、矢田さんが月に2回開いているそば打ち教室では、一般の方にも使ってもらい、絶品のそばを楽しんでもらっているそう。そば打ち技術の上達はさておき、「大将の人柄とそばの味に魅せられて」7年も通い続けているという常連の生徒さんもいます。
「私が人情があるんじゃなくて、周りが人情があって助けてもらってる」と微笑む矢田さん。人を愛し、人に愛されるお店「拓朗亭」はとっても素敵な人情食堂でした。
「実録!人情食堂」は、3月30日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。





















