ウクライナに残した老父を思う娘、日本語を学ぶカメルーンのシャイな姉と陽気な弟…など大阪・なんばの海外送金所を訪れる外国人たちの人間ドラマ
日本で暮らし、働きながら遠く離れた母国に送金する外国人たち。どんな思いでお金を送っているのか? 大阪・なんばにある海外送金所の一日に密着しました。
なんばの雑居ビルの地下にある「キョウダイレミッタンス」は、銀行より早く、安い手数料で世界中のほとんどの国に送金したり、お金を受け取ったりできる海外送金所。スタッフは3か国以上を話し、インドやネパール、フィリピンなどの言語にも対応しています。
この日、来店したのはパキスタン出身のアリ・ザファールさん(33)。来日3年目で、お弁当を作る仕事をしている彼は、母国にいる妻に4万円を送金しました。
まもなく来日する妻とは1月に結婚したばかり。数日間にわたって開催されるパキスタンの結婚式は、ド派手に着飾って大勢のお客さんを呼ぶのが常識。300万円ほどお金がかかり、「貯金が終わりました(なくなった)」と笑います。
将来はパキスタンの岩塩を日本で売るビジネスを始めたいというアリさん。ちなみに両親にも10万円を送金していて、給料の半分が消えてしまいますが、子どものときに「自分にお金がかかった」親への恩返しと考えているそうです。
【動画】記録的な円安の影響は「キョウダイレミッタンス」にも。レートがよくなるのを待とうとする客も多いため、送金額や件数が減っているそう。
続いてやって来たのは、ウクライナ出身の40代の女性。首都のキーウで暮らす75歳の父親に8万円ほどを送金しました。
モデルの仕事をきっかけに10年以上前に来日。ウクライナでは物価上昇に加え、戦争にかかるコストが市民生活を圧迫しているため、困っている父を「助けないと」と送金を続けています。ロシアによる侵攻から3年、送ったお金で父に「元気になってほしい」という彼女。戦争が終わったら「もちろん会いに行く」そうです。
次に来店したネパール出身のカルキ・サンジャエさん(24)は来日8年目。母国の母親に送金した額は2万円です。
4人兄弟の長男というカルキさん。日本の大学を卒業し、去年の春から不動産会社で働いています。担当しているのは、外国人に家を貸していないオーナーから借り上げた物件を、海外からの留学生や技能実習生に貸し出すサブリース(転貸)という仕事。
日本のルールに慣れていない外国人の中には、ゴミの出し方を間違えたり、夜中に騒いだりしてトラブルに発展することも。その対応にもあたり、「今後、同じ国から来る学生も住めなくなるよ」と影響を説明して改善を求めるそう。今は宅建の資格を取ろうと勉強中で、将来は独立を目指しています。
そして、お金を受け取りに来たのはカメルーン出身のパトリスさん(22)。日本語学校に通う彼女は、日本の文化に興味を持って来日。送金を受けた4万円はアメリカに暮らすいとこからの誕生日プレゼントだといいます。
欲しいのは「服と靴」だそうですが、全部は買わずに「たくさんキープする」と彼女。日本は食べ物の値段が高く、「生活はちょっと大変」だそうで…。
そんなパトリスさんの暮らしぶりを拝見するため、大阪・富田林にある自宅にお邪魔しました。パトリスさんは同じ日本語学校に通う弟・ウィリアムさん(19)と2人暮らし。学費は仕送りですが、生活費はアルバイトで稼いでいます。
夕食のメニューは、パトリスさんが作る「プレマヨ」。手羽先を使ったカメルーンの郷土料理で、ウィリアムさんは「めっちゃおいしい!」とゴキゲンです。
パトリスさんの目標は、父親が母国で経営している農園を継ぐため、日本の大学で農業を勉強すること。日本語の勉強にあてる時間は毎日6時間。漢字の練習もがんばっていて、日本語を“書くこと”はかなり上達しましたが、シャイな性格ゆえに“話すこと”が苦手なのが悩みとか。陽気で人懐っこく、人と話すのが得意なウィリアムさんがちょっとうらやましいようです。
海外にいる大事な人にお金を送る人、受け取る人。なんばの海外送金所には、懸命に日本で働き、お金と一緒に温かい気持ちも届ける外国人の姿がありました。
海外送金所で見た人間模様は、4月30日(水)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
