「殺人者の汚名を晴らすまでは…」20年前の強盗殺人事件が再審請求へ! 今も刑務所に服役する受刑者の“無実”の訴えとは

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20年前に神戸で起きた強盗殺人事件で無期懲役判決を受け、無実を訴える受刑者が再審を請求。今も刑務所に服役する受刑者の訴えとは?

2005年10月18日、神戸市中央区のマンションの1階にあった質店で、経営者の男性(当時66)が頭部など少なくとも20カ所以上を鈍器で殴られて殺害され、現金1万650円が奪われました。

事件発生から1年10カ月後の2007年9月、強盗殺人の容疑で逮捕されたのは、当時、神戸市で電気工を営んでいた緒方秀彦受刑者(66)。無期懲役の判決を受け、現在刑務所に服役中です。

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逮捕に至った決め手は主に3つ。現場から緒方受刑者の足跡や指紋が見つかったこと。灰皿に残っていたたばこの吸い殻から緒方受刑者のDNAが検出されたこと。さらに、近所に住む男性が、事件直後とみられる時間帯に質屋の前で布に包んだ棒のような物を持った人物を目撃。これが緒方受刑者に似ていたと証言したことです。

しかし、緒方受刑者は一貫して無実を訴えています。そこで、ABCテレビが面会と手紙のやりとりを重ねて緒方受刑者を取材。事件にはまったく身に覚えがないと語る緒方受刑者が、有罪判決が確定した直後から考えていたこと。それは、裁判のやり直し=“再審”でした。

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そしてこのほど、当初から緒方受刑者の弁護人を務める戸谷嘉秀弁護士と、冤罪事件の救済を目指す「イノセンス・プロジェクト・ジャパン」の弁護士も加わった弁護団が、6月26日に大阪高裁に再審を請求することに。弁護団が一番の問題として挙げているのは、供述が事件から2年近くも後に録取されている点です。

「2年前のある日の出来事を、寸分違わず全部説明しろという方が無理」と戸谷弁護士。たしかに逮捕時、緒方受刑者は被害者のことをまったく覚えておらず、現場に残った証拠についても説明できませんでした。

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しかしその後、事件よりも前に電気工事の車で質店の前を通りかかった際、被害者から防犯カメラの設置について相談され、店内に入ったことを思い出した緒方受刑者。現場に足跡や指紋、たばこの吸い殻が残っていても矛盾はありません。

さらに弁護団は、「棒のようなものを持った男を見た」という目撃証言にも疑問を向けています。午後8時半ごろ、1.5メートルほど離れたところから「にらみつけるような目で、怖い顔」の男を見たという証言を検証すべく、弁護団はある実験を行いました。

それは、現場と同じような薄明かりのもとに証言と同じ格好をした人物を立たせ、当時と同じ条件で複数の実験参加者に目撃させるというもの。2週間後に参加者に聞くと、立っていた人物の特徴や写真を言い当てた割合は、わずか5%でした。

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【動画】20名の写真が載った“面割台帳”から目撃者が緒方受刑者の写真を選んだことが有罪の根拠のひとつ、その正確性を疑問視する指摘も。

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記憶や目撃証言などの認知心理学を研究し、再審請求に意見書を提出する厳島行雄教授も、夜間にわずか数秒目撃した人物の顔を2年後まで正確に覚えていられるのは「常識では考えられない」と指摘。この目撃証言は、1審の神戸地裁では採用されず、無罪判決が出ているのですが、2審の大阪高裁では「信用できる」と真逆の判断で採用に。逆転有罪判決が言い渡されたのです。

この判決を受け、「頭をどつかれるような感じ」の強い衝撃を受けたという緒方受刑者。しかし、「殺人者の汚名を晴らすまでは」と家族との面会も断り、再審請求に希望をかけています。

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「一生こういうところ(刑務所)で生きて死んでいくか、晴れて正門から出ていけるかどちらかやと」「一度二度と失敗してもがんばるしかない。最後までやるしかない」と語る緒方受刑者。無実を訴える受刑者の主張を、裁判所はどう判断するのでしょうか。

神戸質店事件の再審請求は、6月19日(木)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

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