高校野球ラジオ完全中継復活!

6月13日。

朝日放送ラジオ株式会社(ABCラジオ)と株式会社radiko(ラジコ)は記者会見を開き、8月7日に開幕する第106回全国高等学校野球選手権大会を完全無料・完全中継でお届けする新しい音声配信コンテンツ「オーディオ高校野球」をリリースすることを発表した。コンセプトは、『全ての出場校の、全ての高校球児の、全てのプレーを余すことなくお届けする』。

ABCラジオの地上波で中継されてきた夏の高校野球ラジオ中継。かつては第1試合開始から第4試合終了まで完全中継されていて、筆者も小さい頃から高校野球中継を聴きながら試合を見ていた。しかし、2009年(第91回大会)以降は試合の経過に関わらず18時には放送を終了し、プロ野球のナイター中継へとシフトしていた。試合後半の勝負所の場面や、試合終了の瞬間などが第4試合は中継されることなく、高校野球ファンからは残念がる声もあがっていた。アナウンサーも時間をかけ、想いをこめて試合実況の準備をし、選手やチームの情報を頭に叩き込んできたのに、18時を過ぎるとそれを盛り込む場面がなくなっていた。それが、ラジコのプラットフォームを利用し、第4試合終了までの完全生中継が復活することになった。

朝日放送ラジオ(株)代表取締役社長 髙橋靖史

ABCラジオの髙橋靖史社長は、「70年以上に渡ってこれまで放送して参りました高校野球中継を、日本でも有数のプラットフォームで全国の皆さんにお届けできるというのは、我々にとっても非常にうれしく、期待できるものだと思っております。今回、皆さんに触れて頂きやすくなる形でお届けできることで、高校野球の魅力がより一層全国に伝わればと非常に期待をしている次第でございます」と話し、ラジコの青木貴博社長も「昨夏の高校野球はラジコでは約170万人の方に聴いていただいた。ABCラジオの番組編成では阪神戦もあるので入りきらないという課題に対して、ラジコであれば完全中継が可能であり、関西地区だけではなく全国の高校野球ファンに届けられるという利点があると思います。中でも、仕事をしながら、家事をしながら、ジョギングをしながら、散歩をしながら。『タイパのよいながら聴取』で、高校野球を楽しんでいただけることを確信しています」と語った。

(株)radiko 代表取締役社長 青木貴博

帰宅途中にラジオ中継を楽しむ方、球場で試合を見ながらラジオ中継を楽しむ方など、多くの高校野球ファンにとっては朗報と言えるだろう。しかもエリアフリーのため、全国どこにいても無料でラジオ中継を聴くことができる。例えば、お盆休みに関西以外のふるさとへ帰省しても、エリアフリーでラジオ中継を楽しめるようになる。

ABCの高校野球中継の特徴の一つは、現役の高校野球監督、元監督をゲストとしてお招きし、プレーの解説だけなく、豊富な経験に基づいた様々なお話を聞けることである。これまで中継が終了していた第4試合はほとんどの場合がナイター。照明が灯る中での試合での思い出やプレーする上で気をつける点など、ゲストの監督、元監督のお話は参考になることが多い。復活する完全生中継ではそうした話を聞くこともできるだろう。

今年の夏の甲子園は前半3日間で午前と夕方以降の2部制が初めて実施され、将来へ向けた模索の大会とも位置付けられる。高校野球でも夜に試合開始が当たり前になる時代に入るかもしれない。

「オーディオ高校野球」。

地上波の編成に左右されない新たな高校野球ラジオ中継の形が今夏、始まる。

(松倉雄太)

<松倉雄太>

1980年大阪府出身。2004年からスポーツライターとなり、スポーツナビ、高校野球ドットコムなどのWEBサイト、『報知高校野球』などの野球雑誌に寄稿している。ABCテレビ『甲子園への道』、『熱闘甲子園』、スカイA『明治神宮大会中継』『ドラフト中継』などでブレーン・リサーチとしても活動。スカイAの明治神宮大会特番『大学野球の熱』でも製作スタッフとして携わっている。2016年からはAbemaで「U-18野球ワールドカップ」「U-18アジア野球選手権」で中継解説を務めた。

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