発がん性など健康へのリスクの恐れ…“永遠の化学物質”全国で広がるPFAS汚染 70代の男性が衝撃を受けた血液検査の結果とは?
人体への健康被害が懸念されている有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」。近年、日本各地で相次いで高濃度のPFASが検出され、住民の不安が高まっています。全国で広がりを見せる汚染問題を取材しました。
去年10月、岡山県の吉備中央町で「水道水を飲まないように」との通知が出されました。原因は水道水に含まれていたPFAS。ダムの上流付近に長年放置されていた使用済みの活性炭を発生源に、国の暫定目標値を大幅に超える値が、実は3年前から検出されていたというのです。
自然界で分解されにくいことから、「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFAS。熱に強く、水や油をはじく性質から、さまざまな用途で使われてきましたが、一方で健康へのリスクも。血液中のコレステロールの上昇や、甲状腺、肝臓に関連する病気、一部のがんを引き起こす可能性などが懸念されています。
【動画】PFASはフライパンのコーティングや半導体、火災用の泡消火剤などに使われていました。
そこで国連は2009年以降、1万種類以上があるとされるPFASの代表的な3種を規制の対象に。日本でも製造や輸入が禁止され、昨年にはWHOの関連機関がPFASの一種「PFOA」を発がん性評価の「最も高い」グループに分類しました。
そんななか、健康に影響を及ぼしかねない高濃度のPFAS が、市民の生活圏で見つかる例が関西でも相次いでいます。今夏、兵庫県明石市の市民団体が、明石川流域に住む33人を対象に血液検査を実施。半数にあたる16人がアメリカ国内の安全基準値を超えていました(※日本に血中濃度の基準はなし)。
明石川流域では、国の暫定目標値の最大92倍のPFASが検出されており、団体側は血中濃度の高さの一因を「水道水の日常的な摂取」と分析。しかし明石市は、水道の吸水口では暫定目標値以下となっているとし、「飲み水としては問題ない」と反論。汚染源の特定には、至っていません。
一方、大阪府摂津市に住む70代の男性は、4年前に初めて受けた血液検査の結果に衝撃を受けたと話します。血中からアメリカの基準値(20ng/ml)の5倍以上ものPFASが検出されたのです。数値は今でも基準値の3倍ほどと高水準。体の不調はありませんが、不安な日々を過ごしています。
原因とみられているのは、男性が自分で食べる野菜を育てていた畑の土壌。今年8月、畑の地下水がたまる井戸を調べたところ、国の暫定目標値(50ng/ml)の600倍にもおよぶ1リットルあたり3万ngのPFASが検出されました。
その排出源のひとつとされているのが、かつてPFOAを製造していた近くの化学メーカーの工場。有害性が懸念され始めた12年前に製造は取りやめになりましたが、周辺の地下水のPFOA濃度は現在も高いままです。
地下水の汚染は「当社の製品が原因のひとつ」と認めたメーカー。工場の敷地内に残るPFOAを外に出さないよう遮水壁を作るなどして、地下水の浄化を目指す対策を講じているといいます。しかし、すでに汚染されている敷地外の水や土壌の浄化、住民の健康管理の責任を負うのか誰なのか?現在、国は排出源に対し、“敷地外”のPFAS汚染を浄化する義務は求めていません。
先ごろ、そんなメーカーや行政に対し、敷地内の情報公開や公費での血液検査などを求めて住民らが動き始めました。住民の不安や関心が高まっている問題にもっと真剣に向き合ってほしいーー。そんな要望に対して大阪府は「(現状で)できる限りのことはさせてもらっている」との見解を示し、さらに踏み込んだ対策に乗り出す考えは今のところないようです。
そんななか、何より「真実」が知りたいと話すのは、PFASによって畑が使えなくなった男性。この土地に何が起こったのか?真実を明らかにしたうえで、「せめて孫の時代にはキレイな土地に戻してあげたい」と願っているといいます。
PFAS汚染問題の実態は12月10日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。