全国の食通をうならせる「わさびスープ」が名物の和歌山・加太の海鮮料理屋さん エネルギッシュな人情派店主の壮絶な過去!

和歌山の小さな漁師町に全国からグルメが集まる店があります。ちょっとクセ の強い店主が腕を振るう名物「わさびスープ」とは?――多くの人に愛される人情海鮮料理屋さんに密着しました。

和歌山市の西にある加太は、海釣りのメッカとしても知られるのどかな町。漁港の近くに店を構える「満幸商店 Ⅱ」では、一本釣りの鯛をメインに、新鮮な海の幸をふんだんに使った海鮮料理がいただけます。

午前9時30分、開店の午前11時に向け、仕込みに余念がないのは店主の山下牧子さん(66)。漁師の家で生まれ育った牧子さんは、33歳で料理の世界に入り、当時は父・幸雄さんが釣った鯛で、今は従兄弟が釣った鯛で料理を作っています。

大鍋の中には、30匹以上の鯛のあらを12時間煮込んだ濃厚スープが。これをアツアツの鍋でお客さんに出し、刻みわさびを入れて飲んでもらうメニューが「わさびスープ」。店一番の名物です。

いよいよ開店時間。さっそくやってきた2人組の女性は、海鮮料理の店では定番の「しらす丼」を注文するつもりだったようですが、「大きな勘違い」と牧子さんはバッサリ。一体、どういうことなのでしょう?

潮の流れが速い紀淡海峡で揉まれて育つ加太の鯛は、身が引き締まり、味も格別。漁場には“しらす”もいますが、漁師たちが毎朝釣り上げる絶品の鯛を食べない手はありません。牧子さんはしらすより“加太の鯛”を味わってほしいのです。

そんな牧子さんの思いから生まれたのが、今やお客さんのほとんどが注文する「わさびスープ」です。まずは、鯛の旨みそのままのスープをストレートで味わい、それから刻みわさびを少し加えるのが定番の飲み方。お客さんに感想を聞くと、わさびを入れると魚の独特のクセがスッと消え、うまみがより際立つのだとか。「めちゃくちゃうまい!」と満面の笑顔です。

鯛の刺身のソースは“梅ソース”“わさび醤油”“海苔の佃煮”、そしてにんじんに酢の酸味をきかせた“にんじんソース”の4種類。ほか、カレー塩でいただく鯛の皮とウロコの唐揚げや、焼き物、鯛飯などがいただけるコースは2人前で6900円。牧子さんが愛してやまない加太の鯛が味わい尽くせます。

【動画】「満幸商店」は創業64年。牧子さんの母・寿恵子さんが始めた「本店」は人形供養で有名な淡嶋神社の参道にあり、こちらも絶品の海鮮料理が評判です。

午後3時、店が一段落したころにやって来たのは中国人の若者たち。中国でも人気の日本のアニメ「サマータイムレンダ」の舞台になっている沖合の島・友ヶ島の観光がお目当てだったようですが、この日は強風のため、フェリーが欠航になってしまったとのこと。

これを聞いた牧子さん、自ら運転する車で彼らを近くの「深山砲台跡」へと案内します。明治時代に作られた砲台の跡地で、今も残るレンガのトンネルなどがアニメの世界に似ているそう。「こんな田舎まで来て、行くとこなかったらかわいそうやん」と牧子さん。困っている人を見ると、じっとしていられないようです。

翌日、お店を訪ねると、牧子さんは料理に接客に大忙し。毎日エネルギッシュに走り続けられる理由を聞いてみると、「こんな話はしていいんだろうか…」と壮絶な過去を打ち明けてくれました。

若くして結婚した牧子さん。しかし最初の夫はほかの女性と姿を消してしまいました。残されたのは2人の子どもと4500万円もの借金。途方に暮れる当時25歳の牧子さんを支えてくれたのが、父・幸男さんと母・寿恵子さん。何もかも売り払って必死に働き、3人で8年かけて4500万円を返済しました。

「返しても返しても、返しきれん恩を受けてる」「感謝しかないよ」と目を潤ませる牧子さんを突き動かしているのは、支え励ましてくれた両親への思いです。

「人がね“おいしい”って言ってくれるのがうれしいの」「“おいしい”って言葉が聞きたい」と牧子さん。店を愛してくれるお客さんのため、今日も元気に料理を作り続けています。

和歌山の“人情海鮮料理屋さん”は6月18日(水)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

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