“ひきこもり”39歳息子の生活を年金で支える母親、孤独死問題も… 9年にわたるひきこもり生活から抜け出した男性が語る当時の状況と現在の姿
内閣府の調査による最新の推計では、15〜64歳で「ひきこもり」の状態にある人はおよそ146万人。原因はどこにあるのか?どうすれば抜け出せるのか?深刻化する「ひきこもり問題」の実態に迫りました。
大阪府内に住む中谷信哉さん(34)は、10代と20代のときに合わせて9年のひきこもりを経験。1日のうち16時間はネットゲームとアニメ、あとは寝るだけの生活を送っていたそのころ、「(自分は)何で生きてるのかな」と悶々と悩むなど精神的にも追い詰められていたといいます。
小学校のころは活発な少年だった信哉さん。友だちも多く、勉強もできる優等生でしたが、中学に入ると成績が低下。そんな自分を友だちに見せたくないとの思いが引き金となり、中2の2学期からひきこもり始めました。
ストレスで髪を抜いてしまうため、髪型は丸刈り。入浴は週1回、歯磨きは年に1回。暴飲暴食をくり返し、体重は一時、114キロまでになりました。心配する両親の助言も拒絶し、物を投げつけることも。
そんな日々が続き、高校教師だった父親は、不登校生徒と向き合った経験から、息子が危険な状況にあると判断。“最悪の事態”を避けるため、家の中に信哉さんの居場所を与えてただ「見守る」ことを決めました。その根底にあったのは、「とにかく生きて」という祈るような思いでした。
近年、ひきこもり状態にある人は増える傾向にあり、15〜39歳の若い層だけでなく、40〜64歳の中高年層でも増加。長くひきこもる子どもを抱える高齢の親も少なくありません。ひきこもり問題にくわしい大阪経済大学の髙井逸史教授は「親が先亡くなっていきますから、孤独死とかそういった問題も出てくるのでは」と懸念を示します。
【動画】親が参加する座談会も取材。20代の子どもの就労問題に悩む父親や、26年ひきこもる46歳の息子を抱える76歳の母親など事情はさまざまです。
大阪府内で暮らす日花睦子さん(69)の息子は39歳。引きこもり状態が20年続いています。高校まではほとんど休まず学校に行っていましたが、専門学生のとき、突然行かなくなったといいます。
現在は睦子さんの年金で生活していますが、息子が1人になっても食べていけるよう、外に出る必要のない内職を試したこともありました。しかし、2人で週6日、8時間のペースで働いても賃金は月2万円程度。息子の将来を案じる睦子さんの不安は尽きません。
長期化が問題となっているひきこもり。どうすれば抜け出せるのでしょうか?
9年のひきこもりを経験した前出の信哉さんは、現在、病院に勤務。精神保健福祉士の資格を取得し、カウンセリングのほか、ひきこもりやコミュニケーションが苦手な人を対象にした“居場所”作りの活動に携わっています。
今年2月には結婚し、家庭も築いた信哉さん。ひきこもりの生活から抜け出したきっかけをたずねてみると、ひきこもり始めてから5年ほどが経ったころに抱いたある「感情」だったと語り…。
ひきこもり問題の実態は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!