桐谷健太 11キロの減量!!「しっかりとリアリティを出したかった」
『いつか、ヒーロー』(ABCテレビ・テレビ朝日系列 毎週日曜夜10時15分)で主人公・赤山誠司を熱演している桐谷健太さん。インタビュー前編では赤山のキャラクターや、「節目」と表現するこの作品への思い入れについて聞きました。

――2話の、政治記者の十和子(板谷由夏)が赤山を見て「悪魔」という台詞を言いました。3話では「人殺し」とも。そこに至るまで、赤山がそのような片鱗をまったく見せていなかったので、動揺しました……。いったいどういうことなのでしょうか。
人間には多分色々な側面があって。もちろん自分でも気づかない側面もあったり、気づいているけど表で出す顔とまた違ったり、ということもあるかもしれません。自分では「これが自分の全てだ」と思って出していても、見る人の角度によってその見え方が違うということですよね。だから「悪魔」「人殺し」と言っている人がどの角度で言っているのかが、重要になってくるんじゃないかなと思っています。
――桐谷さんが赤山を演じるとき、彼が多面的に見えるように演じますか? それとも見え方は気にせずまっすぐに?
子供の頃に何があったのか。なぜ養護施設で働くことになったのか。そういういろいろな過去を自分の中に染み込ませて赤山を作り上げていく中で、自分としてはとてもまっすぐにぶつかっていっている感覚の方が強いです。

――赤山は何者かに頭を殴られて、20年後に目覚めます。その間、赤山はほぼ植物状態、昏睡状態で入院していましたが、口を開けっ放しにするアプローチにリアルを感じました。あのお芝居にどうたどり着いたのでしょうか。
まずはしっかりと自分で調べて、入院中とリハビリのシーンのために体を絞って、体重は11kgほど減らしました。とても重要だったのは、医療監修の先生にお会いする時間を作ってもらえたこと。撮影前にどうしてもお話ししたかったですし、動きを確認していただきたかったんです。強烈なシーンが本当に多いので、しっかりとそこにリアリティを持たせたかった。スタッフさん、監督さん、医療監修の先生、僕とで「赤山に嘘がない状態でやろう」ということを共有して、アプローチしていきました。
――それも含め、今回のドラマでの桐谷さんにとっての挑戦、やりがいを感じるポイントを聞かせてください。
自分で言うのもなんなのですが、始まる前から「これは自分にとって節目となる作品になるな」という感覚がありました。なぜそう感じたのかと聞かれると、言葉にするのが難しいんですけど……。まず脚本を初めて読ませていただいたときに、本当に強烈過ぎて、「どうやって撮るんだろう?」と。いくら頭で考えても「もうわからん!」となって(笑)、自分の持っているもので、もし赤山と重なるところがあるなら全部出していこう、赤山として生きようと思いました。養護施設のドキュメンタリー映像をいろいろ見て、実際に話を聞いたりもしました。そこで感じるものはものすごく大きかったですね。テレビドラマであまり見たことのないタイプのパワーのある、パンチの効いた作品なので、自分の中で出せるものは全て出しつくしたい。これを見た人にドラマのキャラクターとしてだけでなくて、赤山誠司という人が本当にいると信じてもらいたい。そんな想いでやってます。

――桐谷さんにとっては、幼少期に観た映画『グーニーズ』がそういう作品だったそうですね。
グーニーズはこの世界に入りたい!と衝撃を受けた作品ですね。どんな作品でも「本物だ!」と思った瞬間の感動というのはどれも忘れられないです。もちろん作品というのは作り物なんですけど、その中に本物が見える瞬間に感動します。
――45年生きた桐谷健太のすべてを注ぐ。それは自分の内側を掘っていく感覚なのでしょうか?
「掘る」というよりも、「出していく」。恥ずかしいとこ、情けないとこ、汚いとこも全部出すんだ! という気持ちで毎日全力で撮影しています。

――タイトルにちなんだ質問です。桐谷さんが考える「ヒーロー」とは?
ヒーローってきっと自分の中にいると思うんです。「こんな自分になりたい」というイメージがもう自分にとってのヒーロー像。自分が自分に拍手をしていたらもう、それはその時ヒーローになっていると思うんですよね。「あの人いいな」と思うのも、「あんなふうになれたらいいな」と思ってるということは、自分の中にヒーローを求めているということだと思うんです。だから自分の「こうなりたい」「こうありたい」と思ったそこにヒーローがいる。この『いつか、ヒーロー』という題名が面白いですよね。「ヒーローになりたい」と思った時点で、ヒーローへの道がそこにある。だから今はまだヒーローじゃなくても、その道の始まりもヒーローの一部なんだと思います。

(後編に続く)
ドラマ『いつか、ヒーロー』は、ABC・テレビ朝日系列で毎週日曜よる10時15分放送。放送終了後、TVer、ABEMAで見逃し配信。U-NEXT、Prime Videoで全話配信。
取材・文/須永貴子
メイク/石崎達也 スタイリスト/岡井雄介
