「定額働かせ放題」アマゾン宅配ドライバーの過酷な労働現場に密着! 膨大な荷物量、相次ぐ再配達に疲弊

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物流業界で今年、労働時間の規制に踏み切ったいわゆる「2024年問題」。長距離ドライバーらの労働環境が見直された一方、私たちに直接荷物を届けてくれる宅配ドライバーは疲弊しています。師走のある1日、取材班が配達に同行し、その実態を取材しました。

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午前8時半、荷室にいっぱいの荷物を積んだ軽ワゴン車で現れたのは、ネット通販大手「アマゾン」の荷物を配達するAさん(50)。朝、配送センターで積み込んだ荷物は99個。これはAさんが午前中に配達する「午前便」で、夕方からの「午後便」でもさらに同じくらいの量を配るといいます。

担当は兵庫県の南部エリア。配送センターから車で40分ほどかかる郊外の住宅地に向かいます。配達ルートはすべてアマゾン独自のアプリが管理。自動音声のナビゲーションに従い、目的地まで車を走らせます。

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最初の荷物は「置き配指定」。在宅か不在かにかかわらず、依頼者が指定した場所に商品を届けるサービスです。Aさんは指定されている「玄関前」に荷物を置いて立ち去ります。

【動画】「置き配」する玄関が道に面した家の場合、個人情報が見えないように、荷札を反対に向けて置くなどの細やかな配慮も。

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続いて次の目的地へ。アプリで管理されているのは配達ルートだけでなく、配達のペースも1時間で30個と決まっています。つまり、配達にかけられる時間は「1個あたり2分」。配達に伴うすべての作業や移動時間なども含まれているため、少しのタイムロスも許されません。

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Aさんはアマゾンの下請け運送会社と請負契約を交わす個人事業主。かつては配った個数で報酬がもらえ、配れば配るほど収入は増えましたが、日当契約となった今は「定額働かせ放題」とAさん。1日の報酬は固定額なのに、任される荷物は「どんどん増える」というのです。

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そんなドライバーの報酬の妥当性について、「アマゾンジャパン」に質問を投げかけた取材班。すると「配送に従事する方々の雇用・契約、稼働管理、支払いは、委託先配送業者にて責任をもって行っていただいております」との答えが返ってきました。

さて、ここまで順調に配達をこなしていたAさんですが、思わぬ壁が。荷物を対面で受け渡しをする「置き配不可」の家に向かうも、住人がいないのです。インターホンや電話で呼びかけましたが応答がないため、不在票を投函して荷物を持ち帰ります。

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Aさんら宅配ドライバーが恐れている「初日配完率」という数字があります。それは、「初日」のタイミングで配達が完了した割合を数値化したもので、再配達が必要な「不在」が多ければ数字は下がることに。Aさんによれば、この数字が低いドライバーは出勤日数を減らされるなどのペナルティーが課され、収入も減ってしまうといいます。

その後の配達でも不在が相次ぎ、Aさんは午前便だけで5件もの「未配(未配達)」を抱えてしまいました。

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そして午後4時、配送センターで午後便の荷物をピックアップしてきたAさん。当初は100個以上の荷物を引き受ける予定でしたが、20個ほど間引いてもらい、82個を担当することになりました。

受け持ち地域まで車を走らせ、差しかかったのはなんと「地図に載ってない道」。左右に迫る木々の枝が窓に当たるほどの狭い道をすり抜けます。まもなく日が暮れて暗くなると、配達する家の表札を確認するのも困難に。午後8時、ようやくすべての配達が終わりました。

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そんなAさんに「いま思うこと」を聞くと、時間指定をしておきながら家にいないなど、利用者の「モラル」の問題を指摘。「ドライバーも人間。感情持ってます」「便利なものを使うんやったら、それなりにモラルがなかったら…」と胸のうちを明かしてくれました。

宅配ドライバーの過酷な労働環境は、12月24日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。

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