唯一無二のシャバシャバカレー 大阪ミナミのアメリカ村で「女神」が作る名物「セイロンカツ」 味つけ方法はまさかの「??やで」
街のおいしい店に潜入し、店主の人柄からにじみ出る人気の秘密を発見するシリーズ「実録!人情食堂」。今回は、唯一無二のシャバシャバカレーが名物の店を取材しました。
大阪ミナミのアメリカ村。古着屋が建ち並ぶ通りを抜けた雑居ビルの1階にある「ニューライト」は、1959年創業の大衆洋食店。お客さんの7割が頼むという看板メニューの「セイロンカツ」は、シャバシャバ系のピリ辛カレーに国産のロースカツと玉子がのった、どこか懐かしいスタイルのカレーです。
店の周りにはライブハウスや劇場が多く、ライブ終わりのミュージシャンや芸能人が頻繁に訪れる、知る人ぞ知る名店。壁を埋め尽くすサイン色紙がその人気ぶりを物語ります。
長年通う常連さんが「ソウルフード」と呼ぶセイロンカツ。そのおいしさの秘密を探るべく、開店前の厨房にお邪魔してみました。
店主の石村滋さん(77)と妻の多津美さん(74)、息子の隆典さん(48)、娘のあさみさん(46)の家族4人で切り盛りする「ニューライト」。午前7時、一番に店に現れるのは多津美さん。カレーの味のベースとなるダシ作りと、セイロンカツの上にたっぷりかけるデミグラスソースの準備をします。
デミグラスソースの味つけは「適当やで」と多津美さん。お客さんがおいしかったと言えば、「あ〜そう、よかった」とホッとするんだそう。味の「答え合わせ」はお客さんの反応で――このおおらかさは「ニューライト」の“お母さん”の魅力のひとつでもあります。
仕込みが始まって2時間、ベースの仕込みが終わるころに、滋さんが登場。カレーにのせるカツの準備のため、国産の豚ロース肉をカットしていきます。薄く切るのがポイントで、カレーの味がよく馴染む絶妙なバランスだそう。
「ニューライト」の大看板となっている個性派カレー、セイロンカツは、滋さんの叔父である先代から受け継いだオリジナルメニュー。54年前、店を継いだときの滋さんはまだ23歳。駆け出し時代を支えてくれたのが、店の従業員として働いていた多津美さんでした。
それから2人は結婚。息子の隆典さんは、子どものころから「たまに店を手伝ってた」そうで、“英才教育”もバッチリ!? 今は滋さんと並んで厨房に立ち、カレー以外にもおよそ50種類あるというメニューの調理を担っています。
午前11時、いよいよ開店。オープンと同時にお客さんが次々と入り、「セイロンカツ」のオーダーが飛び交います。作り置きはせず、注文が入ってから作るのが滋さんのこだわり。最高の状態で味わってもらうには「出来たてが一番」と手間は惜しみません。
【動画】お店の存在をネットで知り、わざわざ遠方からやってくる人も多数。最近では海外からのお客さんも増えているとか。
午後、お店をのぞくと、多津美さんと仲よく話し込む若いお客さんが。彼はレゲエ歌手のSHADYさん。実は多津美さん、差し入れを届けるためにライブに行くうちにすっかりハマったそうで、レゲエの大ファンに。そんなファンキーな多津美さんを、SHADYさんら若いアーティストたちは「アメ村の女神」と慕っています。
一方、厨房の滋さんは休むことなく黙々と調理を続けています。休憩もなく、朝からずっと立ちっぱなしで働く理由を聞くと、一日の終わりに飲む「ビール」のため、と滋さん。汗をかいて働いたからこそおいしいビールが「褒美やで」と笑って答えてくれました。
夫婦で店を継いでからの50年を「しんどいけど楽しかった。今も楽しいで」と振り返る多津美さんは、「このお店いつまでやるん?って聞かれたら、このビルがなくなるまでって私は言う」とも。「ニューライト」は、おいしい料理と温かい接客でこれからもアメ村を明るく照らします。
「実録!人情食堂」は、11月10日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。













