瓦礫の中に取り残された被災者を救え! 災害救助エリートチーム“国際消防救助隊”の27時間ぶっ続け過酷訓練に密着!
全国の消防隊の中から選ばれた、ほんの一握りの隊員で構成される精鋭部隊「国際消防救助隊」。大切な命を技術と執念で救う、その過酷な訓練を追いました。
今年3月、大阪市消防局を中心とする全国の消防士およそ40人が大阪に集まりました。彼らは、高度な技術や専門知識を持つ救助のエキスパート「国際消防救助隊(IRT)」。海外で大規模な災害が起きたときに派遣される部隊で、大阪市消防局では25人の精鋭のみが登録されています。
この日、IRTのメンバーが臨むのは、大阪・咲洲に海外の災害現場を再現して行われる「27時間訓練」。ある国でマグニチュード7.5の大規模な地震が起こり、建物の倒壊や土砂崩れに巻き込まれた人を救助するというもので、タイムリミットは生存率が下がるといわれる災害発生から72時間です。
地震発生から54時間後に現場に到着したという想定で訓練がスタート。残された時間は18時間です。マンションが倒壊した現場で取り残された人を捜索するのは、大阪市消防局の南祥太さん(30)。IRTの訓練に今回初めて参加するとあり、緊張の面持ちです。
【動画】普段は大阪市住之江消防局に勤める南さん。去年、最難関といわれる過酷な試験を突破し、IRTの隊員となりました。
南さんが所属するのは「第一小隊」。午後3時すぎ、隊長の安心院有一さん(41)らと救助に向かうのは、土砂崩れに巻き込まれ、瓦礫に押しつぶされた車。中には運転手が取り残されています。
まずは、車の上にのしかかる大きなコンクリートの塊を支柱で固定。二次災害が起きないよう気を使いながら、一刻も早く救助する必要があり、隊員のスキルが試されます。
安心院隊長からの指示で後部座席のドアを切り、スペースを確保。「今、ドアを開けていますからね」「がんばりましょうね」と声をかけながら運転手を救出し、医療テントに搬送できたのは、救助開始からおよそ2時間経ったころでした。
救助はもちろん、実際に作業に入るまでの瓦礫の除去などに多くの時間を取られる災害現場。訓練初参加の南さんは「こんなに進入するまでに時間がかかるのかというのが率直な気持ち」とその過酷さをさっそく痛感しているようです。
人命救助のタイムリミット・72時間まではあと15時間。撤去した車の向こうに、さらに救助を待つ人が。休む間もなく活動を始める第一小隊。ところが午後6時半ごろ、天候が急変。突然の大雨と強風に襲われ、訓練を一旦中断せざるを得なくなりました。冷たい雨が待機する隊員たちに容赦なく打ちつけます。
午後8時、雨が小降りになり、訓練を再開。車の奥に閉じ込められた男性の救助を試みますが、大きなコンクリートブロックが行く手を阻みます。気温は4.7℃。雨に濡れて体温が下がり、疲れも溜まりつつあるなか、現場全体を鼓舞するように大きな声を出し合いながら作業を進め、午後11時、ようやく男性を救出しました。
日付は変わって午前2時。わずかな休憩を挟み、再び訓練に臨む隊員たち。72時間のリミットまではあと6時間です。第一小隊が向かったのは、一階部分が押しつぶされた共同住宅。避難中にエントランスの倒壊に巻き込まれた男性が中に取り残されています。
建物がこれ以上崩れないよう、現地で調達した木材で空間を確保。男性に点滴で薬剤を投与しながら、南さんらが慎重に外に運び出します。ほかの隊でも救出が進むなか夜が明けて午前8時、72時間のリミットとなり、訓練は終了しました。
今回の訓練で想定されていた要救助者は15人。しかし、実際に救出できたのは10人で、5人が残ってしまいました。「悔しいのひと言に尽きます」と無念をにじませる南さん。「一人でも多くの命を救いたい」――その強い使命感こそがIRTの証です。
消防の精鋭部隊・国政消防救助隊の過酷な訓練の模様は、4月8日(火)放送の『newsおかえり』(ABCテレビ 毎週月曜〜金曜午後3:40〜)で紹介しました。
