教師の“働き方改革”は進んでいるのか?日々の授業に児童のトラブル対応、帰宅後も“持ち帰り仕事”に追われる小学校の先生の超多忙な1日に密着!
公立学校の教員採用試験を受験した人の数が、ここ10年間、右肩下がりに減り続けています。志願者の減少に伴い、文科省は待遇改善に乗り出していますが、現場の教員の働き方改革は進んでいるのでしょうか。ある小学校の先生の1日に密着しました。
京都市伏見区にある市立醍醐西小学校に朝、車で出勤してきたのは教師歴22年の宇都木武さん(49)。さっそく向かったのは近くの通学路。登校してくる児童の見守りです。
宇都木さんは、醍醐西小の20人ほどいる教職員のひとりで教務主任。時間割の管理や生徒指導などを担当しています。学級担任をしていないので、午前中はおもにデスクワーク。職員室で書類を作るということでしたが…。
始業まもなく、3年生のクラスで子ども同士のトラブルがあり、その対応に向かった担任のフォローに入るため児童のいる教室へ。これが終わると、自分が受け持つ授業。宇都木さんは1年生の体育と5年生の算数を担当しています。
午前中の授業は算数。問題の解き方をすぐに教えるのでなく、グループで協力して考えさせます。「子どもたちが一所懸命考えて、わかったときの笑顔がなんともいえない」と話す宇都木さんは、仕事の中で「授業が一番楽しい」といいます。
【動画】大学卒業後は企業に就職するも、通信制大学で教員免許を取り、教師になった宇都木さん。小学生のときの担任の先生への憧れが大きかったそう。
その後も職員室にやってくる児童に対応したり、支援学級のイベントに参加したりと大忙し。なかなかデスクワークに戻れません。そうこうしているうちにもうお昼。ようやくデスクで報告書を作りながら、10分で昼食をすませます。
午後から1年生の体育の授業をこなし、放課後は職員会議。週1回ペースで行われる会議の準備も教務主任の仕事です。開始から1時間後、まだ会議中というのに学校を飛び出していく宇都木さん。一体、何があったのでしょう?
近くの公園で、火遊びをしている子どもがいるとの連絡があったのです。宇都木さんは、最初に火遊びを始めた中学生と、興味本位で近づいた6年生の児童に注意を。火の危険性をしっかりと指導し、会議に戻りました。
会議を終えて校舎内の施錠を済ませると、時刻は夕方5時すぎ。今日はほとんど手を着けられなかったデスクワークに取りかかります。
調査によると、京都市の一般的な勤務時間は午前8時半から午後5時で、小学校の教師の時間外労働は平均で月34時間ほど。働き方改革の効果もあり、2019年度に比べると8時間ほど減少したそう。宇都木さんの今年1月の時間外労働は約33時間で、平均的といえそうですが…。
宇都木さんが学校を後にしたのは午後7時すぎ。8時前に帰宅し、夕食を終えると、学校でできなかった翌日の授業の準備をこなします。持ち帰りの仕事があるのはほぼ毎日。しかし、一般的に公表されている残業時間には含まれていません。
公立学校の教師の残業代は“教職調整額”という仕組みで、何時間働いても支給されるのは基本給のわずか4%。こうしたことが志願者減少の背景にあるとみた文部科学省は待遇を見直し、昨年12月、教職調整額を10%まで段階的に引き上げる方針を決めました。
これで初任給のベースアップも実現するとあり、これから教員を目指す人や若手の教師には「魅力のひとつにはなる」と宇都木さん。しかし、現場の教師たちは「お金がいくら増えたかも考えられない」ほど「日々の業務に必死」とも…。
教師を志す人を増やすため、待遇面の改善に加え、子どもたちの喜びや成長を「一番近くで見ることができる」仕事の魅力を広く伝えたいと語る宇都木さん。自身にとって“教師”は「未来につながる仕事。そしてつなげなくちゃいけない仕事」と力強く話してくれました。
教師の“働き方改革”の実態は、3月7日(金)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
