京都・金閣寺の近くに崩れ落ちそうな“巨大廃屋群”!住民たちは撤去を望むも所有者の親族は「どうなろうが知らない」

京都の世界遺産・金閣寺にほど近い山の斜面に、違法に建てられた複数の「廃屋」が放置されています。今にも崩れ落ちそうな建物に、不安な日々を過ごす付近の住民たち。それでもなぜ放置は続いているのか?その背景に迫ります。

京都市の中心部から車でおよそ30分、北区の原谷地区は周囲を山に囲まれた閑静な住宅地。金閣寺から西へおよそ1キロの場所に問題の廃屋群があります。

近くに住む吉田典夫さん(83)の案内で山に向かって少し進むと、見えてきたのは木々に囲まれた巨大な廃屋。高さは20メートルほどあり、錆だらけのトタンの外壁は大量のツタに覆われています。上空から見ると、この建物の上に積み重なるようにのしかかる別の建物が。窓ガラスは割れ、今にも崩れそうな状態です。

さらに山を登っていくと、全体が朽ちて傾き、斜面を滑り落ちてしまいそうな危険な状態の建物も。取材の結果、10軒以上の廃屋を確認することができました。

そんな廃屋群の真下には、人が暮らしている住宅が。おととしの台風では倒壊した廃屋からトタン板が飛び、住宅の屋根にぶつかるなどの被害が出たといいます。加えてこの付近は、崖崩れや土石流の恐れがある土砂災害警戒区域。「土砂崩れがあるとそのへん(廃屋群)が全部落ちてくるのでは」と住民たちは不安を感じています。

そんな危険な廃屋群が、なぜここにあるのでしょうか?自然豊かで子どもたちの遊び場だったというこのエリア。京都市の許可を得なければ家などを建てることができない市街化調整区域です。しかし、京都市や住民によると1970年代から複数の土地の所有者たちが建物を無許可で建築。倉庫や産業廃棄物の保管場所として使用していたといいます。

それらが今、廃屋となったことで、倒壊の危険などに加えて新たな問題も。家電や自動車、建材などが付近に不法投棄され、ごみが散乱するようになったのです。そんな現状を打破しようと、吉田さんは去年5月、地域住民らおよそ50人と「原谷の環境をまもる会」を立ち上げ。大量のごみを2年かけて撤去しました。

【動画】廃屋群には不法に捨てられた冷蔵庫やナンバープレートが外された車、放置されたショベルカーも!

さらに地元の住民たちへの働きかけがあり、去年11月には自治会などが京都市に対し、廃屋の解体とごみの撤去を求める要望書を提出。これを受け、市は土地所有者に解体を求めて接触を図っているといいますが、解体はなぜか遅々として進みません。

実は、廃屋を所有している人の多くはすでに死亡。京都市は今、相続人を調査している段階にあるため、早急な解決が難しいというのです。しかし、現在の所有者がわかっている廃屋もあり、そのうちの1軒を相続した男性が電話取材に応じました。

廃屋は、父親が倉庫として使っていたもので「(住民を)不安にさせているのは申し訳ない」と責任を感じている様子の男性。業者に頼むと多額の費用がかかるため、仕事の合間を縫って自身で解体を進めるそうです。

また、別の廃屋を所有する女性の親族が現地を訪れていたため、取材班は話を聞くことに。女性は亡くなった夫から相続しましたが、生前、この建物については何も知らされていなかったそうで、突然、「知らない家」を撤去しろと市から指導され、困り果てているとのこと。

そして、自身の生活も苦しいなかで100万円以上の撤去費用をまかなうことは難しいといい、「ここ(原谷地区)がどうなろうが知らない。無責任かもしれまいが、金銭的にどうしようもない」と。撤去の意志は今のところないようです。

こうした状況の中、「普通の山に戻してほしいのが(住民の)第一の願い」と話す吉田さんは、行政には大きな問題を解決に導く“住民と廃屋所有者の架け橋”になってもらいたいと願っています。

京都の巨大廃屋群が抱える問題は、2月18日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

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