「“泥臭さ”を意識した」大人気野球ゲーム『パワプロ』開発者が語るヒットの秘訣

大人気野球ゲーム『パワフルプロ野球』シリーズの世界が初のドラマ化!『パワプロドラマ2025 ─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─』は、大の『パワプロ』ファンであるニッポンの社長・辻皓平が初脚本を手掛け、鈴木福が主演を務めることが発表され大きな話題を呼んだ。

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昨年、誕生30周年を迎えた『パワプロ』。ABCマガジンでは本作をより楽しむため、『パワプロ』の開発者のひとりであるコナミデジタルエンタテインメントのゲームクリエイター・豊原浩司さんにインタビュー! 前編では当時の制作秘話について、この後編ではドラマ化の心境や『パワプロ』シリーズが長年にわたって愛され続けているその魅力に迫る。

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――今回のドラマの脚本にも大きな影響を与えている、『パワプロ』シリーズの『サクセス』モードはシリーズ3作目から登場しました。これはどういったキッカケで誕生したのでしょうか?

これはチーム内の「プロ野球選手の人生を体験できるようなゲームできへんかな」という雑談から始まったんです。選手がプロ野球チームに入団して、引退するまでを追体験してみたいと。ですが引退まで作るとなると大変なので、2軍から1軍に上がったところで終わりにしようとなり、3年という期限を設けて選手を育成するモードを作りました。野球ゲームでは珍しいと思いますが「彼女ができる」という要素があったら面白いなと思って、それも入れました(笑)。

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――恋愛は、現実世界でも選手のモチベーションにも大きく関わりますもんね(笑)。3年という期間も、2軍に入って練習を積み重ねて、1軍に上がるまでのスパンとしてはリアルですよね。3年頑張って芽が出なかったら、考え直す人も出てくるような。

ある球団では3年で1軍に上がれなかったら、自由契約になるという話を聞いたことがあって。シビアな話ですけど、そういったプロ野球界の厳しさも意識しましたね。

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――一流選手になって活躍したい、と選手生命をかけて汗をかいて泥臭く奮闘するシナリオは、パワプロくんの可愛いキャラクターからはちょっと想像できないリアルな要素で感情移入しながらプレイしていました。

「泥臭さ」はすごく意識しました。そこが野球の魅力でもあると思うので。新しく入団してくる選手がいれば、その数だけ辞めていく選手もいるという現実を、ゲームを作るにあたって調べていく中で知ったので、そこもしっかりと描きたいと思っていました。これまで野球ゲームで遊んでいても、進行がすごく綺麗なのが気になっていたんです。実際に球場で野球を観てみると、エラーをしたり、パスボールがあったり、振り逃げしたりといろいろ起こる。野球は「ヒットを打ってバンザイ!」といえる、それだけのゲームじゃないからこそ、日々いろんなことが起こっている選手の人生を体験してほしいなと思って作りました。「インフィールドフライ」(※下記参照)なんてルールがあったんだ、という細かいルールも全部取り入れてやろうと(笑)。

――選手の数だけ、ドラマがありますからね。細かい設定でいえば、選手の調子マーク(絶好調〜絶不調まで5段階)があるのもユニークですよね。子どもながらに、好きな選手でも「今日は調子が悪いから使うのやめようかな」みたいな会話が遊びながら飛び交うのもおもしろくて。

調子の変動がなかったら、使う選手が決まってきちゃうんですよね。今日の調子を見てオーダーをちゃんと考えるのもやっぱり野球の醍醐味ですから、そこも監督の気分になって体験してもらおうと。調子が良かったら、結果に繋がるかもしれないとか。

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――実際にプロ野球選手からのフィードバックもあるのでしょうか?

近年は割とあります。プロモーションもかねて選手のみなさんにプレイしていただく機会も増えたので。別タイトルのソフトでは選手の動きをキャプチャー撮影して再現したりしているので、撮影時にお話を伺ったりと、選手の方とお会いする機会も増えました。『パワプロ』を始めた頃は、まさか選手と関わることができるとは思ってもいませんでしたので、本当にありがたいです。実際にプレイしていただいて、「自分はこの球種は投げない」と意見いただいて、消したりしたこともあります。

――データもルールも徹底して再現されているから、最近は子どもの頃に遊んだ『パワプロ』で野球を学んだという選手も多いのでは。

そうかもしれないですね。試合前に相手のピッチャーをゲームで見てシミュレーションするという方もいらっしゃいました。だからこそデータの精度もやはり上げておかないといけないんです。

――新しい『パワプロ』がリリースされる度に、年を重ねた選手の能力値も衰えていくということもありますよね? それは選手もショックでは?
はい、でもやっぱり年とともにパフォーマンスが落ちることを実感しているので、そう思われているのではないかなと思います。一方で、とある選手が『パワプロ』でシュートをつけてほしいからシュートを練習しているという記事を見たこともあります。

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――逆に、現実の選手の能力にまで影響が!(笑)。さて、そんな『パワプロ』シリーズが現実世界に影響を及ぼすという、実写ドラマ『パワプロドラマ2025 ─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─』が放送となります。ドラマ化を聞いた時の心境はいかがでしたか?

それはもう、おどろきました(笑)。どんな風に実写化されるのか、面白い試みだと思いました。

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――『サクセス』モードのようなライバルとの競争や成長物語で、調子マークや「負け癖」の特性など、豊原さんたちが生み出してきた『パワプロ』の魅力が随所に。実際に脚本を読まれてみての感想は?

私も忘れていたような細かいキャラクターの設定が反映されていたり、選手の調子や特殊能力の設定も生かされていて、おもしろいですね。私も出かける前に、自分の中で「今日の調子バツだな」みたいに思うことはあります(笑)。今までドラマになるというアプローチはなかったので、どんな風に『パワプロ』の世界が描かれるのか、私もすごく楽しみにしています!

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(※)野球でノーアウトまたは1アウト、かつ一塁・二塁または満塁の状況で、野手が容易に捕球できると審判が判断した内野フライに対し適用されるルールです。この宣告により、打者はその時点でアウトとなり、守備側の「意図的な落球によるダブルプレー」を防ぐことで、攻撃側の不当な不利を解消し、公平性を保つことを目的としている。

取材・文=大西健斗

鈴木福主演、ニッポンの社長辻皓平が脚本を担当するドラマパワプロドラマ2025 ─平凡な新社会人の俺がサクセスした話─は、9月26日(金)深夜0時24分放送。放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信

あらすじ 元球児で新社会人の主人公・西野純平(鈴木福)が会社へ向かう道中で奇妙なゲーム機を発見。平凡だった日常が突如『パワプロ』の世界とリンクし、ちょっと不思議な社会人生活が始まるというオリジナルストーリー。

画像:©Konami Digital Entertainment

番組情報

パワプロドラマ 2025 ー平凡な新社会人の俺がサクセスした話ー

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