日本最古の学生寮 京都大学「吉田寮」 “敬語は不要”“みんなでごはん”“自分で決めるという自由” どうなる立ち退き訴訟 大学「話し合いの余地はない」
京都市左京区、京都大学の吉田キャンパスにある国内最古の学生寮「吉田寮」。今も多くの学生が暮らしていますが、大学が入寮を認めていないため、キャンパスの案内板にその名前はありません。学生たちが大学からの度重なる圧力と闘い、守り抜いてきた吉田寮の自治の精神に迫ります。
吉田寮の「現棟」は、今から100年以上前の1913年に建てられた日本で最も古い学生寮です。寮費は月2500円。管理人はおらず、学生たちが自ら運営する棟内には、寮生の居室に加え、ゲームをする部屋や麻雀部屋など多種多様な部屋が並んでいます。
かつては事務員がいた“事務室”の本棚には、もはや誰が置いていったものかわからないマンガがギッシリ。入口を入ってすぐの場所には“こたつ”が置かれ、そこで読書にふける寮生も。学生たちが思い思いの時間を過ごしています。
2015年に建てられた「新棟」をのぞいてみると、厨房でにぎやかに料理を作る寮生たちの姿が。中国からの留学生が腕を振るう故郷の料理を囲み、しばしばパーティーを開いているそうです。
国籍も性別もバラバラ。年齢も違いますが、相手が年上でも敬語は使いません。上から押しつけられたルールに従うのではなく、どんな問題も“話し合い”で解決してきた寮生たち。互いの関係に壁を作る敬語は、対話を妨げてしまうからというのがその理由です。
【動画】明治時代の学生寄宿舎の木材が再利用されるなど、100年超の歴史は建物のあちこちに
「自分たちのことは自分たちで決める」。そんな寮生たちの“自治”の精神を大切にする吉田寮の歴史は、大学との対立の歴史でもあります。1980年代には管理を強めようとした大学が廃寮を決めたことに寮生が猛反発。交渉の末、当時あった「西寮」の撤去などを条件に立ち退きを免れたこともありました。
そして2017年、建物の老朽化を理由に大学が寮生に退去を求めました。現棟の補修を寮生が大学側に提案し、協議していた最中の通達。さらに寮生のうち40人あまりに立ち退きを求める訴訟も起こされることに。訴えられた寮生の1人、大隈さんは「ひどいというか、ここまで学生に対してするのか」とショックを受けたといいます。
訴訟は5年近く続き、今年2月に判決が。京都地裁は、現在も寮に住む寮生のほとんど(17人中14人)は退去する必要はないと判断しました。実質、寮生たちの勝訴でしたが、大学側が控訴。訴訟は今も続いています。
京都大学は、ABCテレビの取材に対して、以下のようにコメントしています。
「築後100年以上を経過した吉田寮現棟は
耐震性を著しく欠き 大地震が発生した場合には
倒壊あるいは大破のおそれがあります
吉田寮現棟に学生を居住させ続けることは
もはや許されず(中略)速やかに退居することを求めます」
3月26日、京都大学の卒業式が行われました。吉田寮から巣立つ卒業生たち、そして残る学生たち…。自分たちの力で“大切な場所”を守った経験を通し、それぞれの心に深く刻まれた思いとは?
国内最古の学生寮「吉田寮」は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!