「絶対に断らない」“無料”の救急搬送サービス 24時間365日 民間病院の新たな挑戦 『119番通報のひっ迫解消』へ
ある民間病院が、自力で病院に行けない患者を無料で救急搬送するサービスに取り組んでいます。ひっ迫する119番通報の解消につながるのか? 休む間もなく奮闘する救急救命士の姿を追いました。
去年10月、大阪市北区に開業した「医誠会国際総合病院」。こちらの救急医療センターは「絶対に断らない」をモットーに搬送依頼に対応。1日あたりの受け入れ患者は80人以上にものぼります。
センターに在籍している救急救命士は30人。「こんなに(救命士)がいる病院はたぶんないと思います」と話すのは、救命士になって19年のチームリーダー・山口裕子さん。彼女たちの主な業務は、医誠会まで無料で救急搬送するサービスです。
病院から15キロ圏内にある個人宅やクリニック、施設などを対象に、ドクターカー4台を使って24時間365日対応。依頼の多くは、高齢者を抱える介護施設です。
この日は、東淀川区の介護施設へと出動した山口さんのチーム。デイサービスで訪れていた80代の女性が倦怠感を訴えたため検査したところ、新型コロナに感染していました。施設はひとり暮らしの女性を自宅に帰すのはリスクが高いと判断してサービスを利用。女性は病院に搬送され、13日間の入院治療を受けました。
別のチームは、福島区にある老人ホームへ。原因不明の発熱に苦しむ80代の女性を病院に搬送しました。病院で検査したところ、尿路感染で炎症を起こしていたと判明。早く治療しなければ重症化していた可能性もあり、施設のスタッフは「(搬送サービスは)ありがたい」と胸をなで下ろします。
医誠会が無料で救急搬送をする大きな理由、それは“119のひっ迫問題”です。総務省消防庁によると、救急車の出動件数は年を追うごとにほぼ右肩上がりに増加。車両が足りなくなる事態が起こっています。
通報から現場に到着するまでの時間は年々長くなり、一昨年にはついに10分超えに。搬送される9割以上は軽症・中等症ですが、重症患者にとってこの遅れは致命的なリスク。心配停止から4分経つと命が助かる可能性は50%に、5分では25%にまで下がってしまうのです。
医誠会のような民間の救急搬送サービスが軽症・中等症患者に対応し、119番通報で出動する自治体の救急車が重症例に対応すれば、「本当に必要なところに救急車がかけつけることができる」と山口さん。実際に介護施設からは、119番通報をする件数が減ったという声も上がっています。
そして今、インバウンドの増加に伴い、休日を中心に増えているのがホテルからの依頼です。この日の患者は、中国から家族で旅行に来ていた8歳の女の子。発熱し、新型コロナやインフルエンザの疑いがありましたが、検査をしてみるといずれも陰性。家族に笑顔が戻ります。
病院の休診の多い土日祝日にも無料で利用できる救急搬送サービスは、旅行客の安心にもつながっていました。社会のニーズに応えて地域の医療を守るーー民間病院の救急救命士による新たなサービスは、ますます注目を集めています。
民間病院の救急搬送サービスは7月19日(金)放送の『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。