キャベツの価格は3.3倍に!材料費高騰に負けず奮闘する、粉もんひと筋50年の“人情お好み焼き屋さん”に密着!
奈良県天理市に「安くておいしい」と評判のお好み焼き屋さんがあります。77歳の男性が半世紀前に開いたお店。地域の人たちに愛される“人情お好み焼き屋さん”に密着しました。
近鉄天理駅から歩いて5分の場所にある「お好み焼き ひろっちゃん」は創業50年。店主は、粉もんひと筋50年の料理人・根塚博司さん(77)です。小麦粉は、ハンドマッサージ器の振動を利用した「手製の機械」で振るいにかけてふわふわに。そこにダシとすりおろした長いもを加えた生地が、創業当時から変わらない自慢の味のベースです。
お好み焼きに、焼きそばにと活躍する冬キャベツは愛知産。以前は6〜8玉入りの1箱が1200〜1500円で買えましたが、キャベツの価格高騰で、今では5000円ほどと平年のおよそ3.3倍に。それでも「ひろっちゃん」は値段を据え置き、人気のぶた玉や焼きそば、とんぺい焼きも570円でがんばっています。
熟練のコテさばきで、次々と焼いていく博司さんをサポートするのは、中学生のころから手伝っているという長女の幸子さん(47)。焼き上がったお好み焼きにソースを塗って仕上げたり、材料を準備したりと大忙しです。
そんな父娘が作るお好み焼きの味は「この辺でNo.1」と地元の人に大人気。黙々と焼き続ける博司さんの「あの姿がいい」と話すお客さんは、「(味に)人柄がでてんのと違う?」と「ひろっちゃん」の味を絶賛します。
【動画】“持ち帰り”の注文も多く、来店できないお客さんには“出前”も。妻の美佐子さん(69)が車で届けます。
5人兄弟の長男として生まれた博司さん。「生活するのがやっと」だったという実家の家計を助けるため、中学卒業後は夜間学校に通いながら鉄工所で働きました。そして必死にお金を貯め、27歳で「ひろっちゃん」を開業。30歳のころに店のお客さんだった美佐子さんと結婚し、3人の子どもに恵まれました。
長女の幸子さんは1年前に調理師免許を取得。博司さんの休憩中になどに代わって“焼き”を任されるまでに腕を上げました。子どもたちも成長し、「そんなに儲けたいとは(思わない)…」「そんな高い値段にせんでも」とメニューの価格を変えずにいた博司さんには、1年前から悩み続けてきたことが…。
材料費の高騰で、価格据え置きが限界にきていたのです。利益はなく、経営は赤字。不足分を自分の年金で補うまでに追い込まれた博司さんは、悩んだ末、今年の1月から値上げすることを決意。ぶた玉は570円から650円になるなど、30種類を超えるメニューが20〜200円の値上げとなりました。
苦渋の決断でしたが、お客さんの反応は「それでも安い」「逆にお金を置いて帰りたいくらい」と好意的。食品、ガソリンなど何もかもが値上がりする物価高騰の中、「(値上げは)仕方ない」と理解を示してくれました。
実は10か月前に体調を崩し、救急車で運ばれていた博司さん。幸子さんによれば、博司さんは高熱にうなされながらも、無意識に「お好み焼きを混ぜる」動きをしていたそう。そんな父を見守るしかなかった幸子さんは「あのとき、すごい怖かったですね」と涙を浮かべます。
病から復帰し、再び店に立って焼き始めた博司さん。これからも、長年通ってくれているお客さんを「大事に」と思いを語ります。そんな父の背中を追いかけながら「父の味に近づけるように焼いて、支えてあげられたら」と幸子さん。お店を愛してくれるお客さんのため、「ひろっちゃん」は今日も明日も元気に営業中です。
奈良で愛される“人情お好み焼き屋さん”は1月21日(火)放送の『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。