争う国々もみんな同じリングの中に――紛争が続くウクライナ、パレスチナも参加 大阪・関西万博から考える“平和”
第二次世界大戦の終戦から80年の今年、大阪・夢洲で開催されている「大阪・関西万博」。世界の158の国と地域が参加する万博で行われている“平和”への取り組みを取材しました。
8月12日、去年、ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の金本弘代表理事(30)が万博会場で講演に立ちました。生後9か月のとき、広島で被爆した金本さんが伝えたいのは、核兵器の恐ろしさです。
広島と長崎に投下され、たたった2発で21万人もの命を奪った原爆。「被害を受けたのはごくごく普通の市民」「(核兵器は)人間として絶対認めることができない絶対悪の兵器だと思っています」と訴える金本さん。
また会場内には、広島県などが期間限定で特設ブースを設け、被爆の瞬間をVRゴーグルで体験できる展示などを出展。さらに復興を遂げた過程や、その先の街の魅力を知ってもらおうと、展示は明るくポップに彩られました。
訪れたイタリア人観光客は「悲観的にではなく、ポジティブな側面に焦点を当てた歴史の伝え方が興味深い」と感想を。そして80年前の広島のような悲劇を「二度と繰り返してはならない」ことを学んだと話します。
広島が世界に訴える「二度と繰り返さない」というメッセージとは裏腹に、今、争いの真っ只中にいる国や地域は少なくありません。
共同館の一角にパビリオンを出展しているウクライナは、8月5日のナショナルデーに初来日のシビハ外相のほか、ゼレンスキー大統領の妻・オレナ夫人らが来場。講演では、ウクライナへの侵攻を続けるロシアへの批判を強調しました。
そんななか、万博では新たな支援の形も生まれています。同じナショナルデーには、ウクライナ人女性らが登壇して戦時下の“芸術”のあり方について話し合う講演会も開催に。会場となったのは、ウクライナへの支援を表明しているベルギーのパビリオンです。
【動画】ベルギーのほか、ルーマニアやオランダ、チェコなど、ヨーロッパ各国がイベントを開いたり、ウクライナの国旗を掲げたりすることで、支援の姿勢を示しました。
イベントを主催したEUの担当者は、万博でのこのようなイベントや展示が、ウクライナの価値観や国の現状を伝える「助けになる」と説明。「尊厳、平和、そして家族のために戦っている人たちを、私たちは理解しなくてはなりません」と訴えます。
ウクライナと同じく、戦火にさらされながらも万博に出展しているのがパレスチナです。イスラエルの攻撃により、あらゆるインフラが破壊され、壊滅的な被害を受けているガザ地区。その紛争の影響は万博にも…。
パレスチナの展示物がパピリオンに並んだのは万博開幕から10日後のこと。イスラエルでの検問や制限が厳しくなり、輸出に時間がかかったとパレスチナ側は説明していますが、イスラエルは「関与していない」と否定しています。
しかし、パレスチナの美しい工芸品が並ぶパビリオンには、紛争を思わせるものはありません。「パレスチナは戦争だけではない」と訴えるのはパビリオンで責任者を務めるラファット・ライヤーンさん。豊かな文化があり、紛争前は年間数百万人の外国人観光客が訪れていたパレスチナに「再び足を運んでもらいたい」という特別な思いがあるのです。
争い、いがみ合う国々も万博の会場内では同じリングの中。被団協の金本さんは、混迷する世界情勢のなかで開かれる万博には大きな意義があると話します。
「相手国、敵国だって(会場内で)出会うかもわからん。しかし、そんなのを(万博が)全部包み込んでくれる」「実際来てみると、なんかパワーをもらう。(平和について)なんか考えなきゃいかんと」。それが世界の争いを鎮め、平和に導く力に繋がればと金本さんは願っているのです。
万博から考える“平和”は、8月13日(水)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
