“ストレスは味に乗る” “自分の親が食卓に座っていると思えば落ち着けるはず”「CHEF-1グランプリ2024」2回戦・東京会場 審査員インタビュー

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料理人No.1決定戦「ザ・プレミアム・モルツpresents CHEF-1グランプリ2024」2回戦が開催された。札幌、東京、大阪、広島、福岡の全国5会場で開かれる2回戦。東京は、代々木の服部栄養専門学校で開催された。書類審査の1回戦を勝ち抜いた103名のシェフの中から31名のシェフが集結した。

「ハンバーガー・サンドイッチに革命を起こせ」という課題に対してシェフたちはどのような答えを出したのか? 東京会場審査員の、服部栄養専門学校の関口智幸先生、2016 年に開業した「ナベノイズム」は、4 か月で一つ星、2019 年版からはミシュラン東京で二つ星を獲得した渡辺雄一郎シェフ、そして「食・街・酒・旅」のテーマを掘り下げ、食にこだわりのある“本当にいい店”を紹介する情報誌「おとなの週末」編集部から、グルメ編集者の戎誠輝さんに話を聞いた。

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Q.審査を終えての感想は?

関口:食べる量的には大変だったが、手に取って一口で食べられるなど食べやすいものが多かった。「ハンバーガー・サンドイッチに革命を起こせ」というテーマが決まっていたので、判断もしやすかった。 (渡辺)ジャンル別に分かれているので、各ジャンルの良さを感じられる料理が多かった。シェフのバックボーンだったり、学んできた歴史、修業先などが作る料理に影響していることが伺えた。お題の「ハンバーガー・サンドイッチ」というのをもっと深く考えて調理した方が審査員により分かりやすく伝わったのではないか。例えば、ハンバーガーもサンドイッチも一口勝負。ほおばった時の喜び、味、バランス、量などを整えるのが大事。「革命を起こせ」というテーマなので、面白いことをしたい気持ちは分かるが、食べ物は人に食べてもらってからが勝負。コンクールとはいえ、最終的に「(販売したら)買ってもらえるような商品か?」を考えてみることも必要だと思う。「食べる人」目線は重要。出来上がりが整えられている人もいれば、「どうやって食べるのかな?」と思ってしまう、そもそもハンドフードとして作られていない人もいた。(「CHEF-1グランプリ」のテーマは)ざっくりだから面白い側面もあるのだろうが、コンクールということであればルールを細分化するのも良いのではないか。

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戎:思ったより「どうなんだろう?」と感じる料理は少なかった。昨年、一昨年と比べて出場する人がいっそう洗練されてきたのではないかと思う。これまではフレンチが強い印象があったが、今年はアジア・中華が強かったイメージ。食べる数の割にはお腹が苦しくなかったのは出場者の実力だろう。
 

Q.今日食べた中では、「中国&アジア料理」が印象的だった? それ以外にも印象深かった料理は?

関口:インドのスパイスを使った料理はインパクトがあった。また、馬肉の生のタルタルは良かった。ソースとパティとバンズとのバランスを何回も試作して計算しているはず。そうでないと審査の際に自信をもってあそこまでコメントできないと思う。

当校の学生達にバーガーを作らせる際には、ソースとバンズ・パティなどのバランスがうまくとれないのでグラム単位できっちり測らせること普段から行っています。馬肉のタルタルの一品の完成度は強く印象に残った。

渡辺:作った料理の商品価値を考えてみると良いと思う。「これは売れるな」と思った料理とそうでない料理に分かれた。味のインパクト、分かりやすさで言えば中国料理が強い。日本料理の醍醐味は淡い「淡味」だったりするので、その点どうしても抑えた印象を受けてしまう。

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関口:野菜と魚介だけ使っていて特徴的な料理もあった。あの料理はマヨネーズを使わなかったらビーガン食にもなる。

戎:「中国&アジア料理」ジャンルで言うとツナサンドが良かった。ちゃんとパンも使っていたし。テーマに沿っていて革新的。彼は今回が一番テーマにはまっていると思う。毎年試食審査させてもらっているので「大会テーマへの理解」という面で成長を感じた。

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Q.「革命的」な料理はあった?

渡辺:どうテーマを理解するか、ということかなと思う。あったものをぶっ壊すのか、全部総とりかえするのか、一部を残しつつ変えるのかなど、捉え方。その意味で、ハンバーガーで生肉を使っていたのは今までにない料理。でも起源は「タルタルステーキ」。ハンバーガーの元祖。遊牧民が馬の鞍と背の間で肉が柔らかくなるのを利用した料理。ドイツ・ハンブルグへ渡ってハンブルグステーキになり、アメリカでハンバーガーになった。その意味で、あの料理は歴史にも沿っている。色々なところから情報を集めて精査したのだと思うが、きちんと逆算して、生で出すことのOKが出ている馬肉を選んだのもすごい。バンズも燻製していて、口元に近づけると香りがして生肉なのに焼いた匂いがする。そういう仕掛けもあった。辛味が強すぎるかなとも思ったが、タルタルステーキはもともとタバスコソースを入れるのが定石。その点も勉強しているなと感じた。(一昨年、昨年に続いての挑戦なので)「CHEF-1グランプリ」を通してとても勉強したのだと思う。予選だが手を抜いていないと感じる。勝ちに来ていると感じた。

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Q.優勝するために必要なものは?

渡辺:何よりも味だろう。さらに組み立てが上手で、強弱、バランス、ハーモニーを熟知している人が残る。もう一口食べたいと思える料理。ファーストインパクトが良くて、審査員に二口、三口と食べ進めたい気にさせるのが大事。食べ終えた後に「もう一回食べたい」と思わせたら勝ち。

関口:色々やり過ぎない方が良い。あれこれと足し過ぎて、何が何だか分からなくなるパターンはダメ。今日もそれに近い料理があった。誰かに試食してもらうのも一つの手。自分だけが良いと思っているケースもある。また、コンクールは普段と違う場所で作るので、それで失敗する人を見てきた。現地のレイアウトを見て、時間配分なども考えてちゃんと作戦を練らないといけない。

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渡辺:コンクール当日は普段と空気感が違う。試作で作ったものと同じものを作っているつもりでも違ってくるもの。時間の制限、プレッシャー、自分のメンタルなどが影響する。試作の時は楽しく作っていると思うが、コンクールで作る料理にはストレスが現れる。ストレスが味に乗る。うちの店でも忙しくなってシェフたちが「ワーッ」となり始めると、「ちょっと待て」とブレーキをかけ「自分の親族が食卓に座っていると思いなさい」と諭す。すると心穏やかに作ることができる。当日に忙しくなってバタバタするのは準備していなかった自分が悪いこと。お店の場合は、席数が決まっていて、何時に何名来るか分かっているのだから頭をつかわないといけない。つまり、プランニングができてないと味が乱れる。メンタルトレーニング、イメージトレーニングは大事。コンクールはある種「異常」な状況なんだと思いながら臨まないといけない。

テレビ番組だとカメラも入って非日常になる。タレントさんもたくさんいると自分を見失ってしまう人も出るだろう。

戎:ずっと(二回戦の)審査員をしているが、「CHEF-1グランプリ」には独特の雰囲気があると思う。決勝はタレントさんも豪華。そんな人に食べてもらうことを考えるとなかなか中途半端なことはできない。それを突き抜けることができるシェフが勝てるのだと思う。臆せず挑戦して欲しい。「CHEF-1グランプリ」を通じて本当に進化している人もいる。去年から急成長している人は特に楽しみ。「CHEF-1グランプリ」からスーパー料理人が生まれると面白い。

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