松本まりか「『あ、この人が必要だ』と本能的に感じてしまうことがある」

4月21日にスタートした「ミス・ターゲット」の主人公・朝倉すみれは、悪事を働く男だけをターゲットにしてきた百戦錬磨の結婚詐欺師。引退を視野に入れて本気の婚活を始めてみたところ、まったく思い通りに進みません。すみれは実は、普通の恋愛経験がゼロだったのです。そんなすみれが悪戦苦闘しながらも、真実の恋を知り、少しずつ変化を遂げていきます……。

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すみれを演じているのは、出世作「ホリデイラブ」(2018年)で演じた井筒里奈を筆頭に、数々の作品でクセのあるキャラクターを演じてきた松本まりかです。今回は、非常に複雑で多面的なすみれをチャーミングに演じている松本まりかへのインタビュー前編。彼女にとって初の王道ラブストーリーとなる本作について熱く語ってもらいました。

――脚本家の政池洋佑さん(映画『ハケンアニメ!』(2022年)で第46回日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞)は、松本さんをイメージしてすみれ役を作ったそうですね。

私は悪女役が多かったので、“結婚詐欺師”の部分に私を当て書きされたのかなと思いつつ、蓋を開けてみるととってもヘンテコなすみれがいっぱいいました(笑)。でも、私の本質みたいなものを突いていて、ちょっと驚いています。

――すみれに通じる松本さんご自身の本質とは?

例えば、好きな人に対してわかりやすく「全然好きじゃない」と言ったりする、ちょっと天邪鬼なところがあります。本気の恋愛になると突然思い通りにできなくなるところもそうですし。あと、面白い人……自分で自分を面白いと言うのはあれですけど(笑)、私もすみれのように結構人から笑われます。ちょっとダサイところやダメダメなところも自分を見ているようです。

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――政池さんがすみれを「悪人でありながら、チャーミング」と表現したのは、そういう部分があるからかもしれませんね。

当初想定していた“結婚詐欺師”の役はもっとクールでかっこいいイメージでしたが、政池さんの脚本からはすみれの人間性が見えるので、全然かっこつけられなくて。「あれ? もっとかっこよく演じたいんだけど、全然かっこよくできないぞ。」と、今は思うがままに演じています。頭で考えてしまうと難しいけれど、のってしまうと「あ、ここまで突き抜けちゃっていいんだ」と体が自由に動き出す感覚があって、演じていてとって楽しいです。

――脚本があるのに自由になれることが、興味深いです。

政池さんの脚本の力だと思います。あとはキャストの皆さんのお芝居に乗せられて、引き出してもらっている感覚です。現場でお芝居をしてみたら、こういうすみれをやらざるを得なかったんです。体がそういう風にしか動かないといいますか。きっかけは、3話のスナックでのお芝居でした。(鈴木)愛理ちゃんと筒井(真理子)さんとお芝居をしていたら、アドリブがどんどん増えて、楽しくなっちゃったんです。そのときに「こっち(のお芝居)だな」と確信を持てたことで、変わっていきました。でも、1話からちょっとずつ、話毎にお芝居が変わっていった気がします。

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――スナックのシーンでのその覚醒は、他の場面にも影響がありましたか?

ありました。八嶋智人(すみれの詐欺のターゲット、轟武蔵役)さんは吸引力がすごいので、轟さんとのシーンはものすごくコミカルなやりとりをしていますが、それが正解だと思えました。「悪女だからもっとクールにやらなくちゃ」と頭で考えたすみれ像を作るよりも、その場その場の雰囲気で出てきたものや、そういうシーンを積み重ねていくことが、生き生きとした面白さを生むタイプの作品だと思います。

――21日に放送された第1話で、松本さんが好きなシーンを教えてください。

ラストの、すみれが恋に落ちた瞬間です。最初は「人ってそんなに早く恋に落ちるの?」という疑問がありましたが、演じているうちに「いやこれは落ちる…!」と腑に落ちました。人というのは、頭では理解できていなくても「あ、この人が必要だ」と本能的に感じてしまうことがあるよねと、そのシーンをやりながら実感できたんです。すみれが宗春(上杉柊平)に言った、「あなたの幸せ、どんなものか見てみたいんです」という台詞。「好き」かどうかはわからないけれど、あれはすみれが初めて人に興味を持った瞬間でした。ヘレン・ケラーが初めて「water」という言葉を発したときのように、すみれの世界が動き出したんです。

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――すみれの笑顔や強い口調から、宗春への好奇心や興奮が伝わってきてとても可愛かったです。

現場に行くまでは、あれはもっと冷静に台詞を言うんだろうなと思っていたんですけど、「違うな。頭じゃなくて、心で求めちゃうんじゃないかな」と思って、ああいうお芝居になりました。

――そして2話の見どころは?

すみれと宗春の「よもぎデート」は面白いと思います(笑)。2話もとにかくラストシーンまで見てほしいです。この作品は毎話ラストが秀逸ですから、ラストシーンだけでもいいので毎回見逃さないでほしいです

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――ラストだけ見るのは逆に難しいです(笑)。

そうなんです。ラストシーンだけでもと言えば、最初から見てもらえるかなと期待しています(笑)。

――記者会見でこのドラマを「大人の純愛キラキラ青春詐欺物語」と形容していましたね。

はい。昨今珍しい王道のラブストーリーだと思います。大人が真正面から純愛をしてみたらどうなるんだろう? 大人だってピュアな恋愛をしていいんじゃない? という、ありそうでなかった切り口です。私自身、偏った恋愛をする役を多く演じてきたので、初めて純愛ものをやる機会をいただいて、本当に楽しいです。翌日の仕事や学校を控えた日曜の夜に、あまり頭で考えずに見ても、クスっとしたりキュンとしたり、なんだか泣けてきたりする作品になったらいいなと思っています。1週間の楽しい締めくりにしていただけたら嬉しいです。

取材・文/須永貴子

(後編へつづく)

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スタイリスト:コギソマナ(io)  ヘアメイク:千吉良恵子(cheek one)

第2話あらすじ

お金があれば幸せになれるという朝倉すみれ(松本まりか)と、お金がなくても幸せになれるという村松宗春(上杉柊平)は、正反対の価値基準を持ちながら、それぞれの幸せのカタチに興味を抱き、再び会う約束を交わす。「あなたの幸せ、どんなものか見てみたいんです」というすみれのリクエストに応え、宗春は律儀に、自分が幸せを感じられるある場所へとすみれを連れて行くが、それはすみれに史上最低のデート体験をもたらすことになり…

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ドラマ「ミス・ターゲット」は、ABCテレビ・テレビ朝日系列で毎週日曜よる10時放送中。放送終了後、TVer、ABEMAで見逃し配信。

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