毎日同じ山に登り続けて60年 登山回数2万回を超える86歳女性や学校終わりの小学生など 神戸で100年以上続く「毎日登山」

神戸で100年以上続く文化「毎日登山」。ある「山の茶屋」に密着してみると、そこにはいろんな世代がごちゃまぜになった登山客たちの温かな人間ドラマがありました。

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六甲山系のひとつ、神戸市灘区にある「一王山」。頂に950年以上の歴史を持つ臨済宗十善寺があるこの山には、早朝から多くの人が登ってきます。これは一王山に「毎日登山」をしている人たち。日課のように毎日登っているのです。

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登るたびに記帳するため、それぞれの通算登山数がわかるのですが、すでに数千回を記録している人がいっぱい。37年前にダイエット目的で始めたという79歳の女性は、気づけばもう1万2000回を超えているとか。しかし上には上がいて、トップの人は2万回超! なんと50年以上も登り続けているのです。

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そんな毎日登山の始まりは明治時代。当時、神戸に住んでいた外国人が毎朝山に登り、優雅に朝食をとる習慣があったことから、これをまねた粋な神戸市民がこぞって毎日登山をするようになったそう。

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ピーク時に比べるとかなり人数は減りましたが、毎日登山の文化は今も受け継がれ、さまざまなコミュニティを生み出す場所にもなっています。ここ一王山でも、毎朝集まって詩吟をする人たちや、輪投げを楽しむ仲間たちも。そんな登山者たちの憩いの場が、十善寺の境内にある山の茶屋「カミカ茶寮」です。

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茶屋を切り盛りするのは豊永祐子さん。常連さんから「マメちゃん」と呼ばれる祐子さんは5年前にお店を引き継ぎました。きっかけは、前のオーナーの時代からここで働いていた義理の母・博子さん(78)。闘病の末に重い病を克服した博子さんが“戻る場所”を作るため、閉店が決まっていた茶屋を2人で再開させることにしたのです。

朝の喧噪が落ち着くと、のんびりそれぞれのペースで登る人たちが茶屋を訪れます。90歳になる女性は、先日、毎日登山1万回を達成。その健脚ぶりは怪物級!?

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【動画】一王山でおそらく最高齢のタニミズさんは御年94歳。70代で山登りを始め、なんと六甲系の全山を縦走したそう。その元気に驚くばかりです。

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午後になると茶屋の風景は一変。学校を終えた小学生たちが、マメちゃんと遊ぶために続々と集まってきます。子どもからお年寄りまで、なぜこんなに大勢が気軽に登ってくるのでしょう? 実は一王山は標高108.4m。神戸屈指の低山で住宅街からも近いため、ご近所さんが集まる格好の場所となっているのです。

マメちゃんが小学生たちとけん玉で遊んでいると、近所の大人も続々と参加。かわいいうさぎを連れてきた女性は、この「いつ来ても誰かがいる」コミュニティの場がすっかり気に入り、2年前にわざわさ近くに引っ越してきたとか。そんな山の茶屋の文化は毎日登山とともに発展してきたものです。

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午後6時、いつもこの時間に現れるのは、毎日登山歴5年のケンちゃんです。82歳のケンちゃんはひとり暮らし。お茶を飲みながらおしゃべりを楽しめて、姿が見えなければ心配してくれる…。ケンちゃんにとってここは「なくてはならない」場所なのです。

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翌朝、再び一王山を訪ねた取材班は、ついに“2万回超”のトップ記録の方に遭遇しました。86歳の本田さんの毎日登山歴はなんと60年。回数は20448回を数えます。毎日登らないと「忘れもんした気になる」「(来なければ)死んだんじゃないかって言われちゃう(笑)」という本田さん。まだまだ記録を伸ばしてくれそうです。

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さまざまな世代が混ざり合う、一王山の毎日登山。そこは「約束しなくても、ここに来たら誰かいて、会えば子ども同士も大人も会話ができる」場所、と話すマメちゃん。「みんなに守られながら生かしてもらってる」。そんな実感を強くしながら、かけがえのない「カミカ茶寮」を今日も守り続けています。

神戸の「山の茶屋」の密着取材は、5月5日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

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