俳優・アーティスト 山下幸輝 「自分で考えたものが崩されて新たなものが生まれる瞬間って最高」
恋の終わりを描く切ないラブストーリー「すべての恋が終わるとしても」(ABCテレビ・テレビ朝日系列 毎週日曜夜10:15)は、変わりゆく環境で生きる2人を中心に、男女8人の人間関係を丁寧に描く群像劇。高校の同級生で卒業式の日に付き合い始めた由宇(葵わかな)と真央(神尾楓珠)は、大学進学を機に遠距離になり、次第にすれ違っていく……。

また、由宇と真央の母校である高校に通う、蒼(山下幸輝)と沙知(大塚萌香)の甘酸っぱい恋愛も描かれる本作。今回は蒼を演じた山下さんに大好きな恋愛映画やダンスについて教えてもらいました。
――本作は4組の恋愛が描かれていますが、ご覧になっていかがですか?
学生の頃に出会って相手の全てを分かっているつもりでも、大学生や社会人など環境が変わっていくと絶対に気持ちの変化はあると思うので、登場人物達の心変わりはすごくリアルだと感じます。僕も社会人になって、これまで一緒のことで感動していた友達と感覚がちょっとズレてくるつらさというのは分かりますし、それが恋人となると絶対につらいと思います。でもそのどうしようもできない感じが今回丁寧に描かれていて、本当に「分かる!」の連続です。別れを描いた作品ではあるのですが、恋を始めたころの甘酸っぱさも描かれているので、恋をしたくなっている人が多いのではないかなと思います。
――これまでご覧になった映画やドラマで、忘れられないライブストーリはありますか?
北村匠海さんが主演した映画『明け方の若者たち』(2021年)ですね。環境や気持ちの変化で揺れ動く恋心が描かれていて、つらいと思いながら見入っちゃいましたね。好きだけではどうしようもない恋愛が描かれていて、どこかリアルで目が離せない。悲しい物語ですが、忘れられない恋を描いているので好きです。この作品以外にも演技の幅を広げるため、映画はよく見ます。6つ上の姉がいるのでいい作品を教えてもらい、新作も過去作も関係なく見るようにしていました。
――本作は群像劇でしたが、これまでに出演していた作品と違うと感じる部分はありましたか?
これまでは年齢的にも王道の胸キュンラブストーリーや学園モノが多くて、群像劇のような作品は意外となかったんです。今回は大塚萌香ちゃんとの2人のシーンが多く、表情や声のトーンでお芝居をすることが多かったので新鮮でした。

――やはりジャンルによって演技のテンションは変わるモノですか?
ラブコメだと少しオーバーに表現し、気持ちをいつもより上げて演じるなど、ジャンルによって違いはありますね。今回はリアルなので、些細な表情や仕草、台本に描かれていない部分もよりリアルに映し出すためにはどうしたらいいかと悩みました。でも、上手くできたような気がします。
――演じた蒼は高校生でしたが、山下さんご自身はどんな高校生だったのですか?
ダンスに熱中していました。小学1年生でダンスを始めて、途中、野球を始めたのでダンスをストップしたのですが、中学で本格的にダンスをやりたくてダンスの強豪校を受験しました。やりたかったロックダンスが強く、それを教えてくれるインストラクターの先生がいるダンス部で、先生に憧れて入学した人ばかりで本当にいい仲間ができました。6年間“THE 青春”です。コンテストも出て、負けるときもありましたがそれが吹き飛ぶぐらい楽しかったです。
――ダンスで得たことはお芝居でも活かされていると感じますか?
めちゃくちゃ感じます。ダンスはもちろんですが、お芝居もリズムが大事だと思うんです。会話もリズムが変わると、伝わる感情や表情が変わるというか。セリフはもちろんですが、音やリズムで感情を伝えることも大事にしています。

――セリフを覚えるときは口に出して練習するのですか?
僕は耳で覚える感じですね。お芝居は相手がいてこそなので、現場に行って、相手とセリフを合わせて自分のリズムをチューニングしたりしています。それがまた面白いんですよ。掛け合いをしたら新たなリズムが生まれたりして、そういう新しい波に飲み込まれるのが好きで。自分で考えたものが崩されて新たなものが生まれる瞬間って最高です。
――常に前を向いて進んでいる感じですね。
あまり振り返らないです。寝たら忘れるタイプでもあるので(笑)。新しいことをしてどんどん塗り替えていくと、楽しいことでいっぱいになってくる。未来って楽しいことばかりですから。基本、前を向いています。
アーティスト活動も始めて、働いている時間は倍になったのですが、刺激も倍になって毎日が新たな発見ばかりです。お芝居の現場では共演者の方の演技や会話から刺激を受けますし、アーティストとして舞台に立ったときはこれまでにない緊張感やダンス、歌からも刺激をもらって、本当にいいことしかないんですよ。一見、俳優とアーティストって共通点がない感じがしますが、一緒にやっているとすごく似ているし、つながっている部分も多いと思います。これからもアーティストで感じたことをお芝居に還元したりして頑張っていきたいです。

ドラマ『すべての恋が終わるとしても』は、ABCテレビ・テレビ朝日系列で毎週日曜よる10時15分放送。放送終了後、TVerで見逃し配信。U-NEXT、Prime Videoでは全話配信。
取材・文/玉置晴子



