10年前に視力を失った父に「甲子園で勝利を届けたい」 応援席で見守られ、岡山学芸館3年生・明樂大瑶選手がガッツを見せた

夏の甲子園(第107回全国高等学校野球選手権大会)7日目にあたる8月12日の2回戦第2試合。岡山学芸館(岡山)の3年生・明樂大瑶(あきらたいよう)選手は、視力を失った父親に勝利を届けようとガッツを見せた。第1打席は、ショートゴロエラーという結果だったが……!?

【TVer】視力を失った父に“勝利の音”を届けたい! 岡山学芸館(岡山)3年生・明樂大瑶選手、9回表2アウトの場面でレフトに飛んできたボールを……!?

明樂選手にとって父親は、「一番近くで応援してくれている人」。野球が大好きな父親は、実は生まれつき目が不自由で、約10年前に視力を失った。しかし、カバーするように音の感覚が鋭い。「音が違うんよ。ピュって音とブンって音と。下半身と上半身がバランスよくできたら、ええバットのスイングの音がするんよ」という。

目が不自由な父親から音を通して指導されるのが、明樂選手の幼い頃の日課だった。そんな明樂選手は、「甲子園で勝ってお父さんに勝利を届けたい」という思いで、松商学園(長野)戦へ。気合十分の初打席は、残念ながらショートゴロだったが、勝利への思いがあまりにも強かったのか、ボールはショートのグローブをはじき、明樂選手は出塁した!

勢いに乗って先制したい明樂選手は、その後果敢に盗塁を試みるもアウトに。しかし、彼の気概は岡山学芸館に“良い流れ”を生んだ。岡山学芸館ナインは、1回裏から松商学園の3年生エース・加藤高慎投手をとことん攻めて先制したのだ。

岡山学芸館は、守備もバッチリ。3年生エース・青中陽希投手が1人で無失点に抑え続け、同学年のセカンド・又吉涼太郎選手がダイビングキャッチで気迫を見せるなどし、自分たちの良い流れを松商学園に決して渡さなかった。

岡山学芸館が3点リードしたまま迎えた9回表。2アウトランナーなしの場面で、松商学園の3年生・小林智選手が快音を響かせて飛ばしたボールは、グングンと伸びてレフトへ。そのボールを追うのは明樂選手だ。

明樂選手の両親を含むアルプススタンドの観客たちが、「大瑶!」と呼びかける中、明樂選手はどんどん後ろに下がり、壁ギリギリのところでボールをキャッチ! これによって、岡山学芸館は松商学園を3対0で下し、2年連続で夏の甲子園の初戦を突破した。

この日、明樂選手の父親は、片耳で現場の音、もう片方の耳でラジオ中継を聞きながら、アルプススタンドで応援。きっと彼の心の中には、明樂選手がウイニングボールを握ってホームへ走っていく姿や、仲間たちと整列して勝利を報告する姿が映っているだろう。「守備でよく頑張りましたな。勝ててよかった。みんなで勝てたんでね」と語る、明樂選手の父親はうれしそうだった。

父親と同じく、明樂選手自身も笑顔だ。試合後に明樂選手は「初戦、お父さんに一勝を届けられてよかった」と語り、「今日ノーヒットだったので、次の試合はお父さんにヒットを届けたい」と宣言! 次の試合でも、彼が太陽のように明るく楽しくプレーし、目の見えない父親に勝利の音を届けることに期待せずにはいられない。

なお、岡山学芸館と松商学園の試合ハイライトは、8月12日に放送された『熱闘甲子園』(ABCテレビ・テレビ朝日系列)で紹介された。

番組情報

熱闘甲子園
8月5日(火)〜決勝戦まで連日夜放送 ※休養日除く(予定)※変更の場合あり

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