ヒナコ(武田玲奈)の魅せる強奪、ひりつくアクションシーン、そしてちりばめられた伏線の行方は…。ラストまで痛快略奪エンターテインメントを貫いた『あなたの恋人、強奪します。』(最終話)
圧巻のラストシーンだった。実は、クライマックスに向けて加速度を増しながら新たなキャラや伏線が張り巡らされていく展開に「最終話で収拾がつくのか…」という思いもあったのだが、そんな心配も“強奪”で鮮やかに裏切ってくれた全10話だった。
ここで第1話からざっくりとだが振り返ってみたい。強奪率100%を誇る“泥棒猫”こと名探偵のヒナコ(武田玲奈)とその頼れる相棒・陽介(渡邊圭祐)。その二人の元へと依頼者としてやってきた梨沙(渡邉美穂)がオフィスCATに参加し、3人でのミッションに挑む第1話~第3話をイントロダクションに、“声にならない救い”を求める女性たちを“強奪”という手段で救っていく中で、ヒナコの恩師で4年前に姿を消してしまったリンカ(竹内由恵)の消息の謎と、CATを悪質ハニートラップ集団として嗅ぎまわる週刊誌記者・古宮(村田秀亮)の存在。第1話に登場した梨沙の元カレ・英之(駒木根葵汰)をも伏線にしながら、先の読めないファイナルミッションを迎えていく。
最終話では、陽介の彼女・楓(尾碕真花)が登場。自殺願望のある楓は、優しすぎる恋人・陽介を「私といると、彼のためにならない」と、ヒナコと梨沙に強奪を依頼。恩師であるリンカの行方を懸命に追いながらも、相棒である陽介の強奪を仕掛けるヒナコだったが、楓から強奪キャンセルの連絡が入り――。
恩師と相棒の恋人を救うミッションに突き進みながらも、陽介に対して時折のぞかせる“ヒナコの弱さ”。クールに包みこんだヒナコの秘めた本心と機微を大胆さと繊細さを交えて演じ切った武田の演技に、筆者は目を奪われたのだが。最終話、ヒナコについ強奪されそうになった視聴者の方もいらっしゃったのでは?
さて、物語は自殺願望のある楓に、カワウソと呼ばれている怪しい謎の男・川田(山本浩司)が接触、楓をめぐってCATとカワウソの“最終対決”が描かれていく。川田のおぞましさとともに、ヒナコと陽介の絶妙に変化した関係性が、楓を救い出すシーンをさらにひりつかせていく。そして、これまでのストーリーをプロローグにしてしまうラストシーンまで用意! 最終話を終えてなお、オフィスCATの活躍を心待ちにしている筆者がいる。
全3巻にわたる短編エピソードで構成された永嶋恵美氏による原作は、2010年に徳間書店より初版刊行(第1話となる『泥棒猫貸します』の初出は2005年)。発表当時から20年の時を経て、時代背景も移り変わったが、本作で描かれている男女関係のもつれや人間ドラマは現代に重なる部分はとても多く、テーマ性やストーリーテリングは今読んでも新鮮だ。
原作のエッセンスを巧みに盛り込みながら、ドラマオリジナルの展開で、原作の魅力を現代によみがえらせた本作。あらためて、第1話から見返してみたいと感じる骨太な作品だった。
ヒナコ(武田玲奈)の魅せる強奪、ひりつくアクションシーン、そしてちりばめられた伏線の行方は…。ラストまで痛快略奪エンターテインメントを貫いた『あなたの恋人、強奪します。』は、TVer・ABEMAで無料見逃し配信中。
<文・ニノマエヒビキ>