俳優・北村有起哉が悪役・敵役に魅力を感じる理由とは？　松本幸四郎に「ズバアッ！と斬られて嬉しかった」！？

2025.04.19

桐谷健太主演の『いつか、ヒーロー』（ABCテレビ・テレビ朝日系列　毎週日曜夜10時15分）で、巨大企業グループの会長・若王子公威を演じる北村有起哉さんへのインタビュー前編です。若王子はヴィラン（悪役、敵役）なのか？　若王子役について、敵役を演じることへの思いについて、聞きました。

――北村さんが演じる若王子公威はとても人当たりの良い大企業の会長ですが、裏の顔がありそうです。

いろいろ企んでいそうな人物ですが、誰が見ても「企んでいそうだな」と思わせる必要はないと思っています。いつもそうですが、どこかで見たことがあるような芝居はなるべく避けたいですね。計算や逆算をせず、そのシーンで何が起きているのかを視聴者に伝えていけば、だんだん成長し、その先の話へと自然に繋がっていくと思っています。

――２話で、記者・十和子（板谷由夏）と車内にいる場面で、突然「ゆあ〜んゆよ〜んゆやゆよん」と言い出す若王子が強烈でした。台本を読んでどう思われましたか？

あれは中原中也の「サーカス」の「山羊の歌」ですから、「ああ、なるほどね」というところでした。若王子は子供の頃にサーカスを見て、いろいろなことを感じ、今に至るという背景があるので。

――なるほど…！　若王子は十和子がコントロール可能な人物なのか、試しているのかなと思いました。

あ、それはあると思いますよ。あと、若王子は常に自分のことを俯瞰しているので、抜かりのないように振る舞っている。家から一歩出たらバチッとスイッチを入れて、完璧に自己プロデュースをしている人ですよね。

――人たらしでもありそうです。だから、会社をここまで大きくできた。

そして、ハングリー精神や生命力もある。そういう部分でこの業界（芸能界）にもいそうな人ですよね。腹に一物持っているような、なんだかやたらギラギラしている人（笑）。若王子は一瞬の殺気のようなものも持っていそうですが、ちゃーんと上手に蓋をして気づかれないようにしています。彼には目標があり、それを実現するための努力を惜しまないし、全くぶれない。だから自分が善なのか悪なのか、そんなことには興味がなく、そんなことは人が決めればいいと思っている。そういう筋は通っている人なので、ちょっと得体の知れない感じにはなりますけども。林宏司さんの台本を読んで面白いなと感じた部分を、僕が具現化できたらなと思っています。

――制作発表会見で、でんでんさんが北村さんを「日本一の悪役」とおっしゃっていました。ということは若王子をヴィラン（悪役）と見てよろしいでしょうか。

そうなりますよね（笑）。「案外小物だったな」とか、「うわ！　本当にひどいヤツだな！」とか、どのように見ていただいてもかまいません。

――北村さんには、悪役・敵役を魅力的に演じてくれる役者さんという絶対的な信頼感があります。北村さんは悪役を演じるのは楽しいですか？

悪役は楽しいです。悪役専門（俳優）ではないですが（笑）。

――朝ドラでは父親役を演じられていましたね。

朝ドラは久しぶりというか、初めての普通の役だったかもしれません。「あ、できるできる。俺にもできるんだ（笑）」と思いながら1年かけて演じた後の一発目が若王子なので、「これだこれ、こういうのばっかやってたな」という、戻ってきたような感覚があります。良いドラマ作品は必ず敵役がカギを握っているものが多いので、興味を惹かれます。僕が好きな海外の俳優さんも、気がついたら「007」シリーズで悪役をやっていることが多いので、やっぱりそうだよな、と。

――今まで演じてきた悪役・敵役で、最も反響の大きかったものを教えてください。

いまだに言われるのは「アンナチュラル」じゃないでしょうか。僕は全然そんなつもりでやっていたわけじゃないんです。「こういう下衆な記者いるだろうな」「でもこいつはこいつの欲望があるしな」と演じていたらものすごいうねりになり、ドラマ自体が非常に評判になったので、良かったなと思いました。最近ですと、映画『鬼平犯科帳血闘』の敵役でしょうか。最後、松本幸四郎さんにズバアッ！と斬られたシーンは本当に嬉しかったです。

――時代劇で主役をやりたいとずっとおっしゃっている。

生意気だとは思うのですが「もういいんだ、言っていこう」と。無理かどうかなんて誰もわからないのだから、こうやって言っていけば、言霊となっていくと思っています。