秋本番、京都で再燃するオーバーツリーズム 一方通行規制で遠くなるバス停へ足の弱い高齢者を送るナイスアイデアとは?

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秋本番を迎えた京都では、インバウンドの回復で混雑が激しさを増しています。オーバーツーリズムの再燃が指摘されるなか、観光客の安全と地元の住民たちの暮らしを守るため、対策を練る人々を取材しました。

京都市の中心部で400年の歴史を持つ“京の台所”こと「錦市場」。地元の人にとどまらず、多くの観光客が訪れる人気の観光スポットです。新型コロナウイルスの影響で一時は閑散としていましたが、徐々に人が戻り、混雑が再び日常の光景となりました。

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混雑とともに雑踏事故への懸念が高まってきたと話すのは、商店街の総務理事・宇津康之さん。韓国では一昨年、繁華街の「梨泰院」で大勢の若者たちが折り重なるように倒れる雑踏事故が起こり、159人が死亡しています。

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客の安全を守るため、商店街では今年から新たな対策を始めました。京都府や市の支援を受け、地元企業が開発した「人流センサー」を5カ所に設置し、人の量や移動の向きなどを調査。集めたデータをもとに警備員の配置を行い、人の流れがスムーズになるよう誘導する取り組みをスタートさせたのです。

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歩きやすくなったことで、混雑時も客が買い物を楽しめる状況が少しずつ整いつつあります。宇津さんは「これからも“雑踏”ではなく“にぎわい”になる、安心で安全、快適な商店街に」と手応えをのぞかせます。

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一方、安全対策で住民の生活に影響が出た地域も。京都観光の定番、嵐山のメインストリート「長辻通り」は、紅葉シーズンが近づくと芋の子を洗うような混雑ぶり。いつ事故が起きてもおかしくない場面があちこちで見られるようになってきました。

【動画】観光客が車道にはみ出してきたり、2台のバスがギリギリのところですれ違ったりと、ひやりとするシーンも。

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こうした状況を受け、市や警察、地元の代表などは昨年、土日限定の長辻通の北側一方通行の規制を、秋の紅葉シーズンに限って平日にも拡大。今年も実施を決めましたが、地元商店街の会長を務める石川恵介さんのもとに、デメリットを訴える住民の声が多く寄せられました。

長辻通が北側の一方通行になると、南行きの路線バスは別の道を通ります。そのため住民は、少し離れた丸太町通のバス停まで歩いて向かいますが、足の弱い高齢者にはこれが負担になるのです。

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そこで、商店街や地域の代表などが話し合って出したアイデアが、地域住民専用の「乗合タクシー」。民間のジャンボタクシーを借り上げ、一方通行になる期間の日中に運行。費用は市の補助金と地元の商店街などで負担するため、住民は無料で利用できます。

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タクシーが巡るのは、遠くなったバス停だけではなく、付近のバス停やJRの駅などにも立ち寄る20分ほどのルート。運行初日、さっそく利用したのは渡月橋の近くに住む75歳の男性。JRの駅まで10分足らずで到着し、「こんな便利なものはない」と大満足です。

石川さんによれば、最初の1週間では1日平均15人ほどの住民が乗合タクシーを利用。いずれも好意的な反応が寄せられたといいます。観光地ではあまり例がない取り組みですが、嵐山では地域の代表や商店街、市などが普段から課題を話し合う場を持っていたことで実現につながりました。

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そこに暮らす人の日々の営みを眺め、楽しむのも“観光”の大きな魅力。こんなところにはいられないと住民が出て行くような街は「観光地として成立しない」と石川さん。「地域住民の方に少しでも寄り添えることができないか、今後もいろんなことを考えていかなければ」とこれからも模索を続けます。

京都の“オーバーツーリズム”への取り組みは11月29日(金)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。

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