一般企業から転職し、山間部の駐在所で家族と暮らすお巡りさん 下校中の小学生から届いた“落とし物”とは?
大阪府内に46箇所ある駐在所。複数の警察官が交代で勤務する交番とは違い、1人の警察官が家族とともに住み、勤務にあたります。そんな“駐在さん”の多忙な1日に密着しました。
大阪・和泉市の山間部、人口約2000人のエリアにある大阪府和泉警察署・仏並駐在所。稲垣辰至巡査部長(40)は、こちらの駐在さんになって5年目。駐在所の奥にある居住スペースに、妻と2人の娘の4人で暮らしています。
午前7時、「金融機関の職員が暗証番号を聞き出すことはありません」と特殊詐欺への注意をうながす稲垣さんの声が町中に響き渡ります。1日のお仕事の始まりは“町内放送”。住民にしっかりと伝わるよう、録音などに頼らない生放送にこだわっています。
特殊詐欺の被害額は、和泉市内だけでもここ2年でおよそ1億円。担当の地域はターゲットになりやすい高齢者世帯が多いため、注意喚起に力が入ります。
【動画】地元のコンビニと協力し、特殊詐欺の被害を未然に防ぐ取り組みも。
午前8時、学校の登校時間になると、通学路の途中にある交差点へ。ここは交通量の多い場所ですが信号がありません。小学校に向かう子どもたちに笑顔で安全指導をしながら、車やバイクにも目を配る稲垣さん。ここに駐在さんがいるだけで、ドライバーがスピードを抑えるなどの効果もあるといいます。
午前9時からは「巡回連絡」。受け持ちエリアの約1000世帯を1軒ずつ訪問し、家族構成の把握や緊急連絡先の確認などを行います。多いときで1日10軒ほど訪ねますが、つい話が盛り上がり、1軒に1時間ほどかかることも。「稲垣さんに会うと元気が出ます」と訪問を楽しみにしている住民もいます。
稲垣さんは和歌山出身。小学生のとき、学校に来ていた駐在さんに出会い、「かっこいい」とあこがれました。大学を卒業後は一般企業に就職しましたが、「どうしてもこの制服が着たい」と、会社を1年で退職。専門学校で勉強し直し、警察官に。およそ12年の警察署勤務を経て、念願の“駐在さん”になったのです。
午後0時、駐在所に戻り、家族と一緒に昼食を食べる時間は、稲垣さんが最も「ホッとする」ひととき。料理を作ってくれるのは妻の知津さん。稲垣さんが不在のときに電話番や来客対応もこなす、駐在さんの大切なパートナーです。
午後は公民館へ。30人ほどの地元の高齢者に詐欺被害の防止を訴えます。町の人々は皆、かけがえのない存在。「家族を守るように地域を守る」のが稲垣さんのモットーです。
午後3時、小学生から声をかけられた稲垣さん。下校中に拾ったと届けてくれたのは“1円玉”でした。「落とし物としてちゃんと受理するから。ありがとう!」と預かった稲垣さんは、駐在所に戻ると“拾得物”としてしっかりと手続きを。小学生のうれしい善意に笑顔がこぼれます。
勤務は午後3時45分で終了ですが、事件や事故があればすぐに駆けつけるため、常に気が抜けない“駐在さん”。そんな稲垣さんが地域の人々との繋がりをもっと深めるため、休日に続けている“趣味”とは?
駐在さんのお仕事密着は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!