桐谷健太　「自分の見られ方に対する意識がもっと強かった・・・」　今、一番大事にしていることとは？

2025.05.06

『いつか、ヒーロー』（ABCテレビ・テレビ朝日系列　毎週日曜夜10時15分）で主人公・赤山誠司を熱演している桐谷健太さんへのインタビュー後編です。桐谷健太流思考法や、SNSをやらない理由、実は謎に包まれたプライベートなどについて聞きました。

――『いつか、ヒーロー』では養護施設出身の5人が30歳前後になり、社会の厳しさの前でもがいています。桐谷さんが30歳の頃は、『ROOKIES』に出演し急激に注目が集まった時期だと思います。桐谷さんの視点で、5人のような場所でもがいている人たちに言葉をかけるなら？

僕もまだ45年しか生きてないですけど、「そりゃいろいろあるよ。俺もあるし」でしょうか。悩んだりへこんだりする瞬間もあるけど、人間は「行きたいな」と思っている方向に進んで行くようにできている気がするんです。だからなるべく楽しいことを考えたり、想像したり、ワクワクしたりしてほしいなと思います。でもそれができないときは、それはそれでいいと思うし。泣きたいときは泣けばいい。でも、悩み事とか嫌なことって、見方を変えると「自分はもっとこうなりたい」と思わせてくれる、道しるべにもなる。だからそんなにへこむ必要もないし、好きなことや楽しいことをいっぱいやってほしいなと思います。やらなきゃいけないことはもちろんあると思うんですけど、どう工夫したらちょっとでも楽しくやれるかを考えるとすごく自分の力になるし。いろいろあるけど全部いい方向に行くと信じて、笑いながらやってほしいですね。

――自分の思考をポジティブな方向に持って行くということでしょうか。

すごくネガティブなときに、無理にポジティブに考えようとしても結構難しいじゃないですか。逆にしんどくなるし。というよりは、自分の心の声を聞くといいのかもしれません。将来やりたいことがない人も、今自分がやりたいことはあると思うんです。コーヒーを飲みたいならそれをすればいいし、５分だけ目をつぶりたいならそれをすればいい。今できるやりたいことを少しずつでもやっていけば、「ポジティブに考えよう」とかではなくて、自分がやりたいことに気づくセンサーをどんどん養っていけると思うんです。俺も一時期、センサーが悪い方向にばかり働いてました。でもそれがあったから「こっちちゃうわ」となって、自分が行きたい方向に行けたところもあります。

――桐谷さんはSNSを一切やっていません。プライベートをあまり見せないように、意識的に線を引いているのでしょうか。

線を引いているつもりはなかったですけど、「芝居で出せばいい」みたいなところはあるかもしれないですね。友達や近しい人間には「今日こんなことあって！」みたいな話はもちろんします。

――そこであえての質問です。最近プライベートで面白かったことや嬉しかったことはありますか？

最近はずっと撮影をしているし……（しばらく考えて）結構、内側にどんどん興味を持ってきているんです。自分の感情の変化とか心の変化とか。だから何があったかというよりも、同じことでも感じ方が変わっていっていることに面白さを感じてますかね。前だったら当たり前に過ごしていたことを「あー気持ちいいな」と思えたりとか。「しんどいな」と思っていたことを、意外と平気でやれていることとか。どんどんいい感じに変わっていってる気がします。

――しんどかったけれど、気持ちよくなってきたこととは？

体力的なこととかもそうですよね。トレーニングもしますけど、どんどん体と対話できている感じがあります。それは心との対話でもあるし。

――心との対話というと、マインドフルネスや瞑想もよさそうです。

そういう「何も考えない時間」はすごくいいと思います。俺も散歩とか好きですし。だからどんどん“透明な感覚”になってきている感じがします。

――逆に、昔は楽しかったのに興味がなくなったこともありますか？

もしかしたらみんなその繰り返しなんじゃないですか。子供が古いおもちゃに飽きて、新しいおもちゃに行くように。その気持ちに正直でいいと思いますけどね。どんどん変わってるからこそ、芝居に対する感覚もきっと変わってきているのだと思います。

――芝居への向き合い方の純度が高まっている？

そうですね。今しかやれないことをちゃんとやれていると思いますし、広がっていってる感覚もすごくあります。

――役柄やトーク番組での受け答えから、桐谷さんはフレンドリーで豪快な人というパブリックイメージがあります。でも実は非常にミクロかつ繊細な感性で世界と関わっている人なんだなと、このインタビューで感じました。

ハハハハ（笑）。前は「こう思われてるんだろうな」という意識もありましたけど、今は自分が気持ちいいか、自分が楽しいかが大事になりました。言葉だけで聞くとすごく自己中心的な人みたいですけど、「自己満足めっちゃ大事！その上で誰かも喜んでくれたら嬉しいな！」という感覚です。前は確かに、自分の見られ方に対する意識がもっと強かったかもしれないです。「褒めてほしい」とか。今も褒められたら嬉しいですけど（笑）、でもそれもどんどん変化して、今は自分がもうひとつ無垢な状態で芝居ができてきている気がします。