大人気野球ゲーム『パワプロ』の世界をドラマに!『パワプロ』開発者が当時の制作秘話を語る!!

大人気野球ゲーム『パワフルプロ野球』シリーズの世界が初のドラマ化!『パワプロドラマ2025 ─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─』と題し、大の『パワプロ』ファンであるニッポンの社長・辻皓平が初脚本を手掛け、鈴木福が主演を務めることが発表され大きな話題を呼んだ。昨年、誕生30周年を迎えた『パワプロ』の細かな設定まで反映されている。

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そこで、ABCマガジンでは本作をより楽しむため、『パワプロ』の開発者のひとりであるコナミデジタルエンタテインメントのゲームクリエイター・豊原浩司さんにインタビュー! 当時の制作秘話から、ドラマ化の心境、『パワプロ』シリーズが長年にわたって愛され続けているその魅力に迫る。

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――まずは初代『パワプロ』が誕生した当時のお話からお聞かせください。ゲームの開発にあたり、豊原さんはどういった制作を担当されていたのですか?

当時の開発チームは少人数で、プログラマーが3人、デザイナーが2人の5人体制で、その他にサウンドのメンバーが数人関わっていました。私はその中でプログラマーを担当しておりまして、打った後の守備、走塁、打球(ピッチャーの投球の組み立て方や戦略)を任されておりました。

――当時は、今ほどスポーツゲームというのは多くはなかったですよね?

そうですね。世の中的には多くのスポーツゲームがありましたが、KONAMIの中ではほとんどありませんでした。

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――その中で、『パワプロ』という新しい野球ゲームをつくることになったキッカケというのは?

はっきりとした理由は今でもわからないのですが、おそらく当時の上司がすごく野球が好きだったからだと思っています。1993年の年始に「野球ゲームを作ってほしい」と言われたのですが、当時はサッカーのJリーグが5月に始まろうとしていた。だから僕らとしては「サッカーじゃないの?」と思ったのを覚えています(笑)。のちに聞いたところ、私たちスタッフに野球ゲームの制作経験者が私を含めて2人いたので、「野球ゲームにした」と言っていました。

――キッカケはシンプルなんですね。豊原さんも野球好きだったのですか?

それが全然で、当時はどちらかというと野球には興味がなく……。最近になって、なんで野球に興味がなかったのか思い返してみたのですが、子どもの頃にあまりテレビを見せてもらえなかったからじゃないかなと気づきまして。父親は大の阪神ファンなんですが、父親の部屋にしかテレビがなくて、子どもは入れなかったので、見ることができず野球との接点がなかったんです。

――ということは、ゲームを作るにあたって野球を知ることに?

本物の野球をすることはなかったのですが、野球ゲームではよく遊んでいました。というのも、当時は格闘ゲームがまだなかったので、友達と対戦するゲームといえば野球やサッカーといったスポーツゲームだったんですよ。なので対戦できるアクションゲームとしてよく遊んでいて、ゲームを通して選手の名前を知ったりしていましたね。

――野球との接点は、初めからゲームだったのですね!

『パワプロ』の前に野球ゲームを2つ作ったのですが、よりプロ野球を意識した『生中継68』というゲームを作ることになった際に野球を研究し、その頃には野球への興味も深まっていましたね。

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――『パワプロ』は、これまでの野球ゲームにはない画期的な試みがヒットの要因にもなっていると思います。

ソフトのタイトルにある通り音声による“実況”がそうですね。僕はテレビで野球を観る時に、音声を消して、ラジオ中継を聞きながら観るのが好きだったんです。テレビは映像があるので割と淡々と状況を伝えてくれるのですが、ラジオの音声は臨場感があってすごく盛り上げてくれるんですよ。単なる外野フライでも「大きい!大きい!大きいぞ!」と気持ちを盛り上げてくれて、歓声もよく聞こえるんです。そういうこともあって、ラジオの実況をとり入れると面白いのではないかと提案しました。

――言葉で映像を補完するラジオならではの、想像力を掻き立てる実況がゲームと上手くハマったと。

ゲームも音の影響はすごく大きいので重視しました。初代の実況を担当していただいた、元朝日放送・安部憲幸アナウンサーの収録現場にも立ち会わせてもらったのですが、本当に声量がすごくて圧倒されました。単語ごとに区切った収録リストを読んでいただいたのですが、アドリブでもたくさん喋ってくださって。「どこで使おうか?」とサウンドの担当者も困っていました(笑)。ノリノリで実況してくださり、ラジオの熱狂的な音声が再現できたのでお願いして本当によかったです。

――他にも今までの野球ゲームにはなかったポイントは?

投打で高さ・低さの要素を取り入れたことが、最も特徴的なところだと思います。これにより上下左右、自由に投げ分けることができるので、実際のプロ野球のように投球の組み立てができるようになりました。そのほかでいうと、野球を色々調べるにあたって個人的に面白いなと思った、起用方法なども反映したところでしょうか。ピッチャーも先発が投げて、中継がリリーフして、最後に抑えが投げる……といった起用方法までは、あまりほかの野球ゲームでは見たことがなかったので、なんとかゲームで再現したいなと工夫しました。ほかにも野球のルールブックを熟読して、できる限り再現しようと思って作ってましたね。

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――今ではお馴染みのキャラクターとなったパワプロくんですが、選手をデフォルメしたデザインもかなり特徴的だなと思います。デフォルメされたデザインなのに、特徴をしっかりととらえて表現できているところもすごいなと。

経緯について詳しくは知らないのですが、デザイナーが「CG風のキャラにしたい」「おもちゃっぽくしたい」とは言っていました。できあがってきたパワプロくんを見たときはびっくりして、僕はリアルな方がいいのではないかと反対しました(笑)。この頭身で、本当に野球ができるのか?って。だけど作っていくうちに顔が大きいことで、向いてる方向が分かりやすかったり、野手として動かした時に体が大きいので打球を捕りやすいという操作性のメリットがあることもわかってきて。あと、生命感を出したかったのでまばたきをさせてほしいというお願いをデザイナーにして、作っていきましたね。

――ほかにも、選手の特徴を数値化していたり、「打たれ強さ」や「短気」「チャンスメーカー」など特性を特殊能力として反映されていたり、プロ野球ファンの中でもコアなデータが再現されているところも、ならではですよね。

プロ野球をしっかり再現したかったので、調べて分かった特徴はなるべく表現しました。選手を表現するには、特性を持たせるしかなかったというところもあります。単にパワーなどの数値だけではやっぱり表現できないところもありますから。ただ初代『パワプロ』から3作目までは、私ともう1人で選手のデータを作っていたので大変で……。どうしても漏れが出てくるのではないかと、4作目には1球団につき1人担当者を立てることになりました。まだインターネットもなかった時代なので、情報を得るのがなかなか難しくて、新聞や雑誌、あとはテレビで観られる試合は観たり。パ・リーグは地上波で放送されていなかったので、実際に球場までチームみんなで足を運んだりしていましたね。そのころは、会社が神戸にあって、グリーンスタジアム(現在のほっともっとフィールド神戸)が近かったのでよく行きましたよ。

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――今の『パワプロ』シリーズの礎となる、これだけの画期的なシステムが、93年に「野球ゲームを作ろう!」と開発が始まり翌年にリリースされるスピード感もすさまじいなと……。

当時の開発期間としては、割と長い方なんです。そのころは年に何本もソフトを作る時代だったので、ほぼ1年かけて作った作品はあまりなかったと思います。とはいえ、確かにその時に作った初代からあんまり変わってないと言えば変わってないですね(笑)。

――それが30年以上も続く大ヒットシリーズに。

続編が作られるとも思っていなかったので、30年も続くなんて想像もしていませんでした。2作目を作るとなった時は、スタッフを大幅に減らして2人で作る話もあったぐらいですから(笑)。もし本当にそうなってたら、データだけ更新していくだけで進化することもなく、3作目に導入した『サクセス』モード(シナリオ形式で選手を育成するモード)も生まれてなかったと思いますし、これだけシリーズが続くこともなかったと思います。

――いままでの野球ゲームになかった画期的な要素がファンの心をつかんできたのだと思います。豊原さんは、『パワプロ』が30年以上も愛され続けている秘訣は何だと思いますか?

遊び方がたくさんあるところだと思います。割とシビアなアクションゲームとして、友達や家族と野球で対戦できることはもちろんのこと、『ペナント』モード(※1)や『サクセス』モードのようにひとりでじっくり遊べたりできることが、時代が変わっても楽しんでいただけているのではないでしょうか。

――しっかり時間をかけて遊べたり、ホームラン競争のようにミニゲーム的にサクッと遊べたり。シーンに合わせて楽しめるのは魅力ですね! どちらかというと男性ファンが多かったイメージですが、女性のプロ野球ファンも年々増えているので、さらに利用シーンや遊びの幅も広がるかもしれませんね。

最近だと高校野球の監督となって選手を育成し、甲子園での優勝と選手のプロ入りを目指す『栄冠ナイン』モードが人気で、投げて、打ってというアクション要素が苦手な女性でも楽しく遊んでいただけるんじゃないかなと思ってます。

――最後に、これからの『パワプロ』の展望についてお聞かせください!

ずっと言い続けているのですが、基本となる野球の試合の部分をしっかりと作りつつ、時代や球界の変化に合わせて『パワプロ』もアップデートして、変化を続けていきたいと思います。

(※1)プレイヤーが好きなプロ野球チーム、あるいはオリジナルチームを選び、実際のプロ野球と同様にシーズンを戦い抜くモード。選手育成や補強を行いながら、各シーズンの試合を消化し、リーグ優勝、そして日本一を目指す。

取材・文=大西健斗

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鈴木福主演、ニッポンの社長辻皓平が脚本を担当するドラマパワプロドラマ2025 ─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─は、9月26日(金)深夜0時24分放送。
放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信

あらすじ 元球児で新社会人の主人公・西野純平(鈴木福)が会社へ向かう道中で奇妙なゲーム機を発見。平凡だった日常が突如『パワプロ』の世界とリンクし、ちょっと不思議な社会人生活が始まるというオリジナルストーリー。

番組情報

パワプロドラマ 2025 ー平凡な新社会人の俺がサクセスした話ー

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