大阪・玉造の人情“魚ファミリー”!娘は魚専門のハンバーガー店主、息子は魚の仲買人!旬の魚がうまい店を営む両親の未来に向けた思いは…
街のおいしい店に潜入し、店主の人柄からにじみ出る人気の秘密を発見するシリーズ「実録!人情食堂」。今回は、魚が旨いと評判の大阪にある食堂に密着しました。
やって来たのはJR玉造駅から徒歩10分の「活魚料理 いしかわ」。朝8時過ぎ、開店前のお店で今日の仕込みを始めるのは、店主の石川貞夫さん(76)です。名物の「ホタルイカの石焼き」に使うホタルイカの準備をしたり、お昼の定食で出す魚を焼いたり。「一手間やけど、みんな喜ぶやろう思うて」とサバの小骨も丁寧に取り除きます。
昭和55年、31歳のころに「いしかわ」を開業した貞夫さん。ここはもともと貞夫さんの実家で、魚や野菜、乾物などを売る昭和22年創業のスーパー「石川商店」を両親が営んでいました。
高校卒業後は船乗りにあこがれ、家業を継がずに海上自衛隊に入隊。しかし3年で実家に戻り、店を手伝うことに。魚の勉強がしたいと鶴橋市場で修業し、魚の目利きや捌き方などを学ぶなか、運命の女性に出会います。
それは、隣のお店に手伝いに来ていた現在の妻・多喜子さん(69)。貞夫さんが多喜子さんに“飴”をもらったのがきっかけで恋に落ち、貞夫さんが34歳、多喜子さんが27歳のときに結婚。一男一女と2人の子どもにも恵まれました。
貞夫さんと一緒に「いしかわ」の厨房に立つ多喜子さんが作るのはおばんざい。定食の準備が整い、11時半、昼の営業が始まりました。焼いたサンマやサケ、サバの煮付けやお造りなど定食の注文が次々と。おいしい魚料理と、明るく元気な多喜子さんの接客は、地元や近くで働く人たちを笑顔にします。
【動画】昼の営業が終わると、貞夫さんは馴染みの銭湯でひとっ風呂。朝や昼など「お日さんが上がっているとき」に入る風呂が昔から大好きだそう。
ところで、2人のお子さんは何のお仕事をされているのでしょうか? “ととねぇ”こと長女は、ご近所で魚専門のハンバーガー店「トトバーガー」を経営。もっと魚を食べてほしいと7年前に開業したこのお店。ハマチやタイ、カンパチなどから好きな魚を選んで揚げたトトバーガーは若者にも大好評です。
長男の真太郎さん(41)は魚の仲買人。和歌山の加太で1本釣りした魚を大阪市内の市場に卸す仕事をしています。今朝獲れたアジを、背骨近くの神経にワイヤーを通すプロの技「神経締め」で締める真太郎さん。こうすると5〜6時間経っても身が硬直せず、旨みが増すそう。この魚は「いしかわ」でも食べられます。
さて、日も暮れてきた7時前、「いしかわ」にととねぇがやって来ました。予約が入って忙しい日などの夜は、こうしてお手伝いに来ています。自分の店と実家を行き来しながらイキイキと働くわが娘に、貞夫さんは「ようがんばってるな。ええこっちゃ」と目を細めます。
次の日も、近くの会社から注文が入ったウナギ弁当と昼の仕込みの掛け持ちで、厨房は朝から大忙し。しかし、10年ほど前には「いしかわ」はとてもヒマだったとか。そんななか、ととねぇが「お店を守りたい」と店前で月に一度の朝市を開催し、「マジでめちゃくちゃおいしい!」というお父さんの味を多くの人に知ってもらおうと大奮闘したそうです。
そんながんばりが功を奏し、今ではたくさんのファンがいる「いしかわ」。これからお店をどうしていきたい?と質問してみると、「僕はここを守るだけ」「わしは中継ぎや」と貞夫さん。親から受け継いだ店を娘や息子に繋ぎたい――そんな強い思いがあるのです。
娘にとっても、お店の存在は「生きがい」。働く両親の姿に「活力をもらってる」というととねぇは「もっとお客様に喜んでもらえるようがんばりたい」とニッコリ。大阪・玉造の「活魚料理 いしかわ」はとっても素敵な人情食堂でした。
「実録!人情食堂」は、9月22日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
