『M-1グランプリ』 総合演出に聞いた! 劇的優勝たくろう&3時間半生放送の舞台裏「1週間前くらいから悪夢を見ます」

こんにちは!日本一陽気なオフィスレディ喜多ゆかりです。

今回は、『M-1グランプリ』で総合演出を務めた下山航平氏へのインタビューです。トップバッターのヤ―レンズ楢原さんが出番直前に言い放った言葉、そして放送1週間前から見る悪夢とはどういうものなのか、お聞きしました。

©️ABCテレビ

――今年も、本当に盛り上がりましたね。

今年は終わってから「いい大会だったね」と声をかけてくださる方がより一層多い感覚です。ファイナリストの皆さんのネタがおもしろかったというのは大前提で、ネタ以外にも、今田さんと客席の令和ロマンのやり取りはじめ、笑神籤(えみくじ)ゲストの皆さんのコメントまでおもしろかった。M-1を1回も観たことがなかったという豊昇龍関が「もっと早く観とけばよかった」とコメントした場面とか最高でした。ネタ以外の部分、OAを取り巻く全てがいい方向にいったなという感じがします。

――大阪で活動されているたくろうのお2人の優勝は劇的でしたね。たくろうのお2人って、人柄の良さがにじみ出ていて、昔から変わらないですよね。

僕がたくろうと出会ったのは、たくろうが初めてM-1準決勝に進出した2018年でした。その夏のABCお笑いグランプリでディレクターをやっていた時に知り合ったのですが、当時も今も全く印象は変わらないです。2人とも人懐こくて雰囲気がやわらかい。なんか応援しちゃいたくなる。それから7年、準決勝に届かない苦しみを見ていたので、決勝進出の時点で「こんなことあるんだな」と勝手に胸が熱くなっていました。人柄もそうですが、衣装も7年前と一緒なんですよね。でも赤木さんに聞いたら「僕は10キロくらい太りました」って言っていました。確かに昔の映像を見たら、今よりは痩せているかな…?体型の変化は全然気が付かなかったです。

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――M-1終了後、たくろうさんとは言葉を交わしましたか?ABCお笑いグランプリのように、決勝メンバーと祝勝会のような…

僕らとはないですよ!M-1は放送後のコンテンツが深夜までぎっしり詰まっているのでやってないです、ないないないない(笑)。翌日からもご存知のように仕事ラッシュなので。早く会いたいです。

決勝戦の一週間ほど前にファイナリスト1組ずつ対面で打合せをして、披露するネタの候補をあげていただくのですが、実は打合せ時点では、2本目のネタがまだ「ビバリーヒルズ」とは決まっていなくて。2本目の候補を5~6本提出していたんです。その中に、2018年のABCお笑いグランプリで披露した「人間ドック」のネタが入っていて。やる可能性は低かったと思うのですが、それも2人と「なんか懐かしいね~」なんて話してました。

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――近年は、前の年に活躍した芸人さんがMー1に出るか出ないかだけでも、ニュースになりますね。

制作サイドとしては、前年活躍された方にはもちろん翌年も出ていただきたいですけど、予選敗退ですらM-1はニュースになってしまうので、ご本人たちにとってネガティブになるならば、そういう選択になるのはやむなしと思います。決勝2本目、最終決戦にまで進んでいるような方たちは特に、今の自分たちの状況で出るべきかどうかが分かるんだと思います。だからそんな中でも、M-1に出続けている方たちは本当にすごいなと思います。

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――今年で言うと、トップバッターのヤーレンズさんは決勝3回、真空ジェシカのお2人は5回ですもんね。

特にヤーレンズは去年のM-1直後は出ない選択肢もあったと思うんです。それでも今年は衣装も変えて、今までのスタイルではない“しゃべくり漫才”で挑んで、審査員の中川家・礼二さんに「完璧でした」って言われて。あまりにもカッコよかったです。実はOAに音声は乗らなかったのですが、笑神籤(えみくじ)でヤーレンズが引かれてスタンバイするまでの道中、楢原さんがカメラに向かって何かを言い放ってから出て行ったんですよね。後で素材を見返して知ったのですが「最高の大会にするぞ!」ってカメラに向かって言ってたんです。熱すぎ!ヤーレンズのお2人はラジオで毎週、ABCにいらっしゃるんですが、その際も毎回M-1作業部屋をのぞいて「やってますか?」とか声をかけてくれて。本当に応援したくなる2人です。来年ラストイヤーなんですよね~

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――審査員のフットボールアワー・後藤さんもおっしゃっていましたが、セットも変わったけど、大会の雰囲気も変わったと。

漫才師の皆さんの空気もすごく変わってきていると思います。準決勝終わりの決勝進出者発表では、発表が終わった後、選ばれた方を中心にいくつも輪が出来ますし、決勝で笑神籤が引かれたときも、周りが「いってこい!」って。かつての張り詰めたM-1の空気とはきっと違いますよね。だから、制作サイドの感覚も柔軟に変わっていかなきゃいけない。今は、真剣勝負の先の「楽しさ」が見えるような最高のエンターテインメントを作る感覚です。細かいアップデートですが、今年からオープニングVTRで上半身裸になる写真をやめました。今の出場者の皆さんも、小学校、中学校のときにM-1を見て漫才師に憧れたという方がほとんどです。僕たちの作るOAが未来のM-1戦士を育てていると思うと、生放送の1カット、台本の1フレーズ、全てが責任重大です。

――その21回目を迎えたM-1の総合演出をやるというのは、どのような気持ちですか?

1週間前くらいからすごく悪夢を見るんです。システムトラブルで得点が出ませんとか、テロップ出ないとかVTR流れないとか・・・M-1のOAって、VTR、テロップ、CG、バーチャル、LED扉などなど、本当に複雑なことが絶妙なバランスで成り立っているので。たとえば、笑神籤で「誰々です」と発表されて、スタンバイエリアから立ち上がってコンビ紹介VTRがスタートするまで約15秒なのですが、こちらはどのコンビが呼ばれるか分からない中で、紹介VTRは10本、つまり10個の選択肢があるワケです。それをVオペさん(※1)は即座に選んでセットして、「セットできました」「はいOK!いきます、VTRスタート!」と指示を出すのですが、それもかなりの信頼関係とプロ意識がないと成り立つことじゃないです。なので、人為的ではない、どうしようもない機材トラブル系の夢をすごく見てしまいます。

――M-1の生放送は、すごいプレッシャーなんですね。

もう、ここまで国民的番組として期待されているコンテンツになったので、本当にミスできないじゃないですか。だから、いつもM-1の生放送が終わった瞬間の最初の感想は「とにかく無事に終わってよかった」という安堵の気持ちが一番にきます。決勝戦3時間半、今は敗者復活戦も含めると7時間以上です。OA卓(※2)に座っている人間としては、何より演者さんに損があるようなミスは絶対に許されない。

出場者の皆さんがいつまでも出たいって思ってもらえるM-1にしたいんです。

そういう意味では、また来年も出たい、この舞台に立ってみたいと思える大会に、今年はできた気がします。

――最後に、今年のM-1でもう一度見て欲しいシーンはありますか?

1stラウンドでたくろうの笑神籤が引かれたシーンですかね。よく見ると、赤木さんがポケットから財布と携帯電話を取り出し、椅子に置いてから舞台に向かっています。持ってきてたんかい、というね(笑)。

©️ABCテレビ

※1 VTRオペレーター。生放送や収録において、編集されたVTRを再生する操作を担当する人。

※2 副調整室(サブコントロールルーム)に設置されている、生放送や収録の進行を管理・操作する調整卓

ABCテレビ『M-1グランプリ』は、TVerでも無料配信中。12月28 日(日)夜 10時 30分からは『M-1グランプリ2025 アナザーストーリー』

番組情報

M-1グランプリ2025
12月21日(日)午後3時より生放送 (ABCテレビ・テレビ朝日系全国ネット)

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