“窃盗症”の苦悩… 前科5犯、服役過去をもつ女性が止められない万引き「物が欲しくて盗んでいるわけではないのに」

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大阪市内に住む50代の主婦・山田貴美子さん(仮名)が、この20年、何度もくり返してしまうことーーそれは「万引き」です。そんな山田さんに去年12月、彼女が被告人となった刑事裁判の期日が決まったことを知らせる封書が届きました。

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去年7月、百貨店で販売価格14万円のブレスレットを万引きした罪に問われている山田さん。万引きで逮捕されるのはこれが初めてではなく、前科5犯。刑務所にはこれまで3回服役し、あわせて2000日以上を塀の中で過ごしました。

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盗るつもりはないのに、気がつけば盗んでしまっている…無意識にくり返してしまう万引きが「病気かもしれない」と気づいたのは服役中のこと。看護師の勧めがきっかけでいくつもクリニックを訪ね、医者から伝えられたのは「窃盗症=クレプトマニア」という病名でした。

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窃盗症は、自分で衝動をコントロールできない衝動制御障害のひとつ。1980年代から「窃盗癖」や「病的窃盗」という病名で存在が指摘されてきましたが、研究は進んでおらず、未だ“未知の病気”とされています。

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そんな窃盗症の発症メカニズムを説き明かそうとする研究が、京都大学大学院で進められています。情報学研究科・後藤幸織准教授ら研究グループが行った実験は、人がいる、いないなどさまざまな状態のスーパーの店内の写真を窃盗症患者と健常者に見せ、反応を比較するというもの。

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瞳孔の変化や脳の働きなどを細かく調べたところ、人が誰もいない「いつでも盗れる状態」の店内を見たときの窃盗症患者の反応は、健常者とは明らかに違っていたそう。万引きをしやすい場面に居合わせたときの視覚情報が刺激となり、無意識に物を盗る行動に繋がっているのではないかーー後藤准教授はそう考えています。

【動画】およそ20年前、山田さんが最初に万引きしたのは“クリスマスツリー”。そのとき、子どもも一緒だったといいます。

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窃盗症と診断された山田さんは、その後、職業訓練などを受けながら更生の道を探っていましたが、それから4年余りが経ち、再び犯してしまったのが今回の万引きでした。

そして今年1月に迎えた初公判。山田さんは起訴内容を認め、弁護側は精神疾患の影響で刑事責任能力がなかったか、低下していた状態だった可能性があると主張しました。裁判で責任能力がなかったと認められれば無罪に、著しく低下している状態だったとされれば減刑されることになります。

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山田さんが過去に役所に提出してきた書類には、そのときどきに彼女が抱えていた苦悩が記されています。出産した長男に先天性の難病が判明したこと、「この子を病気に産んでしまった」と自らを責め続ける中、自分でも理由のわからない万引きが増えていってしまったこと…。「私はどうしてしまったんだろう。物が欲しくて盗んでいる訳ではないのに。何がしたいんだろう」

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自分は病気なのか?病気だったとしても、万引きのすべてを病気のせいにしていいのか? 思い悩んだ山田さんは2回目の公判後、弁護士に苦しい思いを打ち明けて…。

その後、“争点”が変わった裁判、そして6月に下された“判決”の内容は『newsおかえり』(毎週月曜〜金曜午後3:40〜)の特集コーナーで紹介しました。動画をABCテレビニュースの公式チャンネルで公開中!

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