創業50年、大阪で愛され続けたラーメン居酒屋「市丸屋台」の“最後の日” 常連客は思わず涙…
大阪・福島界隈にあるラーメン居酒屋が去る12月21日、50年の歴史に幕を下ろしました。地域の人たちに愛されたお店の“最後の日”に密着しました。
JR福島駅から歩いて6分の「市丸屋台」。午前10時、夜の営業に向けて仕込みを始めるのは2代目店主の伊藤文雄さん(61)です。祖母が大衆食堂を営み、父も料理人。その影響もあり、「炒飯なんか小学校3年くらいから作ってました」という文雄さんも料理人になりました。
「市丸屋台」は昭和49年(1974年)に父が開業。当初はトラックの荷台で営業していましたが、26年前に今のお店を構え、中華料理を7年間修業した文雄さんがメニューを増やしていきました。
一緒に店を切り盛りする妻の希代子さん(61)は中学の同級生。再婚同士で10年前に結婚し、夫婦二人三脚でがんばってきましたが、ほぼ休みなく働き続けた文雄さんの体力は限界に。「このまま続けていったら体を壊すのは必至」と店を閉めることを決めたといいます。
午後6時、開店と同時にさっそくお客さんがやって来ます。まもなく店が閉まると知り、居ても立っても居られず駆けつけたという人も。
月に4〜5回来店するという常連の男性は、「市丸屋台」の大ファンという子どもたちのために焼きそばをお持ち帰り。2年前から通う女性は閉店を知って「めちゃくちゃ悲しかった」と。会社帰りに顔を出すと、「お疲れ!」と声をかけてくれる希代子さんにいつも癒されていたそうです。
【動画】看板メニューは名物の「市丸ラーメン」。アツアツのおでんや、「生ピーマン餃子」「ホルモン焼きそば」などの絶品の中華も人気です。
料理を作りながら翌日の仕込みもこなし、深夜2時にようやく閉店。朝10時からぶっ通しで16時間働き、翌朝10時にはまた仕込みが始まる。これが文雄さんの日常です。
店が休みの日曜日も、文雄さんは休まず働きます。圧力釜で炊いているのは、お店の名物メニュー「市丸ラーメン」のスープ。豚の背骨と豚皮でとる濃厚な豚骨スープは、自分で作らないと納得できないそう。
そんなこだわりのラーメンを最後に味わおうと、お店には閉店を知ったお客さんが連日殺到。「世界で一番好き」という「市丸ラーメン」の“食べ納め”に来た男性、週に1度の楽しみだったという女性…。文雄さんと希代子さんは、料理を一所懸命に作ることでお客さんに「ありがとう」の思いを伝えます。
そしていよいよ12月21日、創業50年の「市丸屋台」に最後の日がやって来ました。最初のお客さんは、高校生のときから店でバイトをしていた石田麻衣さん(42)とその家族。出産のとき、陣痛で動けなくなった石田さんを文雄さんが病院に運んだ長女の莉衣那さんはもう7歳に。「市丸のおっちゃんへ」と書いてくれたかわいいお手紙に、文雄さんの頬が緩みます。
まもなく店は満席に。最後のラーメンを口にし、「すんごい、おいしい」と感極まって思わず泣き出してしまう女性も。そして、集まった常連客たちからは、サプライズプレゼントが。思い思いのメッセージや、店主夫妻を描いたイラストがあふれる“寄せ書き”に文雄さんと希代子さんも感激しきりです。
お店を愛してくれた多くの人のために、昭和の時代から営業を続けてきた「市丸屋台」。「楽しかったです。自分がおいしいと信じるものを、おいしいって共感してもらえて」と振り返る文雄さんは、別れを惜しむお客さんたちに「ありがとう」と感謝を伝えていました。
「市丸屋台」の“最後の日”は12月23日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。