女性だけの定置網漁チーム!? コロナ禍での大ピンチを乗り切った奇抜なアイデアとは?
和歌山県との県境に近い、三重県熊野市にある二木島湾は、リアス式海岸の奥に位置しています。台風などの悪天候の時も、風の影響を受けにくい穏やかな海で、昔から定置網漁が盛んでした。全国でも珍しい女性だけの定置網漁師がいます。舵を取るのはリーダーの田中りみさん。
熊野に生まれた田中さんは、漁師の祖父と父親の姿に憧れ、自分も漁師になりたいと思い育ちました。ところが昔から「女性は船に乗せない」慣習があり、父親は大反対。漁師を諦めて上京し、営業の仕事などを続けた後、2017年、東京で飲食店を展開する企業「ゲイト」に入社します。「ゲイト」は熊野市に水産物の加工場を持っており、田中さんも故郷にUターンして、加工スタッフとして働き始めたのです。
加工場を視察にきた社長から「魚をさばくのは楽しい?」と聞かれた田中さんは「楽しいけど、実は漁師になりたい」と打ち明けます。社長は漁協と掛け合い、「女性が船に乗れないなんて昔の話だ」と理解を得て、田中さんは船に乗り、漁師の仕事を学び始めたのです。やがて、「女性だけの定置網漁チームを作りたい。私達がモデルケースになって、漁師になる女性が増えれば」という思いが芽生えます。しかし定置網を引き上げるのは屈強な男性でも大変な仕事。そこで、普通の10分の1の大きさという超小型定置網を使って、2019年、女性だけの定置網漁をスタートさせたのです。
漁獲量は10分の1ですが、自分達で獲った魚を「ゲイト」で加工、冷凍、搬送して、自社で提供する。学校の職業体験や企業の研修にも積極的に対応してビジネスとして成り立っていたものが、コロナ禍で大ピンチに。新たな販売ルートを模索していた時、値段のつかない小魚をペットフードとして商品化することに。魚の素材本来の味がしっかりして食いつきが違うとペットにも飼い主にも大好評となりました。
田中さんが次に挑むのは、海藻をよく食べ、磯焼けの原因にもなるやっかいな魚「アイゴ」を活用した商品開発。ヒレに毒があり、漁師からは疎まれる存在です。
果たして新たな商品は完成したのでしょうか?
11月18日 土曜 午前11時から『LIFE~夢のカタチ~』でご紹介します。
(ABCテレビ/関西地域で放送、TVer見逃し配信あり)
GATE(三重県熊野市)
三重県熊野市の二木島湾で定置網漁を行っている水産加工会社。
獲れた魚のうち、市場に出回らない未利用魚をペットフードに加工し、SDGsにも貢献。