死刑囚の息子「事件に束縛され続ける」 和歌山カレー毒物混入事件から26年、犯罪者の家族の苦悩

1998年7月25日、和歌山市園部で起こった「和歌山カレー毒物混入事件」。事件から26年、止むことのないバッシングに苦しんできた“犯罪者の家族”の苦悩に迫ります。

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夏祭りで住民が調理したカレーを食べて67人が急性ヒ素中毒になり、うち4人が死亡した和歌山カレー毒物混入事件。会場の近くに住む林眞須美死刑囚に疑いが向けられ、家族の日常は一変しました。

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「常に林家の周りにマスコミがいて、学校も行けなくなって」と当時を振り返るのは、現在は30代になった眞須美死刑囚の長男・浩次さん(仮名)。友だちも「お母さんから林くんと遊んじゃダメって言われた」と離れていきました。

そして事件発生から約3カ月後の10月4日、両親が逮捕。父の健治さんは保険金詐欺など、母の眞須美死刑囚は殺人、保険金詐欺などの罪に問われました。

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裁判では、ヒ素を入れた証拠や犯行動機は明らかにならなかったものの、事件に使われたヒ素が林家の自宅周辺にあったヒ素と「同一である可能性が高い」、住民などの証言から「ヒ素を入れたのは林眞須美死刑囚以外には考えられない」とされ、死刑が確定。しかし眞須美死刑囚は、26年間一貫して無罪を主張しています。

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林家には4人の子どもがいました。浩次さんと3人の姉妹です。両親の逮捕後、きょうだいは児童養護施設に入所。2000年2月には自宅が放火され、帰る場所を失いました。

施設を出たあとも生活は困難を極めました。両親のことを隠していても、いつしか素性が知られてしまいます。仕事を転々とし、恋人ができても破局になり…。成人した姉妹たちは「事件から距離を置きたい」と離れていき、きょうだいは散り散りになりました。

【動画】姉妹たちとは「もう10年以上会っていない」と浩次さん。

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そして3年前、浩次さんに悲しい知らせがもたらされました。姉が関西空港の連絡橋から身を投げたのです。父親と警察に向かいましたが、姉とは10年以上連絡を取っていなかったため、遺体の身元確認をさせてもらえませんでした。

現在、関西のとある街に暮らす浩次さん。26年が経った今も「和歌山カレー毒物混入事件に束縛され続ける」人生を送る彼に関心を持ったひとりの映画監督が、ドキュメンタリー映画を作りました。それが、8月3日から公開の映画『マミー』です。

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映画の公開を前に、トークイベントに参加するなど自らの思いを積極的に発信する浩次さん。その一方で問題が起きていました。ネット上に本名がさらされるなど、日常生活を脅かされるような嫌がらせを受けるようになったのです。

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そんな7月9日未明、浩次さんはXに投稿し、映画の公開中止を申し入れたいと発表。その後、大阪拘置所を訪れ、母の眞須美死刑囚に面会。監督などと話し合った結果、映画は映像の一部を加工して上映されることになりました。

その公開の直前、現在は79歳になった父・健治さんを訪ねた浩次さん。「和歌山カレー毒物混入事件はやってない」と主張する健治さんですが、なかなか受け入れてもらえず、「何を言ってもダメや」と諦めの気持ちもあるといいます。

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一方、事件をいま一度検証する映画の公開を控え、「うやむやなものをうやむやに終わらせていくことはさせたくない」と思いを語る浩次さん。林眞須美死刑囚は現在、3回目の再審請求を出しています。

犯罪者の家族の苦悩は7月25日(木)放送の『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。

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