12時間芸人舞台裏大密着記!!『第46回ABCお笑いグランプリ2025』準決勝 ザ・マミィ酒井貴士 「大阪の洗礼を受けました・・・」 東京ではスベリ知らずのネタが大阪ではウケない!?
ダウンタウン、ナインティナイン、中川家、ますだおかだ、フットボールアワー、千鳥、かまいたち、霜降り明星・・・今のお笑い界をけん引するレジェンドたちが、芸人人生の大きな通過点として参戦・制覇した「ABCお笑いグランプリ」
その準決勝が6月17日に大阪のABC朝日放送に隣接するABCホールで開催された。東京組は、前日深夜23時に夜行バスで大阪へと向かい、大阪組も早朝からリハーサルをこなす。この長い長い一日に密着する。
PART3の今回は、ラストイヤーのザ・マミィ、準決勝トリを務めるエバース、そして決勝進出者発表の様子もお届けする。

午後3時を過ぎて、順調にDブロックまで終わる。Dブロック1組目のザ・マミィもラストイヤー10年目。だが、ザ・マミィとしては出場しておらず、卯月というトリオ時代に予選には出場していたという。林田洋平と酒井貴士のふたりに想いを聴くと、対照的な感想が返ってきた。

林田『実はラストイヤーだと知らなかったんですけど、同世代のかが屋さんとかが毎年出られているのは良いなと思っていました。たまたまエントリーしていなかっただけで、トリオ時代以来、エントリーしたらラストイヤーでした』
酒井『僕はラストイヤーを意識していました。マネージャーに動画審査予選へのエントリーをお願いしたんです。トリオ時代の8年前、準決勝に出ましたが、大阪の洗礼を受けました…。東京ではスベリ知らずのネタだったのに、大阪でスベリまして…。その雪辱を晴らしに来ました。満を持して絶対に勝ちたいと。相方には気遣いをしていて、こんな想いを語ったら硬くなるかなと。そしたら、僕がそこそこ噛みました』

林田『そんな気遣いは全く知らなかったですね(笑)。噛んだだけでなく、今日は色々な事が起きて…。本番中に舞台がめくれたんですよ。お呼びじゃないと言われているのかなと(笑)』
酒井『またもや大阪の洗礼ですよ…』
林田『東京勢の時に舞台がめくれて、その穴から吸い込まれるようになっていたんですよ! どうせなら吸い込んで欲しかった!』

酒井『事務所から「若手にチャンスを」と言われたのを断ってまでも、出場したのに…!』
普段、テレビなどの露出が多いだけに圧倒的な華を感じたし、真剣さの中にもユーモアを感じさせてくれた。
発表までの過ごし方を聞くと、まだ決めていないということだったが、後ほど話を聞いてみると金の国渡部おにぎりさんと、ABCから徒歩1分の「たこやき瑛ちゃん」でたこ焼きを注文したところ、2個おまけしてもらえたと嬉しそうに報告してくれた。

【PART2 かが屋・加賀 「4分に出来ていなかった・・・」 パーテーションの裏で極秘ミーティング】
Eブロックも終わり、いよいよラストのFブロックが夕方4時30分頃から始まる。ABCホールの舞台下にある本番前の前室に本番を控えた芸人たちが溜まっていく。ラストイヤー10年目であるエバースの佐々木隆史さんが準決勝の模様が映るテレビモニターの真ん前に陣取って座りくぎ付けになって観ている。相方の町田和樹さんも喫煙所から出てきて、テレビモニターの方へと寄ってきた。佐々木さんは席を立ち、町田さんの横に行き、手振りを入れながら何やら町田へと指示をしている。時折、ふたりは舌を出して上下に動かせながら本番を待つ。個人的には、この日、一番の緊張感を目の当たりにした。ヒリヒリとしたピリピリとした独特の空気…。それもそのはずエバースは大トリなのだ。そう言えば、去年の大トリは令和ロマン。その時とは、また違う雰囲気が場を包む。舞台袖へと上がり、本番3分前、再び打ち合わせるふたり。

本番終わり、この日最後のインタビュー。

――大トリでしたが、いかがだったでしょうか?
佐々木『あんまりトリは無いんですけど、満を持してというか。緊張感はありましたね』
町田『プレッシャーはありました』
――じっとモニターを見つめる佐々木さんが本当に印象的でした。
佐々木『お客さんがどういうボケで笑っているのかなと。ネタは変えないけど、本番で焦らない様に落ち着かせる為ですね』

――モニターの前で町田さんと手振りを入れながら打ち合わせをされていましたよね?
佐々木『あの時は僕の言い回しを変えようと思って、ただ急に本番で変わったら、町田がテンパると思ったので、事前に言いました』
――町田さん的にも事前に言ってもらった方が良かったという事ですよね。
町田『もちろん、もちろん』
――去年は、「M-1」決勝を始めとして、「ABCお笑いグランプリ」の決勝もありましたし、その他にも色々な賞レースがあって、本当に多くのネタが必要になるのは凄く大変だなと思うのですが。
佐々木『「M-1」に向けてネタ作りにはなっていますけど、このネタも本当はやりたいんだけどという時に、他の賞レースで成仏させるというか』
町田『頼もしいです。すみません』

――この1年、より忙しくなられましたし、おふたりの同居生活も解消されたので、ネタ作りも変わってきたのでは?
佐々木『今までは賞レースがあったら、1か月前くらいから毎日改良をしていたので、逆にこねくり回して改悪にもなっていたんです。でも、今は時間が無い分、こねくり回さなくなって、良いネタのままで出来ていますね。前は同居していたので町田もいましたけど、今は僕ひとりで考えているので、町田はヒマになったなと。町田はいいなと』
町田『そんな事はない。まぁ、片隅には常にありますよ』
佐々木『片隅にあるだけなんでね』
昔の昭和芸人の楽屋裏を勿論観た事は無いが、2000年代に入ってからの「M-1」初期の芸人たちの光景はずっと取材してきている。昔からに通じて、M-1初期にも確実にあった何とも言えないヒリヒリ感ピリピリ感がふたりにはあった。これはあくまで好みでもあるが、男臭さを感じる無頼派とでも言おうか。この日の最後のインタビューとしては、誠に気が引き締まり背筋が伸びるものがあった。
【出番終わり、お笑いグランプリのステッカーを目に貼るフースーヤ谷口理さん】

夜6時になると、出番終わりに外出していた芸人たちが続々と戻ってきた。PART1でお話を伺ったぐんぴぃさんは、なんと暑い中、梅田のグラングリーン大阪まで歩き、一人でお好み焼きを食べてきたという。


夜7時。決勝進出者12組がABCホールで、南海キャンディーズ・山里亮太と鷲尾千尋アナウンサーが司会のもと発表される。先程まで観覧客が座っていた客席に、準決勝進出全42組が座る。ABEMA生配信もあり、現場は特有の興奮と高揚が感じ取れる。決勝進出12組が発表されて、選ばれなかった30組は即座にABCホールから退場するというリアルな流れに…。

今年からの新しいシステムとしては、選ばれた12組の名前が貼られたボールを、山里が箱から引き、引かれた組はその場で決勝のAブロック・Bブロック・Cブロックを選んでいく。ブロック分けが決まったのちに、各ブロックの4組が1番から4番までが記されたクジを引き、出場順番が決まっていく。

結果は、Aブロック=金の国、家族チャーハン、センチネル、天才ピアニスト。Bブロック=Gパンパンダ、ザ・マミィ、エバース、金魚番長。Cブロック=ソマオ・ミートボール、フースーヤ、かが屋、ハマノとヘンミ(出番順)となった。

夜8時に生配信は終了するが、決勝進出を決めた12組はまだまだコメント収録などに追われる。インタビューを担当した芸人皆様にお祝いの言葉をかけるが、加賀さんはカメラを手に芸人たちを撮影している。余談だが、生配信の時に負けると思って帰りの新幹線を予約してしまったと嬉しい悲鳴を上げていたザ・マミィの酒井さんに、その後の最新状況を聴くと、無事に予約をキャンセルできたとのこと。そして、大トリのプレッシャーと戦いながら、見事2年連続の決勝進出を果たしたエバースの佐々木さんにも短い言葉で祝福を伝える。
深夜0時。東京への夜行バスも旅立つ。色々な想いを乗せたバスが帰路へと急ぐ。


6月29日(日)午後2時30分から決勝戦生放送が始まる。今年のポスターには、プロレスのリングがデザインされて、『いちばん得意な技で、ぶちのめせ。』と綴られている。戦であり祭である唯一無二のストロングスタイルな「ABCお笑いグランプリ」。チャンピオンベルトを勝ち獲る芸人を、その目で是非とも目撃して頂きたい。

『第46回ABCお笑いグランプリ2025』 決勝戦は6月29日(日)ごご2時30分からABCテレビで生放送。ABEMAでも全国ライブ配信される。
(取材・文/鈴木淳史)
(企画・撮影/喜多ゆかり)
