阪急うめだ本店の“名物”巨大ショーウィンドーに“日本の自然の美しさ”描く大絵巻が登場 製作舞台裏に密着!
1972年に誕生した阪急うめだ本店のコンコースウィンドー。バレンタインやクリスマスなど季節に合わせて表情を変えてきました。この秋、「自然の美しさ」を日本の伝統工芸で表現した展示が話題に。この製作を手がけた職人たちの奮闘に密着しました。
9月24日から10月7日までの2週間、コンコースウィンドーを彩った展示のテーマは「ジャパンアンドミー」。幅6m、高さ4mの巨大ウィンドー7面を使い、伝統的な月見の風習や秋の静けさを表現し、日本の自然の美しさを大絵巻として描き出します。
担当するのは、阪急百貨店に7年前に入社したデザイナーの國分寛典さん(41)。「本物」にこだわる國分さんは今回、岐阜県高山市の左官職人・挾土秀平さん(63)とタッグを組みました。
熟練の職人技で現代アートも手がける挾土さん。過去には別の百貨店のコンコースウィンドーも製作したことがありますが、「大きさも規模もケタ外れにデカい」阪急うめだ本店のウィンドーの持つ存在感やパワーは、見る人にとっても作り手にとっても「日本一」と挾土さん。かつてない挑戦に腕が鳴ります。
【動画】挾土さんはこれまでにNHK大河ドラマの題字や日本航空のファーストクラスラウンジなどを担当。数々の独創的な作品を生み出してきました。
作品の中で、挾土さんが特に思い入れがあるのが、彼岸花の丘で少女のマネキンが月を見上げている場面。夜空に白く浮かび上がる月は、挾土さんが和紙で作りました。ウィンドーを見る人それぞれが少女の思いに自分の胸のうちを重ね、作品の世界に同化できるような展示にしたいと挾土さんは目を輝かせます。
とはいえ、これまで手がけてきたコンコースウィンドーの中でもひときわ巨大。しかも、作品の搬入や装飾にかけられる時間は2晩だけとスケジュールはタイト。挾土さんは「バカでかいものと戦っている感じ」「重圧と不安で情緒不安定になりかけてるね」と大きなプレッシャーも感じていました。
作品のお披露目を20日後に控えた9月4日、製作が進む挾土さんの工房に、デザイナーの國分さんが打ち合わせにやって来ました。ベニヤ板で作った実寸大のウィンドーで作業が行われるなか、挾土さんチームが手間取っていたのがあの“彼岸花の丘”です。
ペーパークラフトで1本1本手作りする彼岸花。すでに300本ほど作っていましたが、丘に咲き乱れている様子を表現するには数がまだ足りません。これが期日までに作れるのか心配なことや、イメージに合う少女のマネキンがまだ見つかっていないこと、これだけ大きな作品をどのようにしてウィンドー内に入れるのか?などさまざま懸念点が。そのひとつひとつを國分さんが確認し、搬入日までにクリアにしていきます。
そして、お披露目まであと2日に迫った9月22日、阪急うめだ本店が閉店時間を迎えると、すぐさま搬入作業が始まりました。作品の中で最も大きいのが、少女が見上げる月がある背景。幅約5m、高さは約2.5mと巨大なうえ、相当な重量があります。
細心の注意を払ってトラックから降ろし、運ぶのは十数人がかかり。壁に作品が触れないよう、慎重に慎重を重ね、30分かけてようやくウィンドーの中に運び入れることができました。倒れないようワイヤーで吊すなど作業を続け、翌日の開店時間までになんとか搬入は完了。
そして作業2日目、お披露目までいよいよ8時間です。ようやく見つかったイメージ通りの少女のマネキンの足下が、赤やオレンジの彼岸花で埋め尽くされていきます。打ち合わせの日の後、急ピッチで作った彼岸花は420本に。圧巻の美しさです。
夜が明け、辺りが明るくなったころ、ウィンドーを飾る一大絵巻がついに完成。満足げな表情の挾土さんは、1日30万人が通るこの場所に自らの作品を展示することは「自分を試す最大のチャンス」と。行き交う人の反応を確かめに「こっそり」見に来たいと話してくれました。
阪急うめだ本店のコンコースウィンドーを飾るアート製作の舞台裏は、9月24日(水)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
