涙ながらに閉店を惜しむ人々… 尼崎で愛された小さな町の本屋さん「コバショ」が72年の歴史に幕

72年にわたり、地元の人々に愛されてきた町の本屋さん。名物店主が営む名物書店の“最後の日々”を取材しました。

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兵庫県尼崎市、立花商店街のはずれにある1952年創業の本屋さん「小林書店」。広さ10坪ほどのお店を、店主の小林由美子さん(75)と夫の昌弘さん(79)が2人で切り盛りしています。

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お客さんに積極的に話しかけ、その人に合う本やこだわって仕入れた本をおすすめするのが由美子さんの営業スタイル。ひとりでも多くのお客さんに作品や作家の魅力を伝えるため、扱う本は何度も何度も読み返します。

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そんな由美子さんのトークに引き込まれたお客さんが次々とお店で本を買い、100冊、200冊を超える“ベストセラー”になることも。魅力的な名物店主がいる「小林書店」は、気がつけば地元の住民や取引先の人たちが集う場所となり、親しみをもって「コバショ」と呼ばれるようなりました。

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「小林書店」は由美子さんの両親が72年前に開店。由美子さんは45年前に跡を継ぎました。しかし、15年後の1995年、阪神・淡路大震災で店は半壊。本の売上だけでは生活できないと、台車に本と傘をのせて商店街で売り、本と同じ情熱あふれるセールストークで週に250本を売り上げたこともありました。

【動画】傘はその後も店内で販売。「片手間に売るなんてメーカーさんに失礼」と30年わたり、情熱を持って売り続けました。

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常に努力を惜しまず、アイデアと熱意で店を守り続けてきた由美子さんを、一番近くで支えてきたのが夫の昌弘さん。5年前に脳梗塞で入院し、一時は「一生歩けなくなる」とまで言われましたが、懸命なリハビリで店の中を歩いて移動できるまでに回復しました。

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その一方、由美子さんは腰を悪くし、近所に本を配達する日課も1日1軒に届けるのがやっとという状況に。悩んだ末、由美子さんと昌弘さんは今年5月31日をもって店を閉める決心をしたのです。

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5月中旬、閉店を発表した「コバショ」には、お客さんが毎日ひっきりなしに訪れていました。お会計を済ませた後、由美子さんと1時間近く話し込む人も。ですが、お客さんとのこの止まらない“おしゃべり”が「コバショ」では当たり前の光景だったのです。

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また、5月には毎週土曜日にイベントも開催。この日は「これからの町の本屋」について、さまざまな書店が集まって語り合いました。「紙の本がなくなると言うけど、本を読む人がいる限りなくならない」「(人が本を読む理由は)好きな人が困ったときに助けてあげる適切な言葉をプールしておくため」――45年間、“町の本屋さん”としてがんばってきた由美子さんならではの言葉に参加者たちは熱心に聞き入ります。

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そして迎えた5月31日。由美子さんのたっての希望で、壁には紅白の幕が張られ、祝い酒が振る舞われるお祝いムードで迎えた「小林書店」の最終営業日。最後の1日は、1から店を立ち上げて信用を築いてくれた両親や、来てくれたお客さんに対して感謝を伝える日にしたかった由美子さん。

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集まった200人を超える人たちに由美子さんが涙ながらに語った“最後の思い”とは?

名物書店の最後の日々は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!

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