「どの舞台よりもウケる」“「M-1」の申し子”が歩んだ、楽しくも険しい優勝への道のり
「M-1グランプリ」ファイナリストは、あの日、あの時、何を思ったのか?過去の貴重な映像と共に振り返る「M-1レジェンドヒストリー」。西川きよし・横山やすしに憧れ、“しゃべくり“という王道漫才を極めようと、銀シャリは2005年に結成した。結成した年は2回戦で敗退するも、翌年には早くも準決勝進出を果たす。…が、その後は準決勝で敗退したり、準決勝に進出できたりを繰り返した。結果が思うように出ないふたり…しかし、それでもしゃべくり漫才を突き詰める。また、M-1会場との相性の良さや、2016年に優勝を決めた瞬間の自分たちの本当の思いを面白おかしく赤裸々に語る。
しゃべくり漫才で「M-1」優勝を狙う決意
橋本、鰻、それぞれがコンビを解散し、銀シャリが結成された2005年。結成約2ヵ月で「M-1グランプリ」に挑戦した2人は、舞台裏のインタビューで「2ヵ月くらいでも上まで行けるんだぞというところを見せつけられたら」と、2回戦突破を目標に掲げるも、敢なく2回戦敗退。しかし翌年にはすでに準決勝進出と、大きな飛躍を果たした。当時について橋本は「準決勝だけで満足してて。(決勝戦は)夢のまた夢の場所」と回想。
しかし、2006年のインタビューで橋本は「大阪ではテレビをつけたら漫才をやってるのが印象に残ってて。昔の上方漫才、横山やすし・西川きよし師匠がカッコイイなと」と、しゃべくり漫才へ思いを吐露。ここから銀シャリは“しゃべくり漫才で「M-1」優勝”という目標に向かって歩みを進める。
「『悔しい』ってちょっと調子乗ってる」
2007年、銀シャリはトレードマークの青ジャケットを着始め、漫才コンビとしてのキャラを強めるも、三回戦で敗退。2008年、再び準決勝に返り咲いた際には、2006年の準決勝進出時のように満足はしていなかった。ネタ前には笑顔で「静かに燃えています」とカメラの前で語る2人だが、準決勝敗退、敗者復活戦敗退と、決勝の舞台が遠のくと、橋本は「準決勝で喜んでいた時期もありますけど、準決勝が自分たちの中で早い段階でゴールではなくなって。決勝行きたいのに行けてない」と、静かに悔しさをにじませる。
その思いが叶うのは「M-1」が一旦終了となる2010年。鰻は準決勝から「悔しい思いをしてきたので今年こそ(決勝に)行きたい」と口にし、決勝で5位に終わると「悔しいですね、楽しかった分」と語る。一方の橋本は準決勝で「肩の力が抜けていい状態だと思う。楽しくやるだけ」、決勝では「楽しみでしょうがない、なんなんですかねこの感覚」と顔をほころばせる。この両者の「M-1」をめぐる感情についてインタビューでは、当時決して「悔しい」と言わなかった橋本が「悔しいもあるけどうれしいもある。悔しいともまたちょっと違う」と言うと、鰻が「俺めっちゃ(「悔しい」って)言ってもうてるから恥ずかしくなる」と苦笑い。橋本から「『悔しい』ってちょっと調子乗ってる」と痛いところを突かれた鰻は恥ずかしそうにしつつも、「調子乗ってるんですよ」と素直に認める。
「遂に本気で優勝を狙えるところまできた」
「M-1グランプリ」復活の2015年。5年ぶりの「M-1」でも橋本は笑っていた。ニコニコしながら受付に並び、本番直前の舞台袖でも「これこれっていう緊張感」と喜びを抑えきれない。そして、「5年分の成長を一気にお見せできれば」という橋本の言葉通り、決勝進出、最終決戦進出と、優勝への階段を一気に駆け上がる。しかし優勝したのは、9票中6票をもぎとったトレンディエンジェル。2人の口から出た言葉は「仕方ないですね」(鰻)、「また明日からがんばります」(橋本)。
このときのことを振り返った2人は「(敗者復活戦でトレンディエンジェルが)めっちゃウケてたんですよ、間違いないかなって」(橋本)、「絶対トレンディ、あの年は」(鰻)と完敗。しかし、橋本が「悔しいって雰囲気出してますけど、うれしいの方が勝ってますね。『M-1』で初めてバチッてハマったっていうか、遂に本気で優勝を狙えるところまできた」と語るように、このとき2人は翌年の優勝しか見えていなかった。
2016年の決勝戦前、「優勝ですよ。優勝しかないんですよ」と、これまでになく強い言葉を発する鰻。橋本も「やるだけですホンマに。期待は自分らがしているので、一番楽しくできると思います」と、これまでになく真剣な表情。1年前、「M-1」復活にただただ喜び楽しんで漫才を披露した銀シャリから確実に何かが変わっていた。
「『M-1』の予選からお客さんとの相性がめっちゃ相性よかった」と語る橋本を、鰻は“M-1の申し子”と呼ぶ。「どの舞台よりも一番ウケる」という「M-1」の舞台で、「毛細血管まで届いてる感じ」のボケとツッコミを繰り出し、最大限の笑い引き出した2人。そんな銀シャリにとって「M-1」は“ある装置”だという。王道のしゃべくり漫才を貫き通す銀シャリは、そんな「M-1」に感謝しきり。果たして銀シャリが思う、「M-1」が漫才にもたらしている効果とは何なのか。
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