現役弁護士でもあるお笑い芸人のこたけ正義感さんがパーソナリティーを務める「こたけ正義感の聞けば無罪」が、今年の４月よりABCラジオの地上波に進出！単独インタビューの前編では、「こたけ正義感のGERA NEXT」（お笑いラジオアプリGERA）→「ギルティーラジオ」（YouTubeの自主ラジオ）→「こたけ正義感の聞けば無罪」（ABCラジオ Podcast）と、ラジオ配信を続けてきたこたけさんのラジオへの向き合い方についてたっぷりお聞きしました。

ーー「こたけ正義感の聞けば無罪」の地上波進出おめでとうございます。決まったときの心境はいかがでしたか。

まったく予想していなかったので、びっくりしました。Podcastが去年の7月に始まったので、1〜2年はやらないと地上波のチャンスは来ないかなと思っていたので。

ーー日曜日の夜10時からの1時間という枠については、どう思いましたか？

いい時間帯なので、「もうちょっと試験しなくて大丈夫？30分枠じゃなくていいの？」と思いました（笑）。信頼を置かれ過ぎている怖さは、ちょっとあるかもしれないです。

ーー地上波になってから、気持ち的な変化はありますか？

あります。より引き締まったというか。ネットラジオも一応ラジオですけど、「あれ？そもそもラジオってなんやっけ？」となるじゃないですか。ネットで配信するラジオって、YouTubeをテレビの画面に映してテレビと言い張ってるような感じがあるというか（笑）。なので、地上波になって「本当にラジオができるようになったな」と感じています。

ーー番組としては、何か変化はありましたか？

リスナーからのメールが増えました。明らかに反響が大きくなった気がします。僕的には、生活にラジオが溶け込みました。今までは2週間に1回の収録（2本録り）だったので、オンエアまでちょっと時間が経ち過ぎてしまうところがあって、エピソードを話しづらかったんです。でも、毎週収録になったので 常に「ラジオでこれ話そう」と考えながら生活できるようになって、すごくやりやすいです。

ーーお子さんのためにオムライスを作りながら（笑）。（※地上波第3回オープニングトーク「ファミレスのオムライス売り切れ事件」参照）

「これもう絶対ラジオで言わな、解消できへんぞ！」と思いながら作ってました。本当にムカついたんで、あれ（笑）。

ーー地上波番組になってから、YouTubeでの動画配信も始まりましたね。地上波第1回のまっさらな白シャツ姿に、「ここから始まるぞ！」という意気込みが感じられました。

まっっったく考えてなかったです（笑）。たまたま最近買った服を着ていっただけですけど、もしかしたら深層心理であったのかもしれないです。たしかにね、被告人にも大事な裁判の日は「白シャツを着てきてください」と言ってますし。

ーー被告人（笑）。収録の日はどんな気分ですか？

いつも楽しみです。遊園地のような外行きの楽しみというより、一番家が近い友達ん家に行くくらいの楽しみです。「きっと面白いことが起こるやろな」っていう。居心地もいいし、自分のホームという感じもあります。

ーーリスナーが参加するコーナーがいくつかありますが、「POISON」はリスナーのメールがこたけさんの毒を引き出す呼び水になっているような気が…。

そうです。そもそも僕が日頃から「むむむ？」と思うものをテーマに選んでいるので。 そのテーマに対する僕の気持ちをリスナーが代わりに言ってくれるという面白さがあるので、必然的に僕の毒も出てきています。

ーーリスナーに言わせた上で、なだめるふりをしたり。

一番ズルいポジションですよね（笑）。

ーー地上波になってからの新コーナー「弁護士ないない」は大喜利ですね。つまりは「こんな弁護士は嫌だ」。

そうなんですよ。ラジオを始めたての頃は、リスナーも本格的なハガキ職人ではなかったので、大喜利過ぎるコーナーは控えてたんです。でも、地上波になったのを機に「大喜利やろか」と。結果、メールが殺到しました。みんな結局大喜利したかったんやなって（笑）。嬉しいです。本当に面白いですし、お笑いっぽいことをやっとできるようになってきたなって。もっといろんな人に送ってもらいたいですね。

ーー相談コーナーの「相談の相談」では、リスナーの小学生の息子さんと電話で話す回が面白かったです。これからも生相談をする予定はありますか。

タイミングもあるので難しい部分があるかもしれないですけど、できればやりたいです。芸人さんはプロなので安心して喋れるじゃないですか。でも、一般の方は何を言うかわからないドキドキがあって、そこが楽しいんです。特に小学生はこっちが予想したことを絶対言ってくれないので。

ーーオープニングトークでは、こたけさんがライブですべった話、失敗した話、頭に来た話など、わりと黒い感情を吐き出して笑いに変えていることが多い気がします。

なんでだろうな～。たしかにラジオで話したいジャンルは、そういうことなのかもしれないですね。僕も他人がそういうことを言ってるのはすごい好きですし、ラジオで話すことでプラマイゼロにできている気がします。

ーーだからといって、嫌なことが起きてほしいわけではないですよね（笑）。

もちろん思ってないです（笑）。でも、芸人になってから、嫌なことに対してより敏感になりました。今まではスルーして忘れていたことも、怒りセンサーや不快センサーが反応しやすくなったのかもしれないです。本当に不快に感じているというよりも、これをどう構成して面白い話にしようかなって。

ーーこたけさんが語る奥様のお話も楽しくお聞きしています。とてもユニークな方ですよね。

妻はなかなか変な人なんで、今後もエピソードがあればラジオでちょいちょい話していきます。スーパーエリートではあるんですけど、人として抜けてるところもいっぱいあって。ラップを普通にかけられないですし、宛名シールを貼るとガタガタになっちゃいます。洋服もしょっちゅう裏返しに着てますし、洋服のタグもよく出てます。メイクも苦手で、今朝はほっぺの一部分だけ塗り忘れてました。シンプルに不器用で、「作業」ができないんですよね。豆腐を手のひらの上で切って、鍋に静かに入れられなくて、味噌汁がバッシャーンと飛び散ってました。

ーー子育て方法も変わってますか？

かなり勉強して、マニュアル化しようとしています。それでうまくいかなかったら落ち込んでますね。「ムズ過ぎる」って（笑）。

ーーこれからも番組でご家族のエピソードを聞くのを楽しみにしています（笑）。ところで、こたけさんにとってのラジオスターはいらっしゃいますか。

パンサーの向井さんですかね。学生時代はラジオをそんなに聞いてなくて、芸人になってからハライチさんや麒麟の川島さんのラジオを聞き始めたんです。ある時期から向井さんがラジオスターだと言われ出して、僕も何個か聞いてたんですけど、NHKラジオの「又吉・児玉・向井のあとは寝るだけの時間」にはハマり過ぎました。ピースの又吉さんとサルゴリラの児玉さんと3人でされていて、3人の空気感がいいんです。たまに向井さんがお休みの回があって、児玉さんと又吉さんだけになると、本当にうまくいかなくて（笑）。そのうまくいかなさ加減も含めて面白いんですけど、そこで初めて「向井さんがいるときといないときでこんな違うんや」という驚きがあって。3人揃ったときに向井さんに注目して聞いてみると、「確かにこの人いたらスムーズに進んでいくな～」と感動しました。

ーー向井さんのラジオパーソナリティーとしてのすごさとは？

一見目立たない役回りなんですけど、人が気付かないことを全部気付いてて、かゆいところに手が届くというか、細かい配慮を常にして、かつお笑い的にも面白い方向に持っていってくれる。とにかく能力が高いですね。

ーーこたけさんはご自身のラジオ能力を分析できますか？

いや、できないですね。全然わかってないです。言い過ぎてることもたくさんありますし。終わってから注意されることもあります…。

ーー聞いているこちらにはわからないですよ。

カットされてるんで。でも、最近はある程度はコントロールできるようになってきました。昔は思いついたまま口に出していたので。

ーーとなるとラジオの生放送は危ない…？

さすがに僕もブレーキはあるので（笑）、生放送で言い過ぎてしまうことは基本的にないはずです。生放送も、やれるならやりたいですね。

ーーでは、番組内で起きた事件やハプニングがあれば教えてください。最近聞き出したリスナーが、アーカイブを聞くときのガイドになればいいなと。

「賞レースを当て過ぎ問題」ですね。キングオブコントの決勝前の収録で、ラブレターズさんの優勝を言い当ててしまって、ちょっと怖かったです。

ーーそれだけではなく、ABCお笑いグランプリの優勝も当て、M-1グランプリ連覇直前の令和ロマンさんも出演されてますよね。

そうですね。賞レースとは何かと縁がある番組かもしれないですね。でも、今年のR-1グランプリで大ハズシしたので、いい区切りになりました。しばらく予想はやめるつもりです。

ーー地上波になってからは、クソリプの件も…。

そうなんですよ。地上波になって「こたけ正義感の聞けば無罪」の告知がABCラジオさんのCM枠で流れるようになったんです。18秒ぐらいの尺で、「いろんなゲストを招いてお話を伺ったり、クソリプを募集したりしています。ぜひ聞いてください」みたいな告知をしたら、それを聞いた人の一部が「こたけ正義感というヤツは、リスナーからのメールをクソリプと呼んで馬鹿にしている」「リスナーのことを馬鹿にしているヤツのラジオを地上波に上げるな」と怒っていました。たしかにCMだけを聞いていたら、誤解するかもなと思いました。

ーーその後、どう対処したんですか？

何もしてないです。自然となくなったので。番組を聞いて「誤解やった」と恥ずかしくなった可能性もあります（笑）。

※話題の方々が登場するゲスト回のお話は後編で！

取材・文／須永貴子
編集／瓶底めがね