『虎に翼』脚本家・吉田恵里香 創作の源は“モヤモヤ”と“疑問”。新ドラマ『もうパパ!』で描く家族と社会

NHK連続テレビ小説『虎に翼』の脚本家・吉田恵里香さんが、新作ドラマ『もうパパ!』(毎週日曜よる10時15分~、ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット)を書いた。題材は「動画配信者の父子」。きっかけは、配信者に対する“あまりにも酷い”扱いに感じた怒りだったという。そして、子どもは一体誰のものなのか、家族という縛りとは何か──「愛情はあっても、すれ違ってしまうことは誰にでも起こりうる」というテーマに、自身も一児の親である吉田さんはどう向き合ったのか。創作の源泉と本作に込めた本音をじっくり語ってもらったインタビュー<後編>をお届けします。

――本作では、「動画配信者の父子」を題材にされていますが、題材やネタのキャッチアップは、普段どうされているのですか。
私は基本的に、何かに怒ったりモヤモヤしたり疑問に思ったことが、執筆のきっかけになっていますね。「動画配信者の父子」を題材にしたのも、動画配信者に対する扱いがあまりにも酷いなと感じることがあったからです。マスコミに「迷惑系配信者」がよく取り上げられるし本当に迷惑な活動をされている方もいますが、見る側も、相手が配信者だからといって、彼らのプライバシーなどに対して好き勝手言っていいわけではないと思うんです。振り返ってみると、そういう「怒り」みたいなものや、「え、なんで?」という「疑問」をきっかけに書くことが多い気がします。
――「心に引っかかること」ですね。
そうですね。気になったら検索して、SNSも調べて。反対意見も賛成意見も両方知りたいので、両方徹底的に調べます。だから私のフィルターバブルの中は凄くヘンテコです。タイムラインがその時々で変化しすぎてすぎて、誰かに見られたら「この人大丈夫?」と思われそう(笑)。SNSのブックマーク機能も重宝していますが、様々な角度の過度な発信を浴びてヘトヘトになるので見直す時はかなり体力を使います。

――吉田さんご自身の動画配信者に対するイメージとは?
SNSや動画配信の普及で、誰もが表現・発信できるようになったのは素晴らしいことだと思います。子どもの「なりたい職業」で動画配信者が上位に来るのも、そこに夢や可能性を感じられるからでしょうし。
最近は芸能人などプロの参入も増え、業界のバランスが変化する過渡期にある気がしていて、この先の展開にも興味があります。動きが激しい分、社会の空気が色濃く反映されている気がして、ここ数年は世の中の動向を映すバロメーターとして注目しています。
――先ほど「動画配信者に対する扱いがあまりにも酷い」という発言がありましたが。
特にファミリー配信者は、「子どもを利用している」と配信内容も確認しないままに一刀両断されがちです。未成年が顔を出してSNSや動画配信を行うことには、沢山のリスクや危険が伴うのは事実。実際に子どもを危険にさらしてしまう方がいるのも事実で、その場合は批判を受けるのも仕方がないこともあります。ただ、子どもが表舞台に出るという点においては子役やスポーツの大会なども同じようなリスクを背負っているはず。でもなぜか配信者だけがかなり厳しくジャッジされて、一度のミスで炎上したり人格否定までされてしまう。……それって、いびつだと思うんです。
「子どもで金儲けをして」という批判もありますが、大事なのは子どもにとって活動が幸せかどうか、親や何かに縛られたり洗脳のようになっていないか。動画配信をするリスクや怖さを、その都度話し合えているかということ。作品の中でも描いていますが、配信も結局は「どう使うか」が大事。「配信者だから〇〇だ」「配信者は××だ」のように、主語を大きくして誰かを見下したり叩いたりするのではなく、その人ひとりひとりを向き合っていけばもっと多くの人が幸せになれるはずです。ただ、これは理想論なので、そこに歯止めがない現実を反映させたかった。だから「配信者だから」という話にはしたくなくて、「愛情はあっても、すれ違ってしまうことは誰にでも起こりうる」ということを描きたかったんです。

――そこが、本作の大きなテーマなんですね。
はい。子どもにとって親はどうあるべきか、家族という縛りとは何か……、そして「自分の人生は自分で決めていい」というメッセージが一番大きなテーマです。親子であっても、それぞれが独立した個人であるということ――。私自身も親なのでわかるのですが、親はどうしても子どもを自分の所有物のように錯覚してしまったり、「守る・責任を持つ」ということと混同してしまったりする。それは誰にでも起こりうることだと思います。
――吉田さんご自身が親になって、物事の見方が変わった?
その部分もあると思います。人気配信者の名前とか、ゲームとか特撮ヒーローのこととか、子どもがいなかったら知らなかったことはいっぱいありますね。最近も、ビタミンC配合の美容液をつけた時に「カブトムシの匂いがする」と思ったんですよ。嘘だろと思って調べたら特定のビタミンC誘導体の成分が、カブトムシというかカブトムシの飼育カゴから感じる匂いに似ているらしくて……子どもがカブトムシを飼っていなかったら、知りえなかったこと。めちゃくちゃくだらないことですが、そういう生活の枝葉から世の中の解像度が上がっていくはず。なので作家としてはプラスになっています。

――そんなヒット脚本家の私生活が気になります。どのような生活サイクルを送っているのでしょう。
朝、保育園に子ども送ってから仕事をして、夕方保育園に迎えに行って、子どもが寝るまでにしなきゃいけないことをこなして、寝かしつけた後、気力が残っていたら書く……という生活です。大体締め切りに追われているので「ここまで書かなきゃ!」と思いつつ寝落ちしてしまう(笑)。そんなサイクルです。
――普通のお母さんと変わらないですね。
そうですね。決して特別な仕事ではないと思っています。他の脚本家さんが聞いたら「そんなことない」と怒られるかもしれませんが、私としてはわりと時間の自由が利く仕事だと思っていて、その点ではこの職業でよかったなと思うこともあります。

――プライベートの吉田さんはどういう方なのでしょう。
この前『情熱大陸』に出演したのですが、感想をくれた人の大半が「いつものままだったね」と言っていたので、多分、表も裏も変わらないというか変えられないんだと思います。もっとカッコつけるべきでしたね。もっとシュッとしたかった(笑)。自分の中では最大限部屋を片付けたつもりだったのですが、「生活感がある部屋だったね」と言われて。「世の中の人ってもっとちゃんと片付けているんだ」と気づきました。
――でもお子さんがいると、綺麗にしていられないですよね。
子どもがいなくても、多分片付けられなかったと思います(笑)。

――最後に、脚本家としてお仕事をする上でのこだわりをおきかせください。
映像のサブスクが普及している今、新旧の作品がいつでも見られるようになりましたよね。だからこそ、「面白かったけれど、2005年のアレにそっくりだね」と思われるのがイヤ。2026年なら「今だから見たい」と思えるもの、もしくは「先を描いているね」と言われるものを書きたい。しいていえば、それがこだわりですね。

『もうパパ!』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列で毎週日曜よる10時15分放送。放送終了後、TVerにて見逃し配信。
取材・文/坂本ゆかり



