元暴力団の男性に届いた“甘い誘い” 「ホテルでジムも付いて…」貴重な証言と内部映像から見えた東南アジア・特殊詐欺グループ拠点の実態!

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大阪市内に住む男性にかかってきた1本の電話。警察官を名乗る男が、男性のキャッシュカードが詐欺グループに使われていると警告するこの電話は、近年急増している特殊詐欺。不安をあおって口座や個人情報を聞き出し、お金を要求する手口です。

大阪府警によると、去年1年間で発生した府内の特殊詐欺の被害件数は2658件。被害額は過去最悪となるおよそ63億円にものぼりました。

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そんな特殊詐欺の拠点が今、東南アジアを中心に次々と出現していると話すのは、国内外の犯罪事情にくわしいジャーナリストの石原行雄さん。拠点ができる国に共通しているのは「治安の悪さ」。現地の警察に対する「袖の下が非常に効いてしまう」ことから、犯罪の温床になっているというのです。

今年5月、宮城県警に逮捕された藤沼登夢被告は、詐欺拠点があるミャンマーに、愛知県の16歳の男子高校生を連れ去った罪に問われています。高校生は「ミャンマーでは電話で警察官などをかたる詐欺に加担させられていた」と証言。自分のほかにも8人ほどの日本人が同じ仕事をしていたと話しています。

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詐欺拠点はミャンマーとタイの国境地帯付近にあり、1万人以上の外国人が特殊詐欺に加担させられていました。石原さんによると、ここでは主に中国に狙いを定めた犯罪が行われていたため、「中国語をネイティブで使える人」が多かったなか、日本をターゲットにするために連れて行かれた日本人も「少なくとも数十人」はいたといいます。

【動画】国境地帯の詐欺拠点は今年2月にタイ警察が一斉摘発し、大きく報じられました。

警視庁によれば、海外の拠点で詐欺事件に関わったなどとして去年1年間に逮捕されたのは50人。タイが2人、ベトナムが6人、フィリピンが14人、そして最も多かったのがカンボジアの28人。国内情勢が不安定なカンボジアにはその混乱に乗じ、多くの拠点が築かれているといいます。

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そんなカンボジアの詐欺拠点の内部を捉えた貴重な映像があります。ここから逃げてきたという日本人男性が撮影したもので、入り口は鉄格子で隔離され、出入りする者の荷物をチェックするなどセキュリティは厳重。「自分たちは地元の警察と連携している」「(逃亡しても)警察が見つけてすぐに連れ戻す」と脅された人もいるそうです。

取材班は、こうしてカンボジアの取材拠点に勧誘されたという元暴力団の男性に話を聞くことができました。男性は暴力団を辞めて10年以上。それでも詐欺グループへの勧誘の連絡が絶えず、携帯に中国語で書かれた“求人票”が送られてきたことも。

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そこには「成果、 1億円達成でボーナス1万ドル」「勤務時間(日本時間)午前8時~午後4時まで」「週6日勤務 毎週日曜休み」などと記され、日本語で書かれた別の資料には「月給150万円から300万円」「交通費・食事全て支給」などの表記も。ほかにも「ホテルでジムも付いて、部屋は1人」など破格の待遇をチラつかせ、巧みに誘うといいます。

男性によると、連絡をとってきたリクルーター役の人物は、すでに数人をカンボジアに特殊詐欺のかけ子として招き入れ、多額の金を受けとっていると話していたそう。「結局、日本人が操られて、日本人が食い物にされているという感じ」と男性は憤りを露わにします。

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今年5月、カンボジア当局が特殊詐欺の拠点の一斉摘発に踏み切りました。拠点にいた日本人およそ30人が現地で拘束されたとみられていますが、詐欺拠点の撲滅にはほど遠いと石原さんは指摘。カンボジアにまだまだ多く存在するといわれる詐欺拠点。今回の摘発は「あくまでも氷山の一角」なのです。

東南アジアの特殊詐欺グループ拠点の実態は、6月10日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜紹介しました。

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