少女はなぜ死後18年も気づかれなかったのか? 大阪・八尾コンクリート詰め遺体事件“消えた子”の壮絶な実態

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大阪・八尾市で今年2月、コンクリート詰めになった女児の遺体が発見されました。亡くなっておよそ18年、なぜこれまで誰にも見つからなかったのか?事件の背景を取材しました。

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八尾市内の集合住宅に退去者が残していった、コンクリートが詰められた不審な衣装ケース。警察が調べたところ、中からミイラ化した女の子の遺体が見つかりました。

DNA鑑定などの結果、当時6歳の岩本玲奈さんと判明。まもなく逮捕され、死体遺棄・傷害致死の罪で起訴された飯森憲幸被告は、玲奈さんの母親の異母弟、つまり叔父にあたる人物です。当時、引き取って同居していた玲奈さんが言うことを聞かないと腹を立て、暴行を加えて死亡させたとみられています。

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2000年に八尾市で生まれた玲奈さん。2002年から母親、祖父らと4人で暮らしていましたが、2004年に母親が玲奈さんを残して家を出てしまいました。そして2006年、それまで玲奈さんの世話をしていた祖父が「面倒をみられない」と飯森被告に引き渡したといいます。

玲奈さんが亡くなったのは2007年ごろ。それから遺体で発見されるまでの約18年もの間、彼女の“不在”はなぜ放置されていたのでしょうか?

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玲奈さんは3歳のころに住民票が削除されていました。2001年ごろに八尾市が、母親と玲奈さんの住民票の住所に“居住実態がない”ことを把握。後に祖父と同居していることがわかり、転居届の提出を依頼しましたが、「事情があって住民票は移せない」との返答がありました。

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そして2004年、玲奈さんの祖父から「母親と玲奈がどこかに行ってしまった」との申し出があり、八尾市は2人の住民票を削除。こうして玲奈さんは、行政や学校などの公共機関が所在を確認できない「消えた子」となったのです。

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【動画】一体、どんな事情があったのか? 取材班は玲奈さんの母親のもとに向かいましたが、呼び鈴を押しても応答はなく、話を聞くことは叶いませんでした。

玲奈さんのような居場所を把握できない子どもは「居所不明児童」と呼ばれています。千葉県でパーソナルジムを経営する君塚龍二さん(28)も、かつて居所不明児童として、過酷な暮らしを強いられたひとりです。

小学1年生のときに両親が離婚。君塚さんを引き取った父親はなかなか仕事が続かず、家もなく、車で寝泊まりしていました。食べられない日は「当たり前」。空腹を紛らわせるために醤油で味付けした水を飲んだり、爪をかじったりすることもありました。

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服は1〜2着を着回し、公園の水道で体を洗う日々。小学校には通えていませんでしたが、当時、行政などから探されていたのかどうか「わからない」と君塚さん。住民票の住所に住んでいない期間が長かったため、「たぶん(住民票が)抹消されたんじゃないか」と振り返ります。

そんな生活が4年ほど続いていたころ、商業施設に出かけていたときに父が脳梗塞で緊急搬送され、保護された君塚さんは児童養護施設に入所することに。そうなるまで、なぜ誰にも見つからなかったのでしょうか?

「外で大人に何か聞かれたら“今日学校は休み”と言い訳をしなさい」と父親に言われ、これに従うしかなかった君塚さん。しかし、周囲の大人が子どもを取り巻く異変に敏感であれば、もっと早く社会から見つけてもらえるタイミングがあったのではないかと話します。

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幼い玲奈さんの命が奪われ、誰からも気づかれず約18年も放置されていた今回の痛ましい事件。児童虐待にくわしい大阪公立大学の山野則子教授は、複雑な事情を抱える子育て世帯に自治体がしっかりとアンテナを張り、適切な支援につなげるなどの対応も必要だったのではないかと指摘します。

文部科学省によると、2024年度の調査でも学校に通っていない居所不明児童がいることがわかっています。その数、74人――。

八尾コンクリート詰め遺体事件の背景は、4月28日(月)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。

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