立花N党党首がメモをネットで公開 「これまで経験したことがない恐怖」兵庫県議を追い詰めた“デマ”と“誹謗中傷”はどのように拡散されたのか

1年以上続いている兵庫県政の混乱の中、誹謗中傷で追い込まれた元県議が命を落としました。彼を追い詰めたのはSNS上で拡散された“情報”。その真偽を取材班が緊急検証しました。

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今年1月に亡くなった兵庫県の元県議・竹内英明さん。県の内部告発文書の真相を調査する百条委員会に名を連ねていた竹内さんは、委員会が設置された昨年6月以来、斎藤元彦知事の疑惑を厳しく追及していました。

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そして11月に実施された兵庫県知事選挙の最中、斎藤知事を応援する2馬力選挙を展開していたNHK党の立花孝志党首が、文書問題について「黒幕は竹内」とするメモをネットで公開。その直後から事務所にいたずら電話が増え、誹謗中傷のメールが送られてくるように。電話番をしていた竹内さんの妻は「これまで経験したことがないような、人から向けられる敵意というか…。そういったものを一斉に浴びせられる恐怖」に脅かされたといいます。

家族を巻き込んだことに心を痛めた竹内さんは、知事選の投票日翌日の11月18日、県議を辞職。それでも誹謗中傷は止まず、今年1月18日、自宅で亡くなっているのが見つかりました。自ら命を絶ったとみられています。

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竹内さんが攻撃された材料のひとつが道路の計画をめぐる疑惑です。播磨地域と京阪神を結ぶ新たな大動脈として計画されている播磨臨海地域道路。これに関し、SNSでは“斎藤知事が1兆円の費用を5000億円に圧縮”し、“それに反発する議員が「斎藤下ろし」を画策した”との情報が拡散したのです。

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この利権に竹内さんが関わっていたとする主張も広がりましたが、実際はどうなのでしょう? 県の担当課によれば、道路計画には複数のルート案があり、その中からコストがもっとも低く、地域住民への影響も少ない“内陸・加古川ルート”が選定されたのは2020年6月。斎藤知事が就任した2021年8月の1年以上前、つまり井戸前知事時代にはすでに決まっていて、斎藤知事が変更したものではないのです。

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【動画】このような情報が拡散されていることについて、斎藤知事は「承知しているが、ひとつひとつの投稿を確認する立場ではないのでコメントは控える」と述べています。

竹内さんがメールをねつ造したとする疑惑も拡散されました。一連の問題の発端となる告発文書を作成し、証人として出頭予定だった百条委員会の直前に自ら命を絶った元西播磨県民局長。その妻が、“死をもって抗議する”という旨の夫の最後のメッセージを綴り、議会事務局に送ったメールが竹内さんによるでっちあげとされたのです。

その根拠は竹内さんのブログでした。メールが送られる前日に“元県民局長がメッセージを残していたことがわかった”と報じた新聞記事を引用しただけでしたが、“遺族がメールを送る前に知っているのは不自然”とする投稿をきっかけに、竹内さんのねつ造と決めつける陰謀論が広がりました。

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さらに、メールの宛先が“議事課”だったことから、妻がそのアドレスを知っているのはおかしいとする投稿も。しかし、メールを受け取った議会事務局に確認を取ると、事務局から妻にアドレスを伝えていたことが判明。「竹内さんのねつ造は考えられない」というのです。

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このような“デマ”はどのように広がったのでしょうか。SNSのデータ分析にくわしい東京大学の鳥海不二夫教授によれば、竹内さんへの批判のピークは議員辞職した11月18日。そして昨年12月25日にも、1万件を超える批判的な投稿がありました。

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その原因とみられるのが百条委員会での増山誠県議の発言。委員会での過去の質問において、「姫路ゆかたまつり」で斎藤知事にパワハラがあったというデマを流したと竹内さんを糾弾するものでしたが、竹内さんが亡くなった三カ月後、事実誤認だったと議事録が訂正される事態となりました。

なぜ、“事実誤認”に至ったのでしょうか? 取材班が増山県議に経緯を聞くと、返ってきた答えは「ノーコメント」でした。

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真偽不明の情報が拡散され、そこから生まれたおびただしい数の誹謗中傷がひとりの人間を死へと追い詰めることに。竹内さんの妻は、「誹謗中傷の先にいるのは生身の人間だということを忘れないでほしい」と訴えています。

兵庫県・内部告発文書問題をめぐる拡散情報の検証は、6月3日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

『newsおかえり』YouTubeチャンネルで配信中

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