燃料はお客さんの「ありがとう」関西イチの豪雪地帯を走る移動スーパー奮闘記!
滋賀県長浜市の北部にある余呉町は、近畿以西で唯一、国の特別豪雪地帯に指定されている町。そんな関西イチ雪深いエリアで、買い物が困難な人たちを支える移動スーパーの奮闘ぶりを追いました。
市街地の国道沿いにあるスーパーマーケット「コープながはま店」。朝、商品を詰め込んだ特別仕様の軽自動車が店を出発しました。この車が移動スーパー「あったか便」。ドライバー兼販売員の中上健二さん(62)は「コープしが」一筋40年のシニアスタッフ。市内の北部地域を週5日に分けて回っています。
30分も車を走らせると、あたりは一面の銀世界に。まもなく到着した余呉町中河内地区は市内で最も雪深い地域です。現在16世帯が暮らすこの集落から、買い物ができる店までは車で25分ほど。雪が降ると路面も凍り、ますます出かけにくくなってしまいます。
もうひとつ、中河内の人々が「あったか便」を心待ちにする理由があります。住民はほとんどが65歳以上。雪の多い少ないにかかわらず、店まで出かけることが難しい高齢者にとって、週に一度来てくれる「あったか便」は貴重な買い物手段なのです。
便利なだけではありません。顔を合わせた住民同士で会話も弾み、自然と生まれるコミュニケーション。実際に商品を見て選べる楽しさは移動スーパーならでは。訪れるお客さんは「来てくれるのが楽しみ」と口をそろえます。
そんなお客さんたちと軽妙なやりとりを交わしながら、要望を聞き取って品ぞろえに反映させるなど、車1台分のマネージメントをほぼ任されている中上さん。手慣れた様子ですが、移動販売の経験はまだ10か月ほどです。
もともとこの地域では、住民でつくる団体などが運営する移動販売車がおよそ10年にわたって活躍していました。しかし、担い手不足や車両の老朽化などの問題で、継続が困難に。そこで手を挙げたのが「コープしが」。買い物がしづらい住民をサポートしてきた前任の思いを受け継ぐ「あったか便」が誕生したのです。
【動画】2月下旬からは、市内南部の高齢者が多い地域を回る「あったか便」2号車も始動
商品を売る以外にも移動スーパーには重要な役割があります。それは地域の“見守り”役。中上さんは何気ない会話からお客さんの生活の変化を探り、いつも買い物に来る人の姿が見えなければ、家まで声をかけに行きます。
「おじいちゃんやおばあちゃんのニコッてした顔を見ると癒されます」と中上さん。担い手不足に燃料の高騰。逆風吹き荒れる厳しい状況ですが、がんばることができる原動力は、お客さんの「“ありがとう”という言葉」と笑顔で話してくれました。
「ありがとう」を燃料に今日も走る「あったか便」の奮闘は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜 午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!