「スマホのおかげで何でも簡単になったはずなのに…」 “時代”を突いた台詞も 遊川和彦シナリオならではの「アイのない恋人たち」第1話
ドラマ「アイのない恋人たち」放送スタート
ヒットメーカー・遊川和彦が描き出す、現代の恋愛事情とは…
福士蒼汰が主演を務める ABCテレビ 連続ドラマ「アイのない恋人たち」が21日にスタートした。
2023 年4月に新設された ABC テレビ制作による日曜夜 10 時の連続ドラマ枠。これまで岡田惠和の『日曜の夜ぐらいは…』、野島伸司の『何曜日に生まれたの』、浅野妙子の『たとえあなたを忘れても』と人気脚本家によるオリジナル作品を放ち、ギャラクシー賞などを受賞してきた。
そして 2024 年 1 月期は遊川和彦。90 年代は『GTO』『魔女の条件』などが大ヒット。00 年代には『女王の教室』、10 年代は『家政婦のミタ』で社会現象を生んできた希代のヒットメーカーだ。
新ドラマは『アイのない恋人たち』。主演・福士蒼汰、ヒロイン・岡崎紗絵。本郷奏多、成海璃子、前田公輝、深川麻衣、佐々木希が共演するアラサー男女 7 人のラブストーリーだ。
【動画】「愛がない」「見る目(eye)がない」「自分(I)がない」アイが欠けている者たちのラブストーリー第1話
冒頭から点描されるのは、東京で暮らす 7 人の日常。稲葉愛(佐々木希)は、楽器店でピアノを弾く少女を見つめ、食品会社勤務の淵上多聞(本郷奏多)は、バスに揺られながら『よく当たる恋愛診断』というメールを削除する。多聞の後輩の冨田栞(成海璃子)は、オフィスで仕事に追われ、てんてこまい。区役所勤務の近藤奈美(深川麻衣)は、婚姻届を受理したカップルに頼まれ、笑顔で写真を撮る。警察官の郷雄馬(前田公輝)は、結婚式場で婚約破棄されて愕然。ブックカフェを営む今村絵里加(岡崎紗絵)は、母親からの着信を気にしながら客を迎え入れる。そして売れない脚本家の久米真和(福士蒼汰)は、一夜をともにした女性から逃げるように去っていく……。
目を奪われるのは、豪華キャストの“華やか”とはほど遠い姿。無精髭を生やしている福士、眼鏡で化粧っ気がない岡崎をはじめ、全員が“東京の片隅にいてもおかしくない人たち”として現れて新鮮だ。
15 年の時を経て再開した真和、雄馬、多聞の同級生たち。雄馬と多聞はバイトを終えた真和の家へ押しかけ、そのままファミレスへ。近況を話していると、雄馬は結婚寸前で婚約者に逃げられ、多聞は女性と付き合ったこともないという。多聞は「恋愛って大変じゃないか?まともに付き合ったのはゼロ。別にそれで不便だと思ったことない」という。真和は、マッチングアプリで適当な相手を見つけては関係を持ち、3回会ったら連絡を絶つと決めているという。33 歳、全員独身。そして3人は、合コンすることに…。
合コン当日、真和は店の前で偶然、高校時代の彼女・愛と再会。そのまま愛が働くクラブに行き、酔い潰れた愛を家に泊めることに。同様に店の前で母親から電話が入り、家に呼び戻されたのは絵里加。帰宅すると、家に閉じこもった兄が暴れたらしく、物が散乱していた。さらに多聞と栞も残業で参加できなくなり、 “お見合い”状態になった雄馬と奈美。不器用な2 人は、微妙な空気に。しかし奈美の「ありのままの郷さんを受け入れてくれる人は、きっといます!」という言葉に、雄馬はハッとした。
後日、絵里加はマッチングアプリに登録し、話が合ったイケメンと会うことに。そこに現れたのは、真和だった。絵里加は「簡単に売上げは伸びないし、それに家に帰ったら親が……」と初対面の真和に暗い話をしてしまう。真和は、それに同調。「そうやって人知れず頑張ってる人を励ます映画を作りたい」と夢を語ると、絵里加は脚本を読ませてもらうことに。夜の公園で読み終わり、涙を流す絵里加。その時取った真和のある行動が、絵里加の逆鱗に触れる。
「スマホのおかげで何でも簡単になったはずなのに…人とつながるのは、何でこんなに難しくなったんだろう」という真和の心の声が胸に刺さった第 1 話。「後輩は合コンという言葉すら知らない」「29 歳から 34 歳の男性のなんと4割が女性経験がない」「80 代の親と 50代の子どもが暮らす家が増えて社会問題になってるんだ(8050 問題)」といった “時代”を突いた台詞も遊川脚本ならではだ。
キャラクターからは、現代人の恋愛に対する考え方や多様性が浮かび上がる。マッチングアプリを利用し、「3 回会ったらさようなら」というドライな真和。“早婚”願望が強すぎて空回りする雄馬、「恋愛なんてなくなったらいいのに」とまで言い放つ多聞。男性陣もいろいろだが、女性陣も負けていない。「わたしは一生独身でもいい」という絵里加に、「毎日の生活のことでいっぱいいっぱい」という栞。同級生が次々に結婚し、幸せそうな SNS を見ては焦るという奈美……。
博報堂生活総合研究所が発表した「ひとり意識・行動調査 1993/2023」によると、「ひとりでいる方が好き」という人は 1993 年は 43.5%だったが、2023 年には 56.3%に増加。男女別では男性58.6%、女性 54.0%と、男性の方がひとりを好む割合が高い。
ちなみに 30 年間での「ひとりでいる方が好き」という人の増加率は男性 11.9 ポイント、女性13.7 ポイントと女性の方が高かった。絵里加のように経済的にも精神的にも独立した女性が増えていることが推測される。
ただし絵里加も、本当に「一生独身でいい」と思っているわけではなさそうだ。アプリで出会った真和との関係は、果たして恋愛に発展するのか。真和は「3 回の壁」を超えて、アイのある恋愛をする日が来るのか?第2話以降、注目だ。
<文・泊 貴洋>
【第2話あらすじ】
久米真和(福士蒼汰)に、連続ドラマの脚本を代理で書くチャンスが急きょ巡ってくる。成功への足がかりをつかみたい真和は、合コンの一件で落ち着きをなくしている郷雄馬(前田公輝)と淵上多聞(本郷奏多)を横目に、全力で執筆に打ち込もうとする。しかし、今村絵里加(岡崎紗絵)に言われた、「あんたに、人を幸せにする脚本なんか絶対書けないから!」の言葉が頭から離れず、いくら意気込んでもまったく書けない状態に陥ってしまう。
一方、その絵里加は、真和に言い過ぎたことを後悔しつつも、自分からコンタクトを取る気にはなれず、ため息混じりの日々を送っていた。近藤奈美(深川麻衣)と冨田栞(成海璃子)は、そんな絵里加の様子を気にかけるが、二人にも憂うつな出来事が起こり…。
その後も真和の執筆は一向に捗らず、事情を知った稲葉愛(佐々木希)から「女の呪い」と揶揄される絶望的な状況が続く。そして迎えた締め切り前夜。1行も書けないまま、愛から強引な呼び出しを受けた真和は、半ば投げやりな気持ちで出かけていくが…。
【放送情報】
『アイのない恋人たち』
毎週日曜よる10時 (ABCテレビ・テレビ朝日系)
★放送終了後、TVer・ABEMA で見逃し配信
【キャスト&スタッフ】
出演 福士蒼汰 岡崎紗絵 本郷奏多 成海璃子 前田公輝 深川麻衣 佐々木希
脚本 遊川和彦
音楽 平沢敦士
主題歌 「present」THE BEAT GARDEN(ユニバーサル シグマ)
演出 綾部真弥 吉川鮎太