片腕のシェフが作る絶品ハンバーグの秘密に迫る! ミシュランもオススメ!奈良の人情洋食店のキッチンに潜入!
『newsおかえり』で9月からレギュラー企画になった「実録!人情食堂」は、行列店や隠れた人気店など、店主の人柄を深掘りし、背景にあるストーリーをお伝えするコーナー。記念すべき第1回は、奈良市にあるハンバーグが大人気の洋食屋さんを訪ねました。
やって来たのは、ならまちにある「洋食 春」。営業はランチのみで、お客さんの9割が頼むという一番人気は、熱々のハンバーグと大きなえびがのった「海老フライ&ハンバーグ」。ミシュランガイド2017で調査員のおすすめにも選ばれたお店です。
ハンバーグ専門店ではありませんが、肉汁あふれるジューシーなハンバーグがお店の名物。一体、どのようにして作られているのでしょうか? オーナーシェフの中林大樹さんに密着し、おいしいハンバーグができるまでを探ってみました。
午前8時、店から車で15分ほどのセントラルキッチン「はるキチ」に向かう中林さん。ここで大まかな仕込みをパートさんらが手伝ってくれているそう。中ではすでに妻の千春さんが仕事を始めていました。
実は中林さん、左手の二の腕から先がありません。地元の北九州で料理の見習いをしていた22〜23歳のころ、左手に包丁が刺さる事故をきっかけに神経の難病を患い、気絶するほどの激痛に悩まされるようになりました。
再び厨房に立つため全国の病院を回った中林さん。そんななか、神経再生治療のパイオニアとして知られる奈良市の医師・稲田有史先生に出会い、さまざまな治療を試しましたが症状は改善せず、切断に踏み切ったのは27〜28歳のころでした。辛い選択でしたが、先生の「必ず春は来るから」という言葉に励まされ、心を決めたといいます。
切断から4年後、痛みから解放してくれた稲田先生への恩返しのため、奈良に「洋食 春」をオープン。店名の「春」はもちろん先生の言葉から名づけました。
【動画】この日の「洋食 春」には、奈良で有名な飲食店を営む「憧れの先輩」も来店。「すごい!しかないよな」と中林さんのエネルギッシュな仕事ぶりに舌を巻きます。
さて、大人気のハンバーグの仕込みをのぞいてみましょう。まずはボウルに卵を割り入れ、加えるのはしょうゆベースのタレ。肉の旨みを逃がさないよう、塩やこしょうは使わないそう。そこに投入するミンチは奈良県産の大和牛と大和ポークの合いびき肉。これを「二度挽き」してなめらかにすることで、お腹にもたれないハンバーグになるといいます。
午前9時半前、中林さんは仕込んだ材料を車に乗せてお店へ。すぐに厨房に向かうと、ハンバーグにかけるデミグラスソースを作ります。隠し味に「牛骨」を入れ、コクを出すのがポイント。ここでも塩・こしょうは使いませんが、そのワケは? 中林さんいわく「当店はおじいちゃん、おばあちゃんから孫、ひ孫まで一緒に来てもらうのがモットー」。すべての世代がおいしく食べられる味を追求するうち、喉が渇きやすい塩・こしょうを避けるようになったんだそうです。
ハンバーグの形を整え、フライパンで“下焼き”して旨みを閉じ込めるまでの下ごしらえを終えると、開店時間の30分前。店の前にはすでにお客さんが並んでいます。中にはSNSでお店を知り、わざわざ大阪からやって来た人も! そして午前11時、お店がオープン。人気の「海老フライ&ハンバーグ」の注文が次々と入り、「めちゃめちゃおいしい!」「ソースがすごい変わってておいしいです」と喜ぶお客さんに中林さんの顔も思わずほころびます。
そんな中林さんの次なる目標は、自分のように身体に障害がある人を雇い入れ、「僕みたいに働けるよということ」を広く知ってもらうこと。ハンデを吹き飛ばすパワーでお客さんを笑顔にしていくシェフのお店「洋食 春」は、熱いハートがとっても素敵な人情食堂でした。
奈良市で人気の「人情食堂」は、9月1日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
