“どうして人は笑うのか?を説明できる人が勝てる” 料理の世界でも同じことは言える 「CHEF-1グランプリ2024」2回戦・札幌会場 審査員インタビュー

「ハンバーガー・サンドイッチに革命を起こせ」という課題に対してシェフたちはどのような答えを出したのか? 札幌会場審査員の、札幌ベルエポック製菓調理専門学校の松村克己先生、四季によって食材の造形や色彩にこだわった芸術的な演出が楽しめる“ル・ミュゼ”の石井誠シェフ、そして札幌のグルメ情報誌「poroco」をはじめ「札幌の美食店」「札幌CAFE本」などの、統括をつとめる福崎里美編集長に話を聞いた。

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Q1.審査を終えての感想は?

石井:全体的なレベルは足踏みしていたのではないか。参加者に大会のテーマに対する理解が足りていないと感じた。テーマがあって、それをどう料理に落とし込むかという思考の流れを確立するのが大事。料理の基本が未熟なシェフもいたと思う。食に革命を起こすほどのもの、プロとしてより面白いもの、を目指してみんなが参加していたとすれば、僕はまだ物足りない。

今は色んな料理のコンクールがあるが、技術的にレベルが高いシェフが集まってもつまらない大会もあるし、「CHEF-1グランプリ」のようにイベント性が突出した大会もある。その辺はバランスの問題かなと思う。本当にいいお店の本当にやる気のある子がもっとエントリーして欲しい。

福崎:今回のテーマが「ハンバーガー・サンドイッチに革命を起こせ」ということで、ジャンルによっては全然パンなどを作ったことのないシェフがパン作りに挑戦している。全く違うジャンルや、キャリアが浅くても挑戦しやすいこともあり、テーマは面白いと思うが、審査が難しく、参加する側のシェフも迷ったと思う。勝ちに行くなら自分の得意料理にパンを組み合わせて出すことになるのだろうが、正直斬新さが少なかった印象。革命を「食べたことがないもの」だとすると、そのテーマ設定がそもそも難しいのだろう。

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松村:今回に関しては出場者が基準をどこに合わせているのか、テーマなのか?料理の食べ手なのか?が分かりやすい料理とそうでない料理があると感じた。

Q2.印象に残った料理は?

石井:日本料理ジャンルで蕎麦職人でありながらバンズも作っていたのはすごいと思った。

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福崎:私もそれは同感。ほかに見た目がかわいらしく女性シェフらしい料理も個人的には素敵だと思った。

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松村:蕎麦職人がハンバーガーを作ったという意味では意義深いのではないか。

石井:二年連続で出場している医学生のシェフは、もし本当に料理のことが好きでやりたいのだったら、誰よりも熱中できる可能性があるという意味で、一番将来性があるのかもしれないとは思った。料理自体はまだこれからという感じ。

審査をしていて思うが、料理に大事なのは想像力。僕はほとんど試食をしないタイプだが、それは「これをこうしたらこうなる」「重ねたらこういう食感になる」「うまみと塩味があるからこうなるよね」ということを頭の中で組み上げられるから。その上で作って一回確認で食べるぐらいが理想。そうでないと毎回試食していては、どんどん味が分からなくなる。

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松村:僕は健闘した若手シェフに一票入れたい。点数は高くないが印象に残る料理。アイデアとしては革命的という意味では抜けていた。コーヒーを使っており、そのままだと苦いだろうからマーマレードを入れたりして、よく完成までもっていったなと思う。(調理学校の)一年生だし頑張った。

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石井:若手シェフの中には伸びしろを感じさせる人もいた。ただ、人生は一発勝負の世界でもあり、大会審査で結果を出せるかどうかが決め手だったりするので今日ダメだったらダメなのかもしれない。それがプロの世界かも。

料理は下手じゃないけど、戦略がイマイチの人もちらほら。横に頭の切れる人がいてアドバイスがあれば伸びるだろうと思える人がたくさんいた。テーマへの着眼ポイントが問題。
冷たくてもおいしいもの、ぬるくて美味しいものはこの世にたくさんある。コンビニのおにぎりだってそう。サンドイッチもそう。冷たくもあったかくもないけど味が決まっている。それも踏まえて大会でどのような料理を出してくるかは料理人の技量ではないか。
 

Q3.出場者が勝ち進むために必要なことは?

松村:技術スキルは必要だろうが、完成度をどれだけ高められるかだろう。“こういう料理を作りたかった”というのをきちんと表現しないといけない。審査員に「(出てきたものは違うけど)本当はこういうのを作りたかったのでは?」と思わせてはダメ。そのうえで審査員の予想を上回ればいいが、高度な技術や驚きよりも料理の完成度が大事だと思う。あとは場数も必要。

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石井:場数も必要だし、場数が重ねられないなら1回2回の経験を密度の濃いものにする必要がある。特に「CHEF-1グランプリ」で勝つためには審査員をいかに納得させられるか、人間力も含めて美味しさをどう構築できるかも大事。

「CHEF-1グランプリ」はスター性があってなおかつ美味しいものを出す、他人を喜ばすことができる料理人が勝てるのだろう。それはある意味才能だが、ちゃんとメソッドがあって、温度だったり、食感だったり、甘みと酸味、苦味とか、どこを抽出したら美味しいものができるかという分析ができないといけない。

つまり、“美味しいとは何か?”をちゃんと理解できている料理人でないとだめ。それはどんなジャンルでも当てはまる。お笑いもそうだし、まず基礎が大事。どうして人が笑うのかをちゃんと言葉で説明できる人。なぜ人は美味しいと思うのかを説明できる人。例えばワイン、チーズ、生ハムなどは何千年もの歴史の中で、ずっと作り続けられている。美味しいには全て理由があって、それをちゃんと理解し、たくさんの引き出しがあり、美味しさをきちんと勉強していて、いろんなテーマがあるなかでパッと言われたときに、短時間で「この引き出しのこれを使って当てはめよう」というのを本番でも物おじせず、出せる人。更に引き出しから出したものを具現化する技術があって、人間力が備わっていれば勝てる。

審査員に対して自分の表現を伝えられる人は「この人が作ったんだ」というエネルギーを与えて、料理にプラスアルファが生まれる。ブラインドで食べるなら別だが、審査員の前で僕が作りました、の雰囲気をまとっているカリスマ性がある人は強い。

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福崎:私が優勝するためにシェフに心がけて欲しいのは、食べる私たちの気持ちに寄り添って作ってほしいということ。量の問題とか、食べるときに食べにくい料理が出るとつらい。別の大会でスイーツの審査をすることもあるが、食べる人の気持ちで作ってくれている量というのがある。人は飽きちゃうと食べられない。食べづらいと感じた料理は「一回自分で食べてみたのかな?」と感じる。また、一口でおいしいと感じるものは評価が高い。

石井:量、見た目、食べやすさ、は料理の基本。ちなみに食べにくい料理はレストランにおいてはナンセンスだ。

福崎:プロの人は審査で試食する際、味の奥にある何かを感じ取るのかもしれないが、私は食べる専門で、特に今回はハンバーガー・サンドイッチなので食べにくい時点で点を低くしてしまう。他にも飽きる料理はダメ。飽きない味、食べ進められる味や、見た目の工夫をしてほしい。

石井:一口二口の中で収まり、きれいで美味しくて食べやすいものを作れる人が勝つと思う。お寿司だと思って寿司の世界観を作ることも一つの考え方ではないか。見た目も考えると二口ぐらいで食べられて驚きが作れる人。

福崎:舌ざわりやネタとの合わせ方など確かにお寿司はあの中にすごい世界観がある。
 

いよいよ本日4/20(土)と4/27(土)に、「CHEF-1グランプリ2024」3回戦が開催!
詳しくはHPまで!

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